人間鹿ことアオニヨシ氏は、昼間の六本木ヒルズ辺りで目撃された時には、まさに人間鹿で、頭部が鹿で体が人間であったが、夜、ロアビルやミッドタウン近くに、そして、芋洗坂に現れた時には、頭部と体が逆になっていたという。頭部が人間で、体部分が鹿になっていたというのである。
特派員は報告した。
「そうなのです。体部分が、と云うか、下半身(アソコが)が『野獣』に戻っていたのです。しかし……しかし、妙なのです…….」
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「しかし……しかし、妙なのです…….」
特派員は首を傾げて、エヴァンジェリスト氏に向け、呟いたのであった。
「人間鹿は、『YOU』と見たら、片っ端から声をかけていました。でも、妙なのです。声を掛けた相手が、フランス人やドイツ人だと、それ以上、話かけることはせず、直ぐに次の『YOU』に移るのです」
うーむ、アオニヨシは、フランス人やドイツ人が嫌いだったかなあ?
「イタリア人やスペイン人、ポルトガル人も駄目のようでした」
ヨーロッパ人が駄目なのか?
「いえ。正確に申しますと、フランス人やドイツ人、イタリア人が駄目というよりも、フランス語、ドイツ語、スペイン語しか話さない相手を避けていました。英語を流暢に話せるのであれば、フランス人でもドイツ人でも、ルーマニア人でもインド人でもいいみたいでした」
まあ、アオニヨシにフランス語やドイツ語が話せるとは思えないから、分らぬでもない。とはいえ、英語が達者だった記憶はないが。
「そうなんです。人間鹿の英語は酷いものです。『Why did you come to Japan?』と訊いた後は、『Where are you from?』と『I have a pen. I have an apple.....』くらいしか云えていませんでした」
そんな英語力で『YOU』をナンパなんて烏滸がましいやつだ。
「ところが、人間鹿は、毎夜のように、ブロンド『YOU』たちとミッドタウン方面のホテルに消えていくのです。腕を組んで歩く『YOU』の方が背が高く、人間鹿の方が引っ張っていかれているようにも見えました」
そ、そんなはずがない。老いたとはいえ、まだ『原宿のアラン・ドロン』とも云われた美貌の名残りのあるビエール・トンミー氏ならまだしも、アオニヨシが、あの程度の美貌と貧弱な英語力で『YOU』を虜にするとはてても思えない。
「あ~。アナタは何も分っていらっしゃらない。人間鹿には、アナタもビエール・トンミー氏も敵わない『ケダモノ』の『部分』があるのです。人間鹿のアソコは、まさに『野獣』そのものなのです」
うっ!そうか、そうだったのか!確かに、アオニヨシは、iPhoneを首から下げ、Yシャツの胸ポケットに入れず、それをそのまま垂らし、股間にあてバイブレーションで鍛えていたのであった。
(参照:鹿、ザ・バイブレーション)
「そう、人間鹿の『野獣』に『YOU』たちはゾッコンなのですよ。今、巷では六本木に『野獣会』復活か、という噂が流れていますが、その『野獣会』復活の正体は人間鹿のことだと思います」
そうか、そうだったのか………特派員の衝撃の報告を聞いたエヴァンジェリスト氏は、今や可愛いハリネズミのように縮こまってしまった自分のアソコを思い、項垂れた。
しかし、世には、まだまだ自分の『ケダモノ』を持て余している若者たちがいたのであった。
(続く)
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