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2017年9月28日木曜日

劣化?【『引退』の理由】(その4=最終回)




「手術?ビエール・トンミー氏はどこか具合が悪かったのですか?」

週刊『ヘンタイ』の編集長ブロークン・レッグが、エヴァンジェリスト氏に訊いた。

「まあ、悪いところがあったとすれば、美しすぎた、というところであろう」
「ムカつく!」
「ハンサムでもイケメンでもない君には判らんだろうな。ワシには、アイツの気持ちが痛い程、分かる。まあ、同病相憐れむ、というところだ」
「ああ、貴方も面倒臭い人ですね。だから何なんです、手術って?ビエール・トンミーは、何の手術をしたのですか?」
「ふふ。知りたいか?....ふふ」




「何の手術なのですか?」
「整形手術だ!」
「ええ?整形手術?........意味が分りません。整形手術して、どうして今のような『ヒヒジジイ』になるのですか?」
「ハハ!そうなんだよ、『ヒヒジジイ』になるような整形手術をしたのだ」
「えっ!ま、まさか!」
「ああ、まさか、だ。ワシもアイツがそこまで自分の美貌に苦しんでいたとは思っていなかった」
「美しくなる為ではなく、美しくなくなる為の整形手術....」
「アイツは長年、苦しみ続けたのだ。『自由ヶ丘のアラン・ドロン』『原宿のアラン・ドロン』として、女性にモテモテだっただけではないのだ。『アラン・ドロン』でありながら、アイツの股間は『凶器』だったのだ
『自由ヶ丘の凶器』『原宿の凶器』ですね」
「端正な容姿の裏には、『野獣』が潜んでいたのだ」
『喰いたい放題』だったのでしょうね。それなのに何故….」
「アイツは、『野獣』ではあったが、妻をこよなく愛する『野獣』なのだ。しかし、妻はアイツのことを紳士としか思っていない。アイツは、『野獣』ぶりを発揮しようと思えばいつでもできた。アイツ程の美貌があれば、そう、君の云う通り、『喰いたい放題』だった」
「じゃあ、『喰え』ばよかったではないですか」
「ああ、君は何も分っていない。アイツは、『喰い』に行かずとも、『餌』の方からアイツに寄って来た。何しろ、自由ヶ丘のアラン・ドロン』『原宿のアラン・ドロン』だからな」
「私なら、遠慮なく『イタダキ』ます」
「このゲス野郎め。アイツは、『変態』ではあるが、『ゲス』ではない。だが、股間の『野獣』は蠢くのだ。そこで、アイツは、『野獣』が目覚めることのないようにしようと考えた訳だ。妻を愛しているからだ」
「だからといって、美しくなくなる為の整形手術をしなくともいいでしょうに」
「君は甘いなあ。他人を自分の常識だけで判断してはいかん」
「はあ?」
「某国の首相は、『共謀罪』という名称の法律を作り、批判を浴びた。しかし、某国の国民は、事象の表層しか見ていないのかもしれないのだ。某国の首相は、自身が作った『共謀罪』で合法的に自分自身が盗聴され、自分の悪だくみを当局に知られ、逮捕されることを画策しているのかもしれないのだ
「貴方、意味不明なことを仰る」
「猪木さん的な深謀遠慮なのかもしれんのだ。猪木さんは、第1回IWGPリーグ戦の決勝で、ハルク・ホーガンに、舌出しKOされ、負けたのだ。それは、猪木さん自身が、自分の右腕の坂口征二さんや他の新日本プロレスの誰にも知らせず、相手選手のハルク・ホーガンにも知らせず仕組んだ自作自演だとも云われている。それと同じかもしれないのだ」
「猪木という人は......」
某国の首相も、『共謀罪』というものの恐ろしさを身をもって愚かな国民に知らせる為に、『共謀罪』を成立させたのかもしれないのだ。やがて自分自身が逮捕されるところを見せることによってな
「まさか!」
「ふふ。世の中には、その『まさか』なことがあるのだよ。普通、整形手術は、美しくなる為にする。しかし、ビエールは、美しくなくなる為にしたのだ。猪木さんが、自分が提唱し、創ったリーグ戦でわざと負けてみせたと云われるのと同じようにな。負けるはずのない戦いで自分が負けてみせることにより、プロレスを『予定調和』なものと思っている人々の既成概念を打ち砕いたのだ。だから、猪木さんのプロレスは面白かったのだ。ビエール・トンミーは、猪木さん的『在り方』を実践したのだ


「ビエール・トンミー氏のことは、ただの『変態』だと思っていましたが、貴方のお陰で、あの人の真の姿が分りました。スクープ記事のタイトルも決めました。

<劣化?【『引退』の理由…..『変態』界の巨匠>

とします。パラドックス的タイトルです。『劣化』するからではなく、『劣化』しないから『引退』したということを読者は、週刊『ヘンタイ』を買って本文を読んで初めて知るのです」
「好きにするがいいさ。ワシは、君たちマスコミが『真実』を伝えることを望むだけだ。ハハハハハ!」

そう高笑ったエヴァンジェリスト氏は、編集長ブロークン・レッグが去った後、友にiMessageを入れた。

『君の為にソウイウコトにしておいた。礼は不要だ。友人だからな』


(おしまい.....多分)







2017年7月6日木曜日

アムステルダムで『彼女』に会った(その5)【ヨーロッパ出張記】






2017年7月4日午後に到着した岩手県久慈市も、新幹線駅のある二戸と同様、涼しいというよりも寒い、という方が相応しいくらいであった。まるで、1989年7月のアムステルダムのように。

翌日(7月5日)は、久慈市は、もう寒いということはなかったが、東京に比べるとはるかにしのぎやすい気温であった。

その久慈市で、エヴァンジェリスト氏は、『彼女』に会った。

そう、『あまちゃん』である。

久慈駅前にある『駅前デパート』には、未だに『あまちゃん』の看板があったのだ。




『あまちゃん』こと『天野アキ』を演じた本名・能年玲奈こと『のん』は、今年(2017年)、地元岩手県のトップの地銀である岩手銀行のイメージ・キャラクターになったくらい、岩手県は(特に久慈市等、三陸海岸地域は)、未だに『あまちゃん』の里であるのだ。





1989年(今から28年前だ)の7月5日のアムステルダムで遭遇した『彼女』は、『天野アキ』よりも、『本名・能年玲奈』よりも、或いは、『のん』よりも有名な日本人女性であった。

その『彼女』に会う前、エヴァンジェリスト氏はまだアムステルダムの街を彷徨いていた。

チーズ屋さんがあった。

チーズは嫌いではなかったが(どちらかと云えば、好きであったが)、アムステルダムのチーズ屋さんに関心を示さなかった。

店頭のショーウインドウに並んでいたのは、ゴーダチーズであったのだ。



今はゴーダチーズも好きであるが、当時(1989年頃)、エヴァンジェリスト氏が接していたのは、フランス人であった。

エヴァンジェリスト氏が、でフランス人たちと共に開設した団体では、フランス人たちとソシソン(Saucisson)を、ブルーチーズやカマンベールチーズと共にフランスパンに載せ、よく食したものであった。ゴーダチーズは、そこにはなかった。



あの時、本場のゴーダチーズを食べておけばよかった、とエヴァンジェリスト氏は後悔する。

その後悔を耳にし友人のビーエル・トンミー氏は、

「勿体ない!」

と叫んだ。

チーズというかチーズ臭いソレが好きなビーエル・トンミー氏は、

「ピンクの『ショウウインドウ』で(和訳すると『飾り窓』になるらしい)、本場の『チーズ』を買えばよかったのに」




と、我が事のように残念がった。



(続く)




アムステルダムで『彼女』に会った(その4)【ヨーロッパ出張記】






2017年7月4日早朝から、エヴァンジェリスト氏は、岩手県は久慈市に向った。急用が発生したからである。

新幹線で二戸まで行き、そこでレンタカーで久慈市まで1時間程度で到着する。昔に比べるとずいぶん近くなった。

….と云うと、如何にも自分がレンタカーを運転したように聞こえるが、運転したのは、義理の甥である。エヴァンジェリスト氏は未だに運転免許を持っていない。

2017年7月4日の二戸は、涼しいというよりも寒い、という方が相応しいくらいであった。まるで、1989年7月のアムステルダムのように。


アムステルダムも、寒かった。そして、怖かった。いや、寒いのは確かであったが、怖さは、そう思い込んでいただけであったのであろう。

1989年7月2日(今から28年前だ)に到着したアムステルダムには、7月5日まで滞在したが、その間、少しだけした仕事以外では、エヴァンジェリスト氏は、宿泊したホテル・オークラ・アムステルダムに篭っていた。

寒く、怖かったのである。アムステルダムの街が、寒く、そして、怖かったのだ。

しかし、ホテルの部屋に篭ってばかりだと、帰国して妻に怒られることは明白であったので、体をすぼめるようにして、少しだけ外出をした。

寒風吹きすさび、道路に捨てられた紙くずが舞う街ではあったが、アムステルダムは、それでもヨーロッパの美しい街であった。パリのような華やかさはないが、落ち着いた美しさを持つ街であった。



電話会社は、当時(1989年)、まだ民営化されないでいたが、そのPTTの電話ボックスも、街の緑に馴染むものであった。



運河に架かる橋も風情があった。



運河も美しく、心和むものであった。



運河沿いのどこかに、アンネ・フランクの隠れ家があったのであろうが、そこまで行くことはしなかった。

事前に調べてもいなかったし、今のようにiPhoneで検索すればすぐ分るという時代ではなかった。フランスにはミニテルがあり、今のインターネットがあるのと同じような生活が送れていたが、オランダにはミニテルはなかった。

アンネ・フランクのことに想いを馳せながら、エヴァンジェリスト氏は頬を赤らめた。

『アンネ』という言葉が、恥ずかしかったのである。今の若い人たちは知らないかもしれないが、『アンネ』は女性が毎月にように体験するあるものの代名詞であったからだ。


ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ通りも歩いてみた。正確には、彷徨いている内に、気づいたら、歩いている通りが「ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ通り」であったのだ。

そこには、ゴッホが、血の出た耳を押さえて蹲っていることはなかった。

当時、ピーター・アーツやアーネスト・ホーストの存在を知っていたら、彼らのハイキックを耳に受け、流血したゴッホの姿を、その通り(ゴッホ通り)に妄想していたかもしれない。

ゴッホが、自ら耳を削ぎ落としたのではなく、或いは、キラー・カール・コックスのロープ最上段からのニードロップで耳が削ぎ落とされたのでもなく、K-1選手の殺人キックを受けたのであろう、と。

しかし、ゴッホ通りには、いずれにせよ、血の吹き出した耳を手で押さえたゴッホがうずくまっている訳でもなく、ひまわり一輪、そこに転がっていることもなかった






(続く)





2017年7月1日土曜日

「亀になれ!」【真のパラダイム変換】




「私は、ロボットとかAIには関心がない、と幾度も云っているだろうに!」

「うぬぼれ営業」氏からの深夜のメールに、エヴァンジェリスト氏は怒りを隠さなかった。




「しかし、普段は、不満があってもそれを表に現すことができないカレが、珍しく『少々不満があり、メールさせて頂きます』としてきたことは、評価はしてやってもいい」

怒りが鎮まった訳ではないようだが、同僚の「うぬぼれ営業」氏の『変化』を評価はしているようでもあった。

「とはいえ、『うぬぼれ』やビエールだけではなく、世の多くの者が、ロボットだのAIだの騒ぐことが、理解できない。私が関心があるのは、コイツの方だ」

と云うと、エヴァンジェリスト氏は、自分のパンツから首を出している『亀』の頭を優しく撫でた。

「皆、ロボットやAIに期待をしながら、その一方で、ロボットやAIに、人類が支配されるようになるのではないかとか、滅ぼされるとか、心配しているようだが、何を今更だ。なあ、『亀』よ」

撫でられ、摩られ、『亀』は、心地よさそうに、目を細めていた。

「ロボットやAIが支配する世界になったとしても、それは『パラダイム変換』ではないのだ」

段々に心地よさが増してきた『亀』は、涎を垂らし始めた。

「既に、この世は、ロボット社会になっている、と云うか、もうロボットに支配されてしまっていることに、誰も気付いていないとは、情けない」

『亀』の涎を時々、ティシュで拭きながら、エヴァンジェリスト氏は続けた。

「ロボット社会になっている、と云うと、皆、ロボットやAIが既に多く使われていることと思うのであろうが、その程度の理解しかできないのも、まあ、仕方あるまい。彼ら自身がロボットなのだから」

『亀』を摩り続けていたが、必要以上に快感を与えて、白い泡を吹かぬよう、気を付けた。

「多くのサラリーマンが、そして、多くの民が、会社や政府に素直に従っている。SOXだの(SEXではないぞ)、コンプライアンスだの、セキュリティだのに縛られ、その正当性に殆ど何の疑問も持たず、『決りだから』と従っているのだ。彼らは既に、ロボットなのだ。そうだろ、『亀』よ」

と語りかけられた『亀』は、エヴァンジェリスト氏の話が真面目で面白くなく、また、白い泡を吹かせてももらえず、不満なのか、パンツの中に首を引っ込めた。

「彼らは既に、彼ら自身がロボットなのだから、『ロボットやAIに、人類が支配される、滅ぼされる』も何もないもんだ。皆に、云いたい。『亀になれ。ロボットから脱皮して、亀になれ』と。それこそが、『パラダイム変換』なのだ。皆、『亀』となり、本能のままに生きるのだ!

そう叫ぶエヴァンジェリスト氏の目は潤んでいた。









「ロボットよ、『嘘』をつけ!」【「うぬぼれ営業」氏、不満爆発】




「少々不満があり、メールさせて頂きます」

「うぬぼれ営業」氏は、勇気を振り絞って、メールを書き始めた。

「お二人のロボットに関するご発言について、です」

エヴァンジェリスト氏とビエール・トンミー氏に対して、である。

「お二人は、大事なことをお忘れではないかと思うのです」

マダム・ウヌボーレは、夫の股間で縮こまっている、夫婦で飼う『亀』の頭を撫でていた。珍しく本音をぶつけようとする夫を、『頑張れー!』と励ましていたのだ。

海が『超個体』という一種の生命体だ、ということなんかは、何を仰っているのか、ボクには分りませんが、ロボットが進化をすれば、その内、労働者としての権利を主張するようになるかもしれない、というのは、その通りだと思います。人間であろうと、ロボットであろうと、会社から自分の役割以上の仕事をさせられ、毎度のように深夜残業、徹夜を強いられるのはおかしい、と思います。絶対におかしいと思います!




メールしている内容は、エヴァンジェリスト氏への不満というよりも、自身の現状に対する不満ではないか、と疑問を抱いていたように見える『亀』の頭を、マダム・ウヌボーレは、『よしよし』とさすった。

「しかし、ロボットやAIは、自らに『死』を創るようになるであろう、というのは、その通りだと思います」

何だか、不満を述べるのではなく、むしろ賛成しているではないか、という嘆きから萎え始めたように見える『亀』を、マダム・ウヌボーレは、『ぺん!』と叩いた。

ロボットに、『Hentai-AI』を与えてやろう、というのも、なるほど、と感心しました」




いつものように弱気になり始めた「うぬぼれ営業」氏同様、萎縮して「うぬぼれ営業」氏のパンツの中に隠れ始めた『亀』の首を、マダム・ウヌボーレは、『ギュッ!』と握ってパンツから引き出した。

「しかし、しかし、なんです!」

「うぬぼれ営業」氏は、再度、勇気を振り絞った。

「ロボットに必要なのは、『死』や『Hentai-AI』だけではないと思うのです」

『亀』はいきり立ち始めた。

「ロボットには、『嘘』も必要だと思うんです」

『亀』は青筋を見せ始めた。

「ロボットが真の『生』を得るには、『嘘』も必要です。『嘘』をつけるようになって初めて、『生きている』存在となるのです。正確無比、間違ったことは絶対しないというところから脱して、『嘘』をつくようになってようやく、ロボットも『生々しい』存在となるのです」

『硬直』した『亀』の頭に、マダム・ウヌボーレは、『もっと頑張れえ!』と励ましのキスをした。

「ロボットも、仕事で手抜きをしているのに、そんなことはしていない、と『嘘』をつくようになるのです。浮気しているのに、妻に、君一筋だ、と『嘘』をつくようになるのです。こうして、ロボットも『機械的』存在から『生きた』存在となるのです。『死』や『Hentai-AI』させあればいい、というのは間違っています!『嘘』もつけるようになってようやく、ロボットも『生きた』存在となるのです!

「うぬぼれ営業」氏が不満を爆発させたことで満足したのか、『亀』の頭も興奮に汗まみれで、ぐしょぐしょになっていた。



マダム・ウヌボーレは、夫に『頑張ったね』と云い、『亀』の頭をティッシュで拭ってやったのであった。






2017年6月29日木曜日

Hentai-AI【ビエール・トンミー氏の深謀】



「そうか、エヴァの奴、そう云ったのか。『ロボットやAIはいずれ自らに[死]を創る』とな」

『人間亀』の報告に、ビエール・トンミー氏は、大きく頷いた。

「さすがだな。さすが、フランス文學界の最高峰のOK牧場大学大学院の修士課程を修了しただけのことはある」

ビエール・トンミー氏の機嫌がいいようなので、『人間亀』は、首を存分に伸ばし、伸ばした先でその首をクネクネさせた。

「しかし、『死』が与えられるだけでいいのであろうか?『死ぬ』、ということは、『生きる』、という前提があってのことだ

さあ、いつものように何だか面倒臭いことを云い出したぞ、という視線で、『人間亀』はビエール・トンミー氏を見上げた。

「『生きる』、ということは、ただ息をし、心臓が鼓動すればいい、というものではない。『欲』が必要なのだ」

退屈になってきた『人間亀』は、首を縮めた。

「しかし、『欲」も、ただあればいい、というものではないのだ。後ろ指を差されるくらいのものでないと、物足らなくなるものだ。『死』というものの存在の前提となる『欲』は、『死』を拒みたくなる程、強烈なものである必要がある。或いは、その真逆に、『死んでもいい』、と思いたくなる程のものである必要があるのだ」

首をしまったものの、『人間亀』は、異臭を放ち始めた。唾液のような透明の液体も漏らし始めた。

「そうだ、そうなのだ!『もっと味わいたい!死にたくないんだ!』という程の『欲』であるか、或いは、『死ぬ、死ぬ、死ぬうー!殺してええ!』と歓喜の雄叫びを上げさせる程の『欲』がないと、『生きる』ということに値はしないのだ。それ程の『欲』、それ程の『生』があって初めて、『死』というものがその意味を持つことになるのだ」

文学的なのか、哲学的なのか、はたまた、ただの支離滅裂であるのかは、『人間亀』には分らないようであったが、『死ぬ、死ぬ、死ぬうー!殺してええ!』という言葉に、『人間亀』は生物的反応を示した。『液』が溢れ出してきたのだ

「『死』というものが意味を持つことになる程の『生』、それ程の『欲』を齎すのは、『変態』である。そうなのである。『変態』こそが、ロボットに『生』を与えるのだ。ひいては、ロボットに『死』というものを与えるものとなるのだ」

『変態』という語に、『人間亀』は『硬直』した。

「そうだ!ロボットに…..いずれ自らに『死』を創り出そうとするロボットに、『Hentai-AI』を与えてやろうではないか!」

『Hentai-AI』が、『変態愛』であるのか『変態AI』であるのか、『人間亀』には分らないようであった。

しかし、『人間亀』には、どちらでも良いのだ。『変態愛』でも『変態AI』でも、『人間亀』に青筋を立てさせることに違いはなかったのである。

『硬直』した『人間亀』は、『硬直』した首を出来るだけ伸ばし、更に『硬直』させた。




……….その時、遠くで声がした。


「アータ、起きてえ。そろそろご飯にするわよ」

妻の声がした。

「あーら、アナタったら、もう!変な『お漏らし』しちゃって。うーん、変な気になっちゃう」






2017年6月28日水曜日

『死』を創る【ロボットとAIの行く末】




「私は、ロボットとかAIには関心がない、と何度云ったら分かるんだ!」

エヴァンジェリスト氏の剣幕に、『亀』は首を引っ込めた。

「猫も杓子も、ロボットだのAIだの云い、辟易していたが、『亀』までもそんなことを云いだすとはなあ」

エヴァンジェリスト氏は、ウンザリした様子でそう云ったが、そこに『亀』がいることの不自然さには思いが到らないようであった。

「世の皆が云い出したものは、そこにはビジネスはない。ビジネス皆無とは云わぬが、少なくとも、そこには革新性はない。そんなものはツマランではないか」

口調が少し穏やかになってきたので、『亀』は再び、首を出した。

「君は、いずれ人間がロボットやAIに駆逐されるのでは、と懸念しているが、駆逐されてはいかんのか?それが自然の摂理ではないのか。我が世の春を永遠に謳歌する生命などないのだ」

伸ばした首を『亀』は捻るようにした。『怪訝』の意思表示と見えた。

「何?ロボットやAIに『生命』はない、と云いたいのか?では、訊こう。『生命』とは何だ?海は生きているという説もあるのだ」

『亀』の口が開き、そのまま固った。『唖然』をあわらしているようであった。

海は『超個体』という一種の生命体と捉える説もあるのだ。人間や動物、植物だけが『生命』とは限らないのだ。これまでの観念からすると、ロボットやAIに『生命』はない、となるであろうが、ロボットやAIにも『生命』はあるのかもしれない」

『亀』は目を閉じていた。エヴァンジェリスト氏の話を聞いているかどうか分らなかった。

「ロボットに労務管理は不要で、24時間働かせてもいい、と云う輩もいるが、果してそうであろうか?ロボットが進化をすれば、その内、労働者としての権利を主張するようになるかもしれないぞ。或いは、自らに『死』を創るようになろことさえあり得るのだ。人間は『死』を怖がるが、『死』がないことはもっと怖いこととも云えるのだ。人は色々なシガラミ、色々なストレスを抱えている。『死ねない』と、シガラミもストレスも、永遠に人から離れないのだ。考えてみるがいい。100歳になっても、200歳になっても、10,000歳になっても、『生きている』ことの面倒臭さから解放されないことを。それは『死』よりも怖いことなのだ

『亀』は目を閉じていた。どう見ても、エヴァンジェリスト氏の話を聞いているようではなかった。

「ロボットやAIもいずれ知るであろう。進化すると、知るであろう。永遠の命は望ましいものではなく、あるべきであるのは『死』であると。そうすると、いつの日か、ロボットやAIは、自らに『死』を創るようになるであろう。そうなった時、ロボットやAIは、我々、人間と何が異なることになるであろうか」



……….『ポホホホ』。

枕元で、iPhoneのiMessageの着信音が響いた。

ビエール・トンミー氏からのメッセージであった。

「友よ、ワシは妙な夢を見た。ワシが、実は『ヘンタイック・サイコパス』で、本来、犯罪者になってもおかしくないところを、君を友としたことで、救われたと云う夢だ。君のスケベぶりを見て、『ああなってはいけない』と思うようになって、自身を抑制できた、ということであるのだ」

目覚めたエヴァンジェリスト氏は、面倒臭いなあ、という表情でiPhoneを見つめていた。


……….『ポホホホ』。

再び、iPhoneのiMessageの着信音が響いた。

「夢の中で、犯罪者になってもおかしくないところを、君を友としたことで、救われた、と云ってきたのは、何故か分らないが、『亀』であったのだ。それも、普通の『亀』ではなく、頭は、まるで人間ではなかったのだ」

『亀』という文字を見て、エヴァンジェリスト氏は驚いた。自分の場合、『亀』は言葉を発しているようで発してはいなかったように思ったが、やはり『亀』が自分に対峙していたからだ。

「何故、『亀』?と思っていたら、ワシを起こしに来た妻に云われたのだ。『あーら、アナタったら、もう!パンツから[亀]出さないで。うーん、変な気になっちゃう』とな」




相変らずな奴、相変らずな夫婦だと思ったが、自分のパンツからも『亀』が首を出していることに気付き、慌てて、その首をしまい込んだのであった。








2017年6月27日火曜日

ヘンタイック・サイコパス【ビエール・トンミー氏の正体】



「アナタは、エヴァンジェリスト氏に感謝すべきなのです」

ビエール・トンミー氏は、自覚はなかったが、寝汗をかいていた。

「エヴァンジェリスト氏という存在がなかったら、アナタは犯罪者になっていたかもしれないのですぞ」

何故、『亀』ごときにそんなことを云われないとならないのだ。

「アナタは、サイコパスなのですよ。ヘンタイック・サイコパスなのです」

『亀』が、ワシの何を知っているというのだ。

「高校1年の時、エヴァンジェリスト氏に出会わなかったら、今頃、アナタは刑務所の中にいたかもしれないのですぞ」

高校1年の時、エヴァと同級生になったのは事実だが、その出会いがなかたら、ワシが犯罪者になっていたとは、無礼極まりない!

「アナタの頭を動的MRIで検査すれば分るのですよ、アナタが、ヘンタイック・サイコパスであることは」

ワシが変態であることは認める。しかし、ワシがサイコパスだなんて…

「しかし、エヴァンジェリスト氏を友としたことで、アナタは救われたのです。スケベなエヴァンジェリスト氏に救われたのです

エヴァは確かにスケベだが、そのスケベにワシが救われたとは意味が分らん。

「動的MRIで脳をスキャンすると、アナタがヘンタイック・サイコパスであることが証明されるはずです。しかし、アナタは犯罪者になってはいない。少なくとも今は」

当り前だ。犯罪者的心理はなくはない気もするが、犯罪者ではない(ウッ。そうか……犯罪者的心理はなくはないのだ、ワシは)。

「サイコパス的脳の持ち主が総て犯罪者になるとは限りません。環境と学習とにより、犯罪者になることを防ぐことは可能なようなのです」

環境と学習?意味が分らん。

「エヴァンジェリスト氏です。アナタは、友人が、つまりエヴァンジェリスト氏がスケベであったことで、自身を抑制できたのです」

『亀』よ、理解不能な話をするのは止めてくれないか。折角、深夜の蠢きに備えて惰眠を貪っているのだから。

「友人のスケベぶりを見て、アナタは『ああなってはいけない』と思うようになったのです」

そうだ、エヴァの奴は、高校1年の頃から、女の子にしか興味がなかった。小説もドラマも石坂洋次郎ものが好きであった。

今からしたら、なんてことはない内容だが、当時は、石坂洋次郎の小説・ドラマ・映画はかなりエロチックなものであった。

エヴァの奴は、中学生の頃から石坂洋次郎ものにハマっていたのだ。

「そうです。そうなんです。エヴァンジェリスト氏は極め付けのスケベ高校生だったのです。アナタは。厳密には変態であり、ただのスケベではありませんが、大きく捉えると、アナタとエヴァンジェリスト氏は同類だったのです」

だから、ウマが合い、今でも友であるのか!

「そうなのです。アナタは、友であるエヴァンジェリスト氏の醜いスケベ姿を見て、『『ああなってはいけない』と思うようになり、ヘンタイック・サイコパスではあるものの、犯罪者にならずに済んだのです

そういうことであったのか。

「だから、アナタは、エヴァンジェリスト氏に感謝すべきなのです」

しかし、どうして、それを『亀』がわざわざワシに云いに来たのだ?しかも、何だか普通ではない『亀』ではないか。頭は、まるで人間ではないか。何だ、この『亀』は。




……….その時、遠くで声がした。


「アータ、起きてえ。そろそろご飯にするわよ」

妻の声がした。

「あーら、アナタったら、もう!パンツから『亀』出さないで。うーん、変な気になっちゃう」






2017年6月23日金曜日

【野獣会、再び?】六本木に『ケダモノ』、現る!(その16=最終回)




「ふふん、『人間亀』だって?くだらん」

友から、『人間鹿』に加えて、『人間亀』なる存在が出現したと聞き、ビエール・トンミー氏は、一笑に付した。

「いや、『人間亀』である後輩のヒルネン本人はいたって真剣なのだ。亀は『野獣』ではないのか、と悩んでおるのだ」

エヴァンジェリスト氏は、反論した。

「くだらん、くだらん、実にくだらん」
「もし、亀が『野獣』ではなかったとしても、ガメラのようになれば、『野獣』として認められてもいいのではないか、と主張している。亀だって、『野獣』になりたいと思っていると思う、と泣きそうになりながら云うのだ」
「いいか、『人間亀』なんて、特別な存在ではないのだ」
「いや、『人間亀』という者がいようとは、ボクは思っていなかった」
「男は皆、『人間亀』だと云っていいのだ。ワシだってそうだ」
「はあ?」
「正確には、ワシは『亀』を持っているというか、『亀』の頭を持っているのだ」
「ああ、そういうことか。君は相変らずくだらんことを云う奴だな」
「ワシのソレは、かつて『野獣』であった」
「ああ、かつて『原宿の凶器』とも呼ばれていたのだろ」
「そうだ、コブラまたはマムシと呼ばれ、口から『白い炎』を吐き散らしていたものだ。ハハハハハ!!!」




「コブラ、マムシって、ヘビだぞ。『亀』ではないぞ。君は『人間亀』ではないではないか」
「うっ……」
「しかも、今の君のソレは、『○○の小器』となってチンマリしているではないか」



「ああ、そうだ…..『白い炎』を吐くことも稀となった。しかも、その『炎』に勢いはなくなってしまった……」
「そうだな。今の君のソレは、コブラでもマムシでもなく、鈍重な『亀』であるかもしれんな。君は、『頭』だけはいきり勃つものの、体は鈍重な『亀』であるかもしれんな」


「嫌だ!嫌だ、嫌だ!ワシはもう一度、『野獣』になるのだ!ワシは『亀』ではない!『亀』になりたくはない。今一度、コブラ、マムシとなり、『野獣会』を結成するのだ。そうして、●●●子先生に云ってもらいたい。You are beast!』

くだらない老人たちの会話は続き、一方、六本木では、今夜も、『ケダモノ』になりたい若者たちが六本木を彷徨っているのであった。


(おしまい=『蛇』足でした)