「讃岐うどんは、飲むんですよ」
久しぶりに訪れた高松で、一緒に出張したローラク・クイーン13世に云った氏のその言葉自体に問題はなかった。
協業先のT社の四国支社のタッキーNo.1氏に、「川福」で教わったのだ。
「エヴァンジェリストさんね、うどんは飲むんですよ。噛んじゃダメです」
「川福」は、高松のうどんの名店である。タッキーNo.1氏が教えてくれた店で、店のつくりは普通のうどん屋さんだが、確かにうまい。
タッキーNo.1氏に教わった通り、噛まずに飲んでみたが、上手くいかない。結局は噛んでしまう。幾度か高松に出張し、その度に「川福」で、生醤油うどんを食べ、練習するうちになんとか飲めるようになってきた(うどんは、生醤油うどんに限る)。
爾後、一緒に高松に出張した同僚を例外なく「川福」に連れて行き、云うのであった。
所謂、知ったかぶりである。
今回の出張でも、エヴァンジェリスト氏はローラク・クイーン13世を「川福」に連れて行き、云った。
「13世さんね、うどんは、飲むんですよ。噛んじゃダメなんです」
そこまでは、いつも通りであった。
しかし、氏は余計な一言を云ってしまったのだ。
「うどんを飲むってねえ、食欲を満たすって云うよりも、肉体的な快感を覚えさせるんですよ」
ローラク・クイーン13世はレディである。レディに対して云う言葉であろうか。
「喉が欲しがるんですよ。喉が」
所謂、喉ごしのことを云いたかったらしいが、言い方がお下劣である。
氏によると、高松に出張したものの、時間がなく、うどんを食べずに(飲まずに)、次の出張地である岡山に向うべく、高松駅に行き、快速マリンライナーの座席に座った瞬間に思ったらしい。
「うどんが欲しい。喉にうどんを通したい!」
自分にそんな趣味はないが、こりゃ、食欲ではなく、肉欲だな、と思ったそうだ。
「お下劣ですね。少なくともレディ−に対して云う言葉ではないですよ」
そう批判した私に氏は云う。
「このことをお下劣だと思う君の方がお下劣だ。実際、13世さんは微笑んでいただけだ」
「そりゃ、レディだからですよ。レディだから、受け流したんですよ」
そんな私の言葉もものかわ、氏は云う。
「ああ、うどんを飲みたい。喉にうどんを通したい!」
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