「エヴァちゃんよ。今、巷では、ロボットとかAIとかが流行っているらしいではないか」
「はああ?」
21時過ぎのビエール・トンミー氏からの電話に、気のない声で答えた。エヴァンジェリスト氏は、仕事に疲れ、20時前にはもう寝ていたのに、友人からの電話に起こされてしまったのだ。
「君はまだ、現役だよな?」
「いや、最近はすっかりご無沙汰だ」
「何を勘違いしているのだ。アッチの方のことではない」
「じゃ、ドッチの方のことだ?」
「ワシはもう引退したが、君はまだ仕事をしているだろ」
「再雇用者ではあるがな」
「最近、巷では、ロボットとかAIとかが流行っていると聞くが、そうであるのか?」
「まあ、そのようであるな」
「君も、ロボットとかAIとかに関っているのか?」
「3-4年前には、ボクが取扱うプロダクトのロボット化を構想したことがある」
「実現したのか?」
「いや、していない。誰も、ボクの発想に付いてくれなかった。冗談を云っているとしか思わなかったようだ」
「まあ、君の発言はいつも巫山戯たものだからな」
「いや、先を行き過ぎていた、というか、誰もボクについてこれなかったのだ」
「では今、実現させるのか?」
「もう、ロボットには興味がない」
「え?もう、ロボットのことはどうでもいいのか?」
「ああ、悪いか?世の皆が、右を向いても左を見ても、ロボットだとかAiだとか云っている。そんなものはもうどうでもいい」
「うーむ」
「皆が取り組むものに取り組んだところで、もう遅いのだ」
「うーむ」
「ロボットに興味がないとまずかったか?」
「うーむ」
「どうした?」
「うーむ」
「いや、君の為に用意したものがあるのだが…..」
「何だ?」
「いや、いい」
「面倒臭い奴だな、いいから云え、何だ?」
「もういいよ」
「いい加減にしろ!何か教えろ!ボクは君の唯一人の友ではないか」
「では……ワシは、君の仕事の役に立てば、と変身した」
「変身?」
「そうだ。写真を送る」
そうして、写真がメールされてきた。
「…….」
エヴァンジェリスト氏は絶句した。
「どうだ!変態ロボだ!」
「……..やはり、ロボットはもういい……」
疲れがいや増したエヴァンジェリスト氏は、電話を切り、再び、眠りについた。
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