「鹿です!そう、紛うことなく、それは鹿でした」
六本木の特派員からエヴァンジェリスト氏への報告だ。
「驚くじゃあ、あーりませんか。鹿が夜の芋洗坂にいたんですよ」
かなり興奮している。
「シカも、ただの鹿ではないのです。写真をお送りします」
おお、これは!
「そう、人間鹿です。噂に聞いてはいましたが、見るのは初めてです。ついに六本木に出現です。ハリネズミなら驚きませんが、鹿なのです。それも人間鹿なのです」
何故、アイツが六本木に、アオニヨシはどうして芋洗坂にいるのだ?
アイツは今、会社で仕事に追われているはずだ。芋洗坂に行っている暇はなかったのではないか。
「多分、『遊び』に来たのです」
それはそうであろう。仕事ではないはずだ。今、アイツは六本木に顧客を持ってはいないのだ。
「いえ、『遊び』と言っても、アッチの方の『遊び』です」
アッチの方の『遊び』?
「『YOU』系です。『YOU』系の『遊び』です」
『YOU』系って…..?
「『YOU』ですよ。『YOU は何しに日本へ?』の『YOU』です」
そうか、外国人のことか。
そうなのか、人間鹿は、六本木にいる外国人に『Where are you from?』と話しかけているのか。テレビ東京の番組の真似っこ遊びをしているのか!
「あ~。アナタは何もわかっていらっしゃらない」
特派員は、クネクネと首を振った。「呆れたよ」という素ぶりであった。
(続く)
0 件のコメント:
コメントを投稿