(【WWD】青春のハナヱモリ(その6)の続きである)
その朝、ヴィトン君は眼をしょぼつかせながら会社(WWDジャパン)に入って来た。
何だか、前日よりも陽に焼けていた。
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エヴァンジェリスト氏が、会社(WWDジャパン=フェアチャイルド・モリ出版)を辞めるにあたっては、一応、引止めはあった、と云う。
正直なところ、エヴァンジェリスト氏が引止める価値のある社員であったとは思えないが、会社の代表であった森顕(もり・あきら)氏の優しさだったのであろう。
アキラさん(森顕氏のことを社員達はそう呼んでいたそうだ)は、タレントの森泉さんの父君である。森泉さんは、森英恵さんの孫と云われているし、実際に孫であるが、森英恵さんの孫である前に森顕氏の娘である。森顕氏が森英恵さんの息子(長男)だからである。
森泉さんがテレビに出るようになった頃、
「ああ、アキラさんのお嬢さんかあ。イズミちゃん、もうこんなに大きくなったんだ」
とテレビの前でしみじみ述べるエヴァンジェリスト氏を見た。
森泉さんが大きくなるもならないも,エヴァンジェリスト氏が「アキラさん」と仕事をしていた頃はまだ森泉さんはこの世に生を受けていなかったのだ。アキラさんがパメラ夫人と結婚された頃であったのだ。
いい加減なものである(イズミちゃん、と親しげに呼ぶんじゃない!)。
しかし、森泉さんをテレビで見る度に、エヴァンジェリスト氏は森顕氏を思い出すのは確かなようだ。
森顕氏はエヴァンジェリスト氏をWWDジャパンの入ったビルの下にある喫茶店に連れて行き、エヴァンジェリスト氏の正面に座ると、右手で拳をつくり、その拳を自身の胸にコツンと当てて、
「エヴァンジェリスト君、僕に任せないかい?辞めないで、僕についてこないかい」
と云ってくれた,と云う。
経営者としての資質は当時のエヴァンジェリスト氏にはまだ判断がつくものではなかったが、人のいい方であったそうだ。ハナヱモリ倒産時には社長になっていたようだ。
「アキラさんには、引止めを丁重にお断り申し上げた」
と空を見つめ、アキラさんのその時の姿を思い出すように、エヴァンジェリスト氏は語る。
ハナヱモリ・グループ入社直後には、アキラさんの母親の森英恵さんからも個人面接を受けたそうだ。
二人だけで向いあい、エヴァンジェリスト氏がフランス文学が専攻だったからであろうが、
「エヴァンジェリストさんは、フランスに勤務したいしでしょう?」
と訊かれ、「いえ」とつれなく返事をしたのだそうだ。
可愛くない人だ。
エヴァンジェリスト氏がハナヱモリ・グループに入ったのは、ファッションが好きだったからでもなく、ファッションにつながるフランスが好きだったのでもなく、ただただ、当時好きだった女性が、同じファッション業界に入っていたからだったのである。
その女性は、芦田淳さんの秘書になっていた。彼女と同じ業界に身を置きたかっただけのことなのだ。エヴァンジェリスト氏は、当時から不純な奴であったのだ。あきれるばかりである。
こうして、半年で、ハナヱモリ・グループからエヴァンジェリスト氏は去った。
以上のように、不純な動機でファッション業界入りし、僅か半年で退社したエヴァンジェリスト氏よりもヴィトン君のほうに私はずっと好感を持つのは当然ではないか。
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