2017年6月27日火曜日

ヘンタイック・サイコパス【ビエール・トンミー氏の正体】



「アナタは、エヴァンジェリスト氏に感謝すべきなのです」

ビエール・トンミー氏は、自覚はなかったが、寝汗をかいていた。

「エヴァンジェリスト氏という存在がなかったら、アナタは犯罪者になっていたかもしれないのですぞ」

何故、『亀』ごときにそんなことを云われないとならないのだ。

「アナタは、サイコパスなのですよ。ヘンタイック・サイコパスなのです」

『亀』が、ワシの何を知っているというのだ。

「高校1年の時、エヴァンジェリスト氏に出会わなかったら、今頃、アナタは刑務所の中にいたかもしれないのですぞ」

高校1年の時、エヴァと同級生になったのは事実だが、その出会いがなかたら、ワシが犯罪者になっていたとは、無礼極まりない!

「アナタの頭を動的MRIで検査すれば分るのですよ、アナタが、ヘンタイック・サイコパスであることは」

ワシが変態であることは認める。しかし、ワシがサイコパスだなんて…

「しかし、エヴァンジェリスト氏を友としたことで、アナタは救われたのです。スケベなエヴァンジェリスト氏に救われたのです

エヴァは確かにスケベだが、そのスケベにワシが救われたとは意味が分らん。

「動的MRIで脳をスキャンすると、アナタがヘンタイック・サイコパスであることが証明されるはずです。しかし、アナタは犯罪者になってはいない。少なくとも今は」

当り前だ。犯罪者的心理はなくはない気もするが、犯罪者ではない(ウッ。そうか……犯罪者的心理はなくはないのだ、ワシは)。

「サイコパス的脳の持ち主が総て犯罪者になるとは限りません。環境と学習とにより、犯罪者になることを防ぐことは可能なようなのです」

環境と学習?意味が分らん。

「エヴァンジェリスト氏です。アナタは、友人が、つまりエヴァンジェリスト氏がスケベであったことで、自身を抑制できたのです」

『亀』よ、理解不能な話をするのは止めてくれないか。折角、深夜の蠢きに備えて惰眠を貪っているのだから。

「友人のスケベぶりを見て、アナタは『ああなってはいけない』と思うようになったのです」

そうだ、エヴァの奴は、高校1年の頃から、女の子にしか興味がなかった。小説もドラマも石坂洋次郎ものが好きであった。

今からしたら、なんてことはない内容だが、当時は、石坂洋次郎の小説・ドラマ・映画はかなりエロチックなものであった。

エヴァの奴は、中学生の頃から石坂洋次郎ものにハマっていたのだ。

「そうです。そうなんです。エヴァンジェリスト氏は極め付けのスケベ高校生だったのです。アナタは。厳密には変態であり、ただのスケベではありませんが、大きく捉えると、アナタとエヴァンジェリスト氏は同類だったのです」

だから、ウマが合い、今でも友であるのか!

「そうなのです。アナタは、友であるエヴァンジェリスト氏の醜いスケベ姿を見て、『『ああなってはいけない』と思うようになり、ヘンタイック・サイコパスではあるものの、犯罪者にならずに済んだのです

そういうことであったのか。

「だから、アナタは、エヴァンジェリスト氏に感謝すべきなのです」

しかし、どうして、それを『亀』がわざわざワシに云いに来たのだ?しかも、何だか普通ではない『亀』ではないか。頭は、まるで人間ではないか。何だ、この『亀』は。




……….その時、遠くで声がした。


「アータ、起きてえ。そろそろご飯にするわよ」

妻の声がした。

「あーら、アナタったら、もう!パンツから『亀』出さないで。うーん、変な気になっちゃう」






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