2017年6月24日土曜日

『運動』に身を投じる!【ビエール・トンミー氏の決意】




「ついに、『巨星』が動き始めました」

特派員は興奮気味に報告した。

「アイツが『巨星』かなあ?『去勢』されてしまった干からびた老人だと思うがなあ」

エヴァンジェリスト氏は、信じ難い、と口をへの字に結び、首をゆっくり左右に振った。

「ビエール・トンミー氏は、ついに『運動』に身を投じたのです!」
「アイツは、政治とか信条とかからは遠い奴だと思っていたのだが….」

毎朝、『羽鳥慎一 モーニングショー』を録画までし見る程、友が、世の動きに関心を抱いていることは知っていた。

しかし、友であるビエール・トンミー氏の本性は、夜な夜な、明け方まで、エロ画像・エロ動画を見続け、ドライアイになってしまった、ただの『変態老人』であるはずなのだ。

「いえ、間違いなく『運動』に身を投じたのです!『8020運動』に」

特派員は興奮気味に報告を続けた。

「何なのだ、その『8020運動』とは?」
「ビエール・トンミー氏は、ご自分の部屋に『8020運動』と書かれたポスターを貼り、口を『イーッ』と開け、ニンマリしていました」
「だから、何なのだ『8020運動』とは?」

勿体をつける特派員にイライラしてきた。

「へへーっ。『80歳になっても20本以上自分の歯を保とう』という運動です」




特派員は、嘘を報告したのではなかったが、嘘がバレた時のようにヘラヘラとした態度をとった。エヴァンジェリスト氏をからかってやった、と勝ち誇っているようでもあった。

「なんだ、そんな運動か。アイツが本当にそんな『運動』に身を投じたのか」
「本当です。仕事もリタイアし、オープンカレッジに通い、『西洋美術史』を学ぶくらいしかすることのない老人が、新たな生きがいを見つけたのです」
「まあ暇な奴だからなあ。しかし、アイツがただただ『運動』に参加するとは思い難い」
『歯周病は様々な病気の元と知り、一所懸命、歯垢を取り除いて少しでも長生きしたい』と仰っていました」
「それ、本当かなあ?それは表向きの理由で、本当の理由は歯医者での定期健診で歯科衛生士のお姉さんに『綺麗な歯ですね』と褒められただけのことではないのか?」
「まあ、確かにエロ爺ですからねえ」
「或いは、アイツが取り除こうとしているのは、『歯垢』ではなく『恥垢』ではないのか?」
「そう云われると、ビエール・トンミー氏のアソコは、チーズのような臭いを発し、いつもこちらの鼻がひん曲がりそうになりますからねえ」

エヴァンジェリスト氏と特派員がそんな会話をしている頃、ビエール・トンミー氏は、『8020運動』と書かれたポスターを見ながら、ニンマリしていた。

ビエール・トンミー氏は、呟いた。

「ふふ。誰も知るまい。あの特派員も勘違いしたはずだ….」

そうなのであった。ビエール・トンミー氏が身を投じた『8020運動』は、『80歳になっても20本の歯を残そう』という『8020運動』ではなく、実は……『80歳になっても20歳の娘とイイコトしよう』という『運動』であったのだ。

ビエール・トンミー氏は、『去勢』されてしまった干からびた老人ではないのだ。彼は年老いても未だなお『巨星』の持ち主であるのだから。



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