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2017年6月18日日曜日

【野獣会、再び?】六本木に『ケダモノ』、現る!(その12)



年末に北海道で趣味のスキー・ジャンプをした際に、着地に失敗し、足を骨折した男は、フィリピン女性『YOU』に、

「You are not beast po  You cannot become beast po!」

と云われ、ある意思を固めた。

「リハビリするぞ po!リハビリして、オレは『野獣』になる po!オレは必ず『野獣会』に入る po !」

しかし、果して、アソコをどのようにしてリハビリするかは不明であった。




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「質問しても宜しいでしょうか、エヴァさん?」

エヴァンジェリスト氏が、自宅から持参した昼食の弁当を食べ終えると、向かいの席からヒルネン氏が、声をかけてきた。

「ああ?.....事務所を通してくれ」

エヴァンジェリスト氏はまだ20歳台の若い後輩に対してつれなかった。

「あの事務所って、どこのですか?」

いつもは愛想のいい先輩なのに、どうしたのだろう?

「ノーコメントだ」

しかし、ビルネン氏は、怯まなかった。

「教えて欲しいんです」

普段なら、ヒルネン氏は、昼寝をしている時間だ。その時間に、つれない先輩に食い下がるとは、それ程に訊きたいことがあるのだろう。

「ティムは、まだ公式には何も発表していないはずだ」
「ティム?......ひょっとして、ティム・クックのことですか?『アップル』の」
「まき子夫人も渡さんも、公式発言はしていないであろう」
「石原プロのことですか?」
「桑田さんも、松本さんも、迂闊なことを口にする人ではないぞ」
「誰ですか?桑田とか、松本とか?.......テレビのプロデューサーかなんかですか?」
「うっ……..ノーコメントだ。事務所を通してくれ」

エヴァンジェリスト氏が何を云いたいのか、或いは、何を言いたくない振りをして実は何か云いたいのか、分らなかったが、ヒルネン氏は、質問をぶつけた。

「亀は『野獣』でしょうか?」
「はあああ?」

エヴァンジェリスト氏は、想定もしていなかった質問に思わず反応してしまった。

「もし、亀が『野獣』ではなかったとしても、ガメラのようになれば、『野獣』として認められてもいいにではないでしょうか?」

お昼休みはいつも、机の下に足を投げ出し、椅子に背中滑らせ、寝そべって、亀のように首を机の下に隠すようにしているヒルネン氏が、この日は、亀のようにエヴァンジェリスト氏に向け首を伸ばして、食い下がった。

「亀だって、『野獣』になりたいと思っていると思うんです!」

噛みついたら放さないつもりだ。スッポンのようだ。

「ヒルネン、君は一体、何者だ?何を企んでいるのだ?」

自分が訊かれたくない話を持ちかけてきたのではないと分ると、エヴァンジェリスト氏は反撃に出た。

「はっ!?......いえ、何でもありません」
「そんなはずはないだろ。君は亀なのか?『野獣』になりたいのか?」
「ノーコメントです。ノーコメント!事務所を通して下さい!」

そういうと、ヒルネン氏は、いつものように首を縮め、机の下に隠したのであった。






(続く)




2017年6月17日土曜日

【野獣会、再び?】六本木に『ケダモノ』、現る!(その11)



毎週木曜日の朝に、会社で外国人との英語での電話会議に苦しむ人間鹿こと、アオニヨシ氏が、英語力を見つけるなら『ピロー・トーキング』だと云うエヴァンジェリスト氏の助言に従い、『ピロー・トーキング』を求めて六本木の夜に繰り出し、ブロンド『YOU』や赤毛の『YOU』、ブラック『YOU』たちから、『レッスン』を受けるようになった。

『YOU』たちは、『レッスン』の場であるホテルのベッドの上で、人間鹿に対して、叫ぶのであった。

「You are beast!」

こうして、六本木に『野獣会』復活、と云う噂が流れるようになり、その噂を聞きつけ、『野獣会』入りを目指して夜の六本木に来る若者たちがいた。

自分の『ケダモノ』を持て余している若者たちである。




==========================


「Why did you come to Japan po?」

と話しかけられたブロンド美女『YOU』は、怪訝な顔をして、足を早めて、地下鉄の入り口へと立ち去った。

Where are you from po?」

と話しかけられたスタイル抜群の黒人女性『YOU』は、

Po ??? Are you pigeon?」

と声をかけて来た男に質問を投げ返したものの、返事を聞こうともせず、アマンド前から六本木一丁目方面に下って行った。

男は、それでも懲りずに、女性『YOU』に声をかけていった。

しかし、足を骨折し、松葉杖をつき、妙なメガネをかけ、妙な英語で迫る男を相手にする女性『YOU』はいなかった



男は、噂を聞いたのであった。

六本木に伝説の『野獣会』が復活したというのだ。

昭和30年代、田辺靖雄を中心として、ムッシュかまやつ、井上順、中尾彬、峰岸徹、小川知子、大原麗子らをメンバーとした遊び人のグループ、あの『野獣会』だ。

その『野獣会』に入るには、『YOU』に『ケダモノ』に認定される必要があると噂されているのだ。

しかし、なかなか『成果』は上がらず、男は新手を考えた。

I have a pen po. I have an apple po…..」

と流行りの身振り手振りで迫ってみたところ、

「Oh, po!Pico po!」

東南アジア系と思しき女性『YOU』に受けたのだ。

「Hotel lesson, OK po?」

と直接的に誘ったところ、

「OK po! Let’s go po !」

と意外な反応であった。

男には自覚がなかったようだが、フィリピンに仕事で2年程滞在している間に、少しは英語を喋ることができるようになっていたと思っていたのだ

確かに、少しは英語を喋ることができるようにはなっていたが、その英語は『taglish』であったのだ。いや、正確には『taglish』風訛りと云った方がいいであろう。

『taglish』は、タガログ語(Tagalog) と英語(English) が混ざった言葉である。

男がマスターしたのは、『taglish』ではなく、英語の語尾にタガログ語の『po』をつける訛った英語であったのだ。

I have a pen po. I have an apple po…..」

と流行りの身振り手振りで迫られた『YOU』は、フィリピン人であったのであろう。

『po』を連発する妙な日本人に懐かしさを覚えたものと思われる。

「OK po! Let’s go po !」

と意外な反応をしたフィリピン女性『YOU』と骨折男は、『lesson』の為にホテルに向った。

……………1時間後。

骨折男は、ホテルの窓から夜の六本木を眺めていた。

「ふーっpo

口から吐いたため息の先に幾つものネオンが瞬いていた。

「You are not beast po  You cannot become beast po!」

『レッスン』場としたベッドの上で、フィリピン女性『YOU』は叫んだのであった。

そして、フィリピン女性『YOU』は、ホテルの部屋のドアをバーン!と締め、出て行ったのだ。

「オレ、『野獣会』に入れないのかなあ po…..」

と項垂れた男は、パンツを脱いだ自身の下半身を見た。

そこには、包帯が巻かれたアソコがあった。

年末に北海道で趣味のスキー・ジャンプをした際に、着地に失敗し、骨折したのであったが、その際に、アソコも『骨折』したというか、少々傷つけてしまったのだ。

フィリピン女性『YOU』が、

「You are not beast po  You cannot become beast po!」

と云うのも無理はなかったのだ。

骨折男は、頭の中だけ『ケダモノ』になり、自身のアソコの状態を忘れていたのだ。

だが、懲りない男は、ある意思を固めた。

「リハビリするぞ po!リハビリして、オレは『野獣』になる po!オレは必ず『野獣会』に入る po !」

しかし、果して、アソコをどのようにしてリハビリするのであろうか。



(続く)




2017年6月16日金曜日

【野獣会、再び?】六本木に『ケダモノ』、現る!(その10)




「そう、人間鹿の『野獣』に『YOU』たちはゾッコンなのですよ。今、巷では六本木に『野獣会』復活か、という噂が流れていますが、その『野獣会』復活の正体は人間鹿のことだと思います」
そうか、そうだったのか………特派員の衝撃の報告を聞いたエヴァンジェリスト氏は、今や可愛いハリネズミのように縮こまってしまった自分のアソコを思い、項垂れたのであった。




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『レッスン』を終えた人間鹿は、ホテルの窓から夜の六本木を眺めていた。

「ふーっ」

口から吐いた紫煙の先に幾つものネオンが瞬いていた。




「You are beast!」

『レッスン』場としたベッドの上で、ブロンド『YOU』は叫んだのであった。シャワーを浴びた彼女は、先にホテルを後にしていた。

「…….my boyfriend……..」

ブロンド『YOU』が早口で云った英語は、殆ど聞き取れなかった。『my boyfriend』だけは聞こえたような気がしたので、『カレシが待ってるから….』とでも云っていたのであろう。

「エヴァさんっていい加減だなあ」

会社の先輩であるエヴァンジェリスト氏は教えてくれたのであった。

「英語力を身につけたかっらた、『ピロー・トーキング』が一番だぜ」

毎週木曜日の朝に、会社で外国人と電話会議をすることになったものの、英語力がなく苦しんでいる人間鹿に、エヴァンジェリスト氏はアドバイスをしてくれたのだ。

「イノキさんは、公式の場では通訳をつけて発言するようにしているが、英語の日常会話には苦労はされていないはずだ。最初の奥さんは、つまり、ミツコさんの前の奥さんはアメリカ人だったんだ」

イノキさんのことになると、エヴァンジェリスト氏の言葉には熱がこもる。

「イノキさんは、『ピロー・トーキング』で英語を覚えたんだ」

『タイチョー(隊長)、タイチョ-(体調)が悪いんですが』といった笑えないギャグを飛ばしまくっている先輩のアドバイスに従ってもなあ、とは思いつつも、藁にでもすがる思いであったのだ。

外国人との電話会議はそれ程に苦痛で、何とか英語力を身につけたかったのだ。

そこで、人間鹿こと、アオニヨシ氏は、毎夜、六本木に繰り出した。会社からあまり遠くないところで、外国人が多く集まる場所と云えば、六本木であろう、と思ったのだ。

ロアビル近くで、

「Why did you come to Japan?」

と『YOU』の声をかけ、ミッドタウン前の路地を入ってすぐ辺りの静かな場所では、

Where are you from?」

とまた別の『YOU』に話し掛け、芋洗坂にいた『YOU』には

I have a pen. I have an apple…..」

と流行り言葉も使ってみた。

そうすると、『YOU』たちは、面白いように英語の『個人教授』を引き受けてくれた

勿論、大した英語は喋れないので、

「Private lesson, OK?」

しか云えなかったが、それでも『YOU』たちは人間鹿に付いて来たのである。

彼女たちは、人間鹿の英語なんかまともに聞いていなかった。ただ、人間鹿の放つ独特の臭い、『野生』の臭いの虜になったのだ。

彼女たちはまた、人間鹿の下半身を見て一様に、

「Oh, incredible!」

と叫んだ。

『レッスン』はホテルで受けた。ホテルのベッドの上だ。

しかし、ブロンド『YOU』も、赤毛の『YOU』も、ブラック『YOU』もただ、

「I’m comming!」

とか、

「You are beast!」

等、限られた英語しか『教えて』くれなかった。

『YOU』たちは、人間鹿に『レッスン』して満足気であったが(『YOU』たちの方は、逆に人間鹿から『レッスン』を受けたと思っていたかもしれない)、アオニヨシ氏は不満が募るばかりであった(下半身は満足していたようであったが)。

覚えたての英語を木曜朝の電話会議で使ってみた。

「I’m comming!」

と云ったところ、電話の相手の『YOU』は、

「What?」

と云い、電話会議の同席していた女性上司は、顔を赤らめた。

「You are beast!」

と云うと、やはり同席していた同僚に口を抑えられ、その日の会議中、オアニヨシ氏の口は塞がれたままであった。

「エヴァさんっていい加減だなあ。でも、それを信じたオレが馬鹿ってことか、まあ、『鹿』だけにな」

『ピロー・トーキング』を勧めたエヴァンジェリスト氏の言葉を真に受けた自分を責めた。

しかし、人間鹿はその夜も、『ピロー・トーキング』を求めて六本木の夜に繰り出し、ブロンド『YOU』から、『レッスン』を受けたのであった。

「You are beast!」

その夜のブロンド『YOU』もその言葉くらいしか教えてくれなかった。しかし、『レッスン』したことで自分だけは満足して帰って行ったのだ。

「エヴァさんっていい加減だなあ」

と思いつつも、人間鹿は明日の夜も六本木に現れるのだ。


…….こうして、六本木に『野獣会』復活、と云う噂が流れるようになったのであった。

そして、その噂を聞きつけ、『野獣会』入りを目指して夜の六本木に来る若者たちがいたのだ。

自分の『ケダモノ』を持て余している若者たちである。


(続く)



2017年6月15日木曜日

【野獣会、再び?】六本木に『ケダモノ』、現る!(その9)




人間鹿ことアオニヨシ氏は、昼間の六本木ヒルズ辺りで目撃された時には、まさに人間鹿で、頭部が鹿で体が人間であったが、夜、ロアビルやミッドタウン近くに、そして、芋洗坂に現れた時には、頭部と体が逆になっていたという。頭部が人間で、体部分が鹿になっていたというのである。

特派員は報告した。


「そうなのです。体部分が、と云うか、下半身(アソコが)が『野獣』に戻っていたのです。しかし……しかし、妙なのです…….」




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「しかし……しかし、妙なのです…….」

特派員は首を傾げて、エヴァンジェリスト氏に向け、呟いたのであった。

「人間鹿は、『YOU』と見たら、片っ端から声をかけていました。でも、妙なのです。声を掛けた相手が、フランス人やドイツ人だと、それ以上、話かけることはせず、直ぐに次の『YOU』に移るのです」

うーむ、アオニヨシは、フランス人やドイツ人が嫌いだったかなあ?

「イタリア人やスペイン人、ポルトガル人も駄目のようでした」

ヨーロッパ人が駄目なのか?

「いえ。正確に申しますと、フランス人やドイツ人、イタリア人が駄目というよりも、フランス語、ドイツ語、スペイン語しか話さない相手を避けていました。英語を流暢に話せるのであれば、フランス人でもドイツ人でも、ルーマニア人でもインド人でもいいみたいでした」

まあ、アオニヨシにフランス語やドイツ語が話せるとは思えないから、分らぬでもない。とはいえ、英語が達者だった記憶はないが。

「そうなんです。人間鹿の英語は酷いものです。『Why did you come to Japan?』と訊いた後は、『Where are you from?』『I have a pen. I have an apple.....』くらいしか云えていませんでした」

そんな英語力で『YOU』をナンパなんて烏滸がましいやつだ。

「ところが、人間鹿は、毎夜のように、ブロンド『YOU』たちとミッドタウン方面のホテルに消えていくのです。腕を組んで歩く『YOU』の方が背が高く、人間鹿の方が引っ張っていかれているようにも見えました」

そ、そんなはずがない。老いたとはいえ、まだ『原宿のアラン・ドロン』とも云われた美貌の名残りのあるビエール・トンミー氏ならまだしも、アオニヨシが、あの程度の美貌と貧弱な英語力で『YOU』を虜にするとはてても思えない。

「あ~。アナタは何も分っていらっしゃらない。人間鹿には、アナタもビエール・トンミー氏も敵わない『ケダモノ』の『部分』があるのです。人間鹿のアソコは、まさに『野獣』そのものなのです

うっ!そうか、そうだったのか!確かに、アオニヨシは、iPhoneを首から下げ、Yシャツの胸ポケットに入れず、それをそのまま垂らし、股間にあてバイブレーションで鍛えていたのであった。




「そう、人間鹿の『野獣』に『YOU』たちはゾッコンなのですよ。今、巷では六本木に『野獣会』復活か、という噂が流れていますが、その『野獣会』復活の正体は人間鹿のことだと思います」




そうか、そうだったのか………特派員の衝撃の報告を聞いたエヴァンジェリスト氏は、今や可愛いハリネズミのように縮こまってしまった自分のアソコを思い、項垂れた。

しかし、世には、まだまだ自分の『ケダモノ』を持て余している若者たちがいたのであった


(続く)




2017年6月12日月曜日

【野獣会、再び?】六本木に『ケダモノ』、現る!(その7)




「鹿です!そう、紛うことなく、それは鹿でした」

六本木の特派員からエヴァンジェリスト氏への報告だ。

「驚くじゃあ、あーりませんか。鹿が夜の芋洗坂にいたんですよ」

かなり興奮している。

「シカも、ただの鹿ではないのです。写真をお送りします」





おお、これは!

「そう、人間鹿です。噂に聞いてはいましたが、見るのは初めてです。ついに六本木に出現です。ハリネズミなら驚きませんが、鹿なのです。それも人間鹿なのです」

何故、アイツが六本木に、アオニヨシはどうして芋洗坂にいるのだ?

アイツは今、会社で仕事に追われているはずだ。芋洗坂に行っている暇はなかったのではないか。

「多分、『遊び』に来たのです」

それはそうであろう。仕事ではないはずだ。今、アイツは六本木に顧客を持ってはいないのだ。

「いえ、『遊び』と言っても、アッチの方の『遊び』です」

アッチの方の『遊び』?

『YOU』系です。『YOU』系の『遊び』です」

『YOU』系って…..?

『YOU』ですよ。『YOU は何しに日本へ?』『YOU』です」

そうか、外国人のことか。

そうなのか、人間鹿は、六本木にいる外国人にWhere are you from?』と話しかけているのか。テレビ東京の番組の真似っこ遊びをしているのか!

「あ~。アナタは何もわかっていらっしゃらない」

特派員は、クネクネと首を振った。「呆れたよ」という素ぶりであった。



(続く)





【野獣会、再び?】六本木に『ケダモノ』、現る!(その6)



かつて六本木にあったとされる『野獣会』が、およそ60年の時を経て、復活されようとしている、という噂があった。

「キーッ」

六本木の夜、ロアビル辺りの上空に、金属音のようなものを聞いたCAのシゲ美とOLのトシ江は、白人女性に声を掛ける「男」を見かけた。

「Hi!」

しかし、「男」からは、肉食系の二人には、直ぐに分る野生の臭いがした

いや、それは「男」であっただろうか?

「違う…..」
「違うわね」

二人は呟きあった。

「Where are you from?」

と続けて白人女性の声を掛ける「男」は、人間ではいことは、『野生』に敏感なシゲ美とトシ江には分るのであった。

….と、二人は、それぞれ肩を叩かれた。

「ね、君たち、一緒に、焼肉食いに行かない?」

とダサい男にナンパされ、振り切り、『野生』の方を見た。

しかし、そこに「男」はもういなかった。

なんだったのだろう?

CAのシゲ美とOLのトシ江は、その時まだ、『野獣会』の復活の噂を知らなかったであった。





====================


「キーッ」

六本木の夜、ミッドタウン前の路地を入ってすぐ辺りの静かな場所の上空に金属音のようなものが響き渡った。

外国人ばかりで店員も英語で注文を取りに来るサパークラブを出て来たシゲ代とトシ美は、上空を見上げた。

週に二、三度は六本木に来ているが、初めて耳にする音であった。

上空を見上げる二人の横を一つの影が通り過ぎた。

「え?......何、今の?」

シゲ代とトシ美は、互いに相手に同じ質問を投げかけた。

野生の臭いであった。肉食系の二人には、直ぐに分る臭いであった。

「Hi!」

数メートル先に、白人女性に声を掛ける男がいた。

いや、それは「男」であっただろうか?

「違う…..」

トシ美が呟いた。

「違うわね」

シゲ代も呟き返した。

「Why did you come to Japan?」

と続けて白人女性の声を掛ける「男」は、人間ではなかったのだ。

「あら、バナナマンの番組の取材じゃない?」

近くにいたカップルの女性が、カレシにそう云った。

他の人たちには人間に見えるかもしれなかったが、『野生』に敏感なシゲ代とトシ美には分るのであった。

….と、二人は、それぞれ肩を叩かれた。

「君たち、タクシー代出すから、家ついて行っていいかな?」

ナンパだ。新手のナンパだ。向こうも男二人だ。

どこかの番組の真似でふざけている。しかも、二人とも老人であった。

こんな奴らには興味はない。

気になる。気になるのは『野生』の方であった。

シゲ代とトシ美は、肩に手を回している老人二人を振り切り、『野生』の方を見た。

しかし、そこに「男」はもういなかった。

なんだったのだろう?

女医のシゲ代とOLのトシ美は、その時まだ、『野獣会』の復活の噂を知らなかった。




(続く)




2017年6月11日日曜日

【野獣会、再び?】六本木に『ケダモノ』、現る!(その5)




かつて六本木にあったとされる『野獣会』が、およそ60年の時を経て、復活されようとしている、という噂があった。

『野獣会』復活を目論んでいるのは、『原宿の凶器』と呼ばれたモノの持ち主であるビエール・トンミー氏ではないかと目された。

マダム・トンミーも、普段は、知的、理性的な夫が、実は『ケダモノ』でもあったことを思い出し、疑念を抱いた。

「この人、『野獣会』なのかしら?外で『ケダモノ』になってるのかしら?」

しかし、それは無用な心配であった。

妻の疑念も知らず惰眠を貪っていたビエール・トンミー氏の『原宿の凶器』は既に、今や『○○の小器』となってチンマリしていたのである。





====================


「キーッ」

六本木の夜、ロアビル辺りの上空に、金属音のようなものが響き渡った。

「六本木横丁」で焼肉を食べ終えたシゲ美とトシ江は、上空を見上げた。

週に二、三度は六本木に来ているが、初めて耳にする音であった。

上空を見上げる二人の横を一つの影が通り過ぎた。

「え?......何、今の?」

シゲ美とトシ江は、互いに相手に同じ質問を投げかけた。

野生の臭いであった。肉食系の二人には、直ぐに分る臭いであった。

「Hi!」

数メートル先に、白人女性に声を掛ける男がいた。

いや、それは「男」であっただろうか?

「違う…..」

トシ江が呟いた。

「違うわね」

シゲ美も呟き返した。

「Where are you from?」

と続けて白人女性の声を掛ける「男」は、人間ではなかったのだ。

他の人たちには人間に見えるかもしれなかったが、『野生』に敏感なシゲ美とトシ江には分るのであった。

….と、二人は、それぞれ肩を叩かれた。

「ね、君たち、一緒に、焼肉食いに行かない?」

ナンパだ。いつものことだ。向こうも男二人だ。

しかし、ダサい誘い方だ。しかも、二人ともブサメンであった。

こんな奴らには興味はない。

気になる。気になるのは『野生』の方であった。

シゲ美とトシ江は、肩に手を回している男二人を振り切り、『野生』の方を見た。

しかし、そこに「男」はもういなかった。

なんだったのだろう?

CAのシゲ美とOLのトシ江は、その時まだ、『野獣会』の復活の噂を知らなかった。





(続く)








2017年6月8日木曜日

【野獣会、再び?】六本木に『ケダモノ』、現る!(その4)



かつて六本木にあったとされる『野獣会』が、およそ60年の時を経て、復活されようとしている、という噂があった。

その噂を耳にしたマダム・トンミーは、普段は、知的、理性的な夫が、実は『ケダモノ』でもあったことを思い出し、疑念を抱いた。

「この人、『野獣会』なのかしら?外で『ケダモノ』になってるのかしら?」

と、妻が無用な心配をしていることも知らず、ビエール・トンミー氏は、惰眠を貪っていたのであった。




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美人講師は、自らの眼を疑った。

眼の前に、『ケダモノ』がいたのだ。

オープンカレッジの教室に何故、『ケダモノ』がいるのだ。

信じ難くて、眼を瞬かせた。

すると、『ケダモノ』は消え、いつものエロ爺がそこにはいた。教室最前列、中央の席に。

舐めるような視線でこちらを見ている。気持ち悪いが、もっと舐めろ、と云う、もう一人の自分の声が聞こえる。

キンコンカンコーン!

そんなことに囚われている場合ではない。講義だ。講義をしなくては。

今日のテーマは、『フォヴイスム』だ。『野獣派』だ。

「『フォヴイスム』が、『野獣派』とされるのは、批評家ルイ・ヴォークセルが…..」

そうか、『野獣派』という言葉から、『ケダモノ』の幻想を見たのだろう。

『野獣派』は、決して『ケダモノ』を描くというものではないが、自分の中にもある、抑え切れない『野生』が、『野獣』という言葉から『ケダモノ』を連想させたのかもしれない

そして、気持ち悪いと思いながらも、自分と同じ『野生』の臭いの持ち主であるエロ爺の姿を『ケダモノ』と見間違えてしまったであろうか。

「先生、質問です。どうかされたのですか?」

しまった!沈黙していたようだ。爺さんに質問というか、声を掛けられてしまった。

マズイ。また、自分の世界に入りかけていた。

「アンリ・マティスは......」

講義を続けた。

しかし、爺さんの臭いがもろに浴びせかかって来る。

「『フォヴイスム』の画家たちを指導したギュスターヴ・モローは、….」

頑張って講義を続けた。

エロ爺の臭いは、『野生』のものだけでなく、老人臭混じりなので、尚更、臭く、饐えたものだ。

そんなもの嗅ぎたくはない。嗅ぎたくはないが、その臭いを自宅に持ち帰ってしまうのだ。

その日も、エロ爺の臭いは、美人講師の意思とは関係なく、彼女の自宅マンションまで付いてきた。

『野獣派』の講義をどう終えたか、記憶にない。

講義の間、幾度も、爺さんが『ケダモノ』に見えた。爺さんの『野生』の臭いが浴びせかかって来た。

疲れた。いつも以上に疲れた。

帰宅し、着ていた服を脱ぎ、クローゼットにかけようとすると、爺さんの臭いが鼻をつく。服に染み付いてしまっているのだ。

「チクショー」

と思いながらも、ハンガーに掛けた服に鼻を近づけてしまう。



爺さんは、言葉は悪いが、本当に『チクショー』だ。そうだ、『野獣』だ。『ケダモノ』だ。

「…若い方たちはご存じないかもしれませんが、かつて六本木にあったとされる『野獣会』が、復活されようとしている、という噂が……」

???…..ニュースだ。帰宅して直ぐつけたテレビから聞こえて来たのであった。

『野獣会』なんて聞いたことはない。しかし、気になった。『野獣会』が何であるのか知らないが、気になった。

『ケダモノ』に化した爺さんの姿が眼前に浮かんで来た。

「あの爺さん、『野獣会』かしら….六本木の夜で『ケダモノ』になるのかしら」


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「あの爺さん、『野獣会』かしら….六本木の夜で『ケダモノ』になるのかしら」

と自宅で呟く美人講師を見た。

美人講師の自宅がどこにあるのか知らない。勿論、行ったこともない。

しかし、美人講師が、自分のことが気になって仕方がない様子を見ている。

「夢だ」

ビエール・トンミー氏は、それが夢であることを自覚していた。目覚めてはいなかったが、眠りの中で、それが夢であることを理解していた。

美人講師が自分に囚われていることに、それが夢と分っていても、ビエール・トンミー氏は、『興奮』した。

目覚めてはいないのに、自分の体に『異変』が生じていることが分っていた。

しかし、その『異変』を妻が見ており、頬を薄桃色に染めて、こうつぶやいたことは知らなかった。

「この人、やっぱり『野獣会』なのかしら?外で『ケダモノ』になってるのかしら?」



(続く)