2017年6月11日日曜日

【野獣会、再び?】六本木に『ケダモノ』、現る!(その5)




かつて六本木にあったとされる『野獣会』が、およそ60年の時を経て、復活されようとしている、という噂があった。

『野獣会』復活を目論んでいるのは、『原宿の凶器』と呼ばれたモノの持ち主であるビエール・トンミー氏ではないかと目された。

マダム・トンミーも、普段は、知的、理性的な夫が、実は『ケダモノ』でもあったことを思い出し、疑念を抱いた。

「この人、『野獣会』なのかしら?外で『ケダモノ』になってるのかしら?」

しかし、それは無用な心配であった。

妻の疑念も知らず惰眠を貪っていたビエール・トンミー氏の『原宿の凶器』は既に、今や『○○の小器』となってチンマリしていたのである。





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「キーッ」

六本木の夜、ロアビル辺りの上空に、金属音のようなものが響き渡った。

「六本木横丁」で焼肉を食べ終えたシゲ美とトシ江は、上空を見上げた。

週に二、三度は六本木に来ているが、初めて耳にする音であった。

上空を見上げる二人の横を一つの影が通り過ぎた。

「え?......何、今の?」

シゲ美とトシ江は、互いに相手に同じ質問を投げかけた。

野生の臭いであった。肉食系の二人には、直ぐに分る臭いであった。

「Hi!」

数メートル先に、白人女性に声を掛ける男がいた。

いや、それは「男」であっただろうか?

「違う…..」

トシ江が呟いた。

「違うわね」

シゲ美も呟き返した。

「Where are you from?」

と続けて白人女性の声を掛ける「男」は、人間ではなかったのだ。

他の人たちには人間に見えるかもしれなかったが、『野生』に敏感なシゲ美とトシ江には分るのであった。

….と、二人は、それぞれ肩を叩かれた。

「ね、君たち、一緒に、焼肉食いに行かない?」

ナンパだ。いつものことだ。向こうも男二人だ。

しかし、ダサい誘い方だ。しかも、二人ともブサメンであった。

こんな奴らには興味はない。

気になる。気になるのは『野生』の方であった。

シゲ美とトシ江は、肩に手を回している男二人を振り切り、『野生』の方を見た。

しかし、そこに「男」はもういなかった。

なんだったのだろう?

CAのシゲ美とOLのトシ江は、その時まだ、『野獣会』の復活の噂を知らなかった。





(続く)








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