2012年11月24日土曜日

【続・衝撃】舘ひろしになれない




「舘ひろしにはなれない。なれないんだあああ!」

エヴァンジェリスト氏が、悲痛な叫びを上げた。

あの傲岸不遜なエヴァンジェリスト氏とは思えぬ狼狽えぶりであった。

ソレも、エヴァンジェリスト氏には大変な衝撃であったのだ(参照:【衝撃】先輩になった日)。


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「あぁ、ボクにはウインクができない……できないんだああ!」

薄くなった髪をかきむしった。

「舘ひろしにはなれない。…….そんなことも分っていなかったなんて。ボクとしたことが……」

いや、エヴァンジェリスト氏が全くウインクできない訳ではない。

鏡に向ってウインクの練習をするエヴァンジェリスト氏を私は目撃した。それは、赤いタオルを首からさっと取り、リング上から観客席に投げ込む練習を鏡に向ってしていたアントニオ猪木を彷彿させるものであった(参照:赤いタオル)。

しかし、それはウインクと云えばウインクではあったが、「うぬぼれ営業」氏的に、どちらかと云えば(参照:【呉市音戸町波多見】どちらかといえばキリスト教。どちらかとえいば平家。(後編))、それは片頬がひきつらせた、といった方が正しいものであったろう。


舘さんは夏菜にウインクした。いや、舘さん扮する大先社長が,夏菜扮する純にウインクしたのだ。

舘さんが今、出演中のNHKの朝ドラ「純と愛」での中のことである。

舘さん(大先社長)が夏菜(純)にウインクするのを見た時、エヴァンジェリスト氏は気付いたのだ。

舘さんの代りに自分が「純と愛」に出演していたら、ウインクができないといけなかったのだ。

「ええっと、ウインクって、どうやるんだったけ?」

自問した。そして、気付いたのだ。自分はうまくウインクできないことに。舘さんのようにダンディにウインクすることができないことに気付いたのである。

鏡向って練習しても駄目であった。


「舘ひろしにはなれない」
「そんなことハナから分っていましたが」
「『舘さん、申し訳ない!』(参照:【石原プロ】舘さん、申し訳ない!と云った自分を恥じる」
「ウインク云々の問題ではないと思いますが……」
「舘ひろしにはなれない」
「いいいですか、アナタは元々、舘ひろしにはなれないし、なる必要なんかないんです

何故、私がエヴァンジェリスト氏にこんなことを云わなくてはいけないのか分らなかったが、取り乱したエヴァンジェリスト氏をほおっておく訳にはいかなかった。

「舘ひろしになる必要がない?」
「アナタは舘ひろしになる為に石原プロ入りしようとしていたんですか?」
「いや、そういう訳ではない…..」
「石原プロの窮状を救うのに、何もアナタが舘ひろしになる必要なんかないんです」
「そうか…..」
「それにアナタは舘ひろし程、ダンディではありません
「なにぃ」
「ダンディではないアナタが大先社長になってウインクしたとしても様になりません」
「まあな….」
「アナタは舘ひろし程、ダンディではありませんが、舘ひろしより2枚目です」
「まあ、それはそうなんだが」
「別の大先社長像っていうものがあってもいいでしょう」
「おお、そうだ!その通りだ。ユカワに云えばいいだけのことなんだ!」
「ユカワ?」
「遊川和彦だ」
「脚本家の遊川和彦ですね。『純と愛』の脚本も書いている、『家政婦のミタ』の遊川和彦ですね」
「アイツは1期下なんだ」
「はああ?」
「アイツも広島で育ったんだ。高校は、アイツは修道高校で、ワシとは学校は違ったが、1955年生れで1期下なんだ」
「だから、何なんですか!?」
「遊川和彦に、ワシにあった大先社長を描かせればいいだけのことだったんだ」

ああ、元気を取り戻したのはいいが、また傲岸不遜になってしまった。


「舘ひろしにはならないぞ!」




2012年11月10日土曜日

【衝撃】先輩になった日





「己を見る、ということを忘れていた。ボクとしたことが……

杉下右京的な反省の弁であった。

杉下右京の定年退職後のカイト君(甲斐亨)の「相棒」になるのではないかと噂されるエヴァンジェリスト氏が(参照:相棒後任決定!?】成宮寛貴の新相棒?杉下右京退職?)、いつもは傲岸不遜な氏には珍しく反省をしたのである。

それは、エヴァンジェリスト氏には大変な衝撃であったのだ。


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2012年9月25日、コンフォートホテル佐賀である。

午前6:27になり、エヴァンジェリスト氏は9階の部屋を出た。1階の朝食会場に行くのである。

エレベーターに乗った。一人である。

「ふうーっ」

特に意味もなく、ため息をついた。

…….と、6階でエレベーターが止った。オジサンが一人乗って来た。エヴァンジェリスト氏は、オジサンにスペースを与える為に、エレベーター内での位置を少しくずらした。

オジサンは会釈した。エヴァンジェリスト氏も会釈で返した。礼儀正しいオジサンである。

エレベーターが1階に着いた。エヴァンジェリスト氏が、右手の掌を上にして斜め前に滑らしながら、無言ながら「どうぞ」とオジサンに先を譲ろうとした。

…….と、その時である。そう、その時であったのだ。オジサンも右手の掌を上にして斜め前に滑らしながら、そして、声を出して云ったのだ。

「センパイどうぞ」

愕然とした。エヴァンジェリスト氏は戸惑いながら、オジサンに云われるがまま、先にエレベーターを降りた。

「センパイどうぞ」

頭の中で、オジサンの声がリフレインした。

「センパイどうぞ」

確かにオジサンは云ったのだ。「センパイどうぞ」と。

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その後の朝食のことは、覚えていない。

「己を見る、ということを忘れていた。ボクとしたことが……」

そうなのだ。自分はオジサンよりオジサンなのだ。エヴァンジェリスト氏は思い知らされたのだ。

確かにオジサンは立派にオジサンであった。しかし、それ以上に、エヴァンジェリスト氏はオジサンなのであった。

オジサンは40歳代と見えた。多分、40歳代後半である。而して、エヴァンジェリスト氏は58歳である。立派にオジサンよりオジサンなのであった。