2017年9月28日木曜日

劣化?【『引退』の理由】(その4=最終回)




「手術?ビエール・トンミー氏はどこか具合が悪かったのですか?」

週刊『ヘンタイ』の編集長ブロークン・レッグが、エヴァンジェリスト氏に訊いた。

「まあ、悪いところがあったとすれば、美しすぎた、というところであろう」
「ムカつく!」
「ハンサムでもイケメンでもない君には判らんだろうな。ワシには、アイツの気持ちが痛い程、分かる。まあ、同病相憐れむ、というところだ」
「ああ、貴方も面倒臭い人ですね。だから何なんです、手術って?ビエール・トンミーは、何の手術をしたのですか?」
「ふふ。知りたいか?....ふふ」




「何の手術なのですか?」
「整形手術だ!」
「ええ?整形手術?........意味が分りません。整形手術して、どうして今のような『ヒヒジジイ』になるのですか?」
「ハハ!そうなんだよ、『ヒヒジジイ』になるような整形手術をしたのだ」
「えっ!ま、まさか!」
「ああ、まさか、だ。ワシもアイツがそこまで自分の美貌に苦しんでいたとは思っていなかった」
「美しくなる為ではなく、美しくなくなる為の整形手術....」
「アイツは長年、苦しみ続けたのだ。『自由ヶ丘のアラン・ドロン』『原宿のアラン・ドロン』として、女性にモテモテだっただけではないのだ。『アラン・ドロン』でありながら、アイツの股間は『凶器』だったのだ
『自由ヶ丘の凶器』『原宿の凶器』ですね」
「端正な容姿の裏には、『野獣』が潜んでいたのだ」
『喰いたい放題』だったのでしょうね。それなのに何故….」
「アイツは、『野獣』ではあったが、妻をこよなく愛する『野獣』なのだ。しかし、妻はアイツのことを紳士としか思っていない。アイツは、『野獣』ぶりを発揮しようと思えばいつでもできた。アイツ程の美貌があれば、そう、君の云う通り、『喰いたい放題』だった」
「じゃあ、『喰え』ばよかったではないですか」
「ああ、君は何も分っていない。アイツは、『喰い』に行かずとも、『餌』の方からアイツに寄って来た。何しろ、自由ヶ丘のアラン・ドロン』『原宿のアラン・ドロン』だからな」
「私なら、遠慮なく『イタダキ』ます」
「このゲス野郎め。アイツは、『変態』ではあるが、『ゲス』ではない。だが、股間の『野獣』は蠢くのだ。そこで、アイツは、『野獣』が目覚めることのないようにしようと考えた訳だ。妻を愛しているからだ」
「だからといって、美しくなくなる為の整形手術をしなくともいいでしょうに」
「君は甘いなあ。他人を自分の常識だけで判断してはいかん」
「はあ?」
「某国の首相は、『共謀罪』という名称の法律を作り、批判を浴びた。しかし、某国の国民は、事象の表層しか見ていないのかもしれないのだ。某国の首相は、自身が作った『共謀罪』で合法的に自分自身が盗聴され、自分の悪だくみを当局に知られ、逮捕されることを画策しているのかもしれないのだ
「貴方、意味不明なことを仰る」
「猪木さん的な深謀遠慮なのかもしれんのだ。猪木さんは、第1回IWGPリーグ戦の決勝で、ハルク・ホーガンに、舌出しKOされ、負けたのだ。それは、猪木さん自身が、自分の右腕の坂口征二さんや他の新日本プロレスの誰にも知らせず、相手選手のハルク・ホーガンにも知らせず仕組んだ自作自演だとも云われている。それと同じかもしれないのだ」
「猪木という人は......」
某国の首相も、『共謀罪』というものの恐ろしさを身をもって愚かな国民に知らせる為に、『共謀罪』を成立させたのかもしれないのだ。やがて自分自身が逮捕されるところを見せることによってな
「まさか!」
「ふふ。世の中には、その『まさか』なことがあるのだよ。普通、整形手術は、美しくなる為にする。しかし、ビエールは、美しくなくなる為にしたのだ。猪木さんが、自分が提唱し、創ったリーグ戦でわざと負けてみせたと云われるのと同じようにな。負けるはずのない戦いで自分が負けてみせることにより、プロレスを『予定調和』なものと思っている人々の既成概念を打ち砕いたのだ。だから、猪木さんのプロレスは面白かったのだ。ビエール・トンミーは、猪木さん的『在り方』を実践したのだ


「ビエール・トンミー氏のことは、ただの『変態』だと思っていましたが、貴方のお陰で、あの人の真の姿が分りました。スクープ記事のタイトルも決めました。

<劣化?【『引退』の理由…..『変態』界の巨匠>

とします。パラドックス的タイトルです。『劣化』するからではなく、『劣化』しないから『引退』したということを読者は、週刊『ヘンタイ』を買って本文を読んで初めて知るのです」
「好きにするがいいさ。ワシは、君たちマスコミが『真実』を伝えることを望むだけだ。ハハハハハ!」

そう高笑ったエヴァンジェリスト氏は、編集長ブロークン・レッグが去った後、友にiMessageを入れた。

『君の為にソウイウコトにしておいた。礼は不要だ。友人だからな』


(おしまい.....多分)







0 件のコメント:

コメントを投稿