「(そうなんだ。今はもう、ボクには、『獲物』に突進して行くだけの『元気』がなくなった。水中に潜んだままの、平和なイメージそのもののカバのような存在になってしまった)」
と、ビエール・トンミー氏が、水面に火を出したまま、水中に沈む自らの、かつての『巨砲』へと悲しげな視線を落としたような感覚に囚われていると、友人のエヴァンジェリスト氏が、顔を上げさせるようなiMessageを送ってきた。
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「でものお。アンタが、アンタのカバみたいに平和なイメージの裏に凶暴さを潜めさせておっても、もう、その凶暴さも失せてしもうとろうと、問題は、そこじゃないんよ」
「ああ、そこやあらへん」
「『カバヤン王国』は、どこにあったか、とワシは訊いとるんよ」
「ああ、そないなこと云うてたな。問題は、そこともちゃうと思うけど」
「ヒントは、『ターバン』じゃ」
「『ターバン』?」
「あ、アンタ、また勘違いしんさんなよ。『アラン・ドロン』は関係ないけえね」
「またや。また、『関係ないけえ』や。関係あらへんのやったら、そのこと、な~んも云わんでエエ」
「いや、アンタ、『SNCF』の大家で、フランス語の造詣が深いけえ、『ターバン』と聞いたら、『D'URBAN, c'est l'elegance de l'homme moderne.』いう『アラン・ドロン』を連想するんじゃないかあ、思うたんよ」
「あ、『ダーバン』やな?ふん、『ターバン』で、『ダーバン』か?」
「やっぱり連想したんじゃね」
「んん?連想はしてへんけど、アンサンのくだらんシャレくらい想像はつくねん」
「『ジャグジート・スィン・ハンス』も関係ないけえね」
「もうエエ加減にしいや!『ジャグジーバス』かなんか知らへんけど、『関係ないけえ』やろ?関係あらへんのやったら、そのこと、な~んも云わんでエエ、云うてるやろ」
「なんねえ、『ジャグジート・スィン・ハンス』のこと知らん風に云うて、アンタ、『ジャグジート・スィン・ハンス』が誰のことか、知っとるんじゃないねえ」
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「(アイツ、何云っているんだ?『ジャグジーなんとか』なんて、ボクは、絶対知らないぞ)」
と思いながら、ビエール・トンミー氏は、迂闊にも想像してしまった頭にターバンを巻いたアイツこと友人のエヴァンジェリスト氏が女性然として『ジャグジーバス』に入っている姿を頭の中から搔き消す為、両眼を強く閉じ、頭を細かく左右に振った。
(続く)
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