2012年4月4日水曜日

【WWD】青春のハナヱモリ(その6)





「はい。『教会』の方です………」

そう、ヴィトン君は、有名デザイナーのアノ先生に『教会』まで連れて行かれ、洗礼のようなものを受けさせられたようなのであった。


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先輩カリスマ氏に教わった「マーケティング」というものは、「飛込み営業」の対極にある概念とも云える。

先輩カリスマ氏は、日本マーケティング協会の研究所にいたこともあるそうで、「お前に興味があるのなら」とエヴァンジェリスト氏に「マーケティング」の手ほどきをしてくれた。

そして、それを機にエヴァンジェリスト氏は、先輩カリスマ氏に教えてもらいつつ、独学で「マーケティング」を学んでいったのだ。その後、エヴァンジェリスト氏は、「文学」の道を棄て、進んで「営業」の道を歩むことになったのである。自身は、それを「営業」の道ではなく「マーケティング」の道だと云うが。

実は、先輩カリスマ氏が日本マーケティング協会の研究所にいたというのは事実ではなく、他にも何が真実で何が真実ででなかったのか不明な人でったことが、後年判明することになる。

しかし、先輩カリスマ氏がエヴァンジェリスト氏に「マーケティング」の手ほどきをしてくれたのは事実であったし、手ほどき頂いた内容そのものに嘘、偽りはなかったのだ。

先輩カリスマ氏は、その名前に相応しく求心力の強い人であった。その経歴等が真実ではなかったとしても、頭の切れは凄まじいものであり、府中刑務所横で発生した、かの「3億円事件」の真犯人ではないのかと真顔で云う人さえいたのである。

先輩カリスマ氏は、ずうっと後になって、ある悲惨な出来事(刑事事件)の渦中の人となる。新聞、雑誌でも大きく取り上げられることになり、エヴァンジェリスト氏も裁判対応(弁護士との弁護方針の検討等)に追われることになるのだが、それは余りに悲しい出来事であり、とてもこのイカレタBlogでは取り上げることができない。

後年(といっても、その「事件」の前のことであるが)、ハナヱモリ・グループの中で新たに創られた組織の責任者にまでなる先輩カリスマ氏から、エヴァンジェリスト氏は「WWDジャパン」在籍時代に、「マーケティング」を教わり、「マーケティング」をするのなら、そのままハナヱモリ・グループにいては駄目だと思ったのである。

そして、エヴァンジェリスト氏は会社(WWDジャパン)を辞めることにした。待遇面を含め、会社の体質になじめないものを感じたからでもあったようだ。

先輩カリスマ氏は、エヴァンジェリスト氏にとって良き先輩であっただけでなく、他の若手社員からも信頼される先輩であった。鋭利な頭脳の持ち主であり、求心力のある人であったが、冷たい人ではなく、温かい心を持つ人であったのだ。

その先輩カリスマ氏は、パンツ一丁で洗礼を受けさせれられ、半べそ状態で帰社して来たヴィトン君に対して、呆れながらも眼を細め、口の端を上に上げるようにして云った。

「お前、大丈夫かよお?」
「はい」
「子どもじゃあないんだから」

そう、年齢的には「もう子どもではなかった」が、子どもというか、流行りのものに流されていく、若者の典型であったヴィトン君は、この水風呂洗礼の他にも「事件」を起こしたのだ。「事件」といっても、刑事事件でも民事事件でもなく、ただの「出来事」ではあるが。

しかし、流行りものが好きだから、ヴィトン君はファッション業界に入ったのであろうし、もっと不純な動機でファッション業界入りしたエヴァンジェリスト氏よりもヴィトン君の方に私はずっと好感を持つ。



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