「スクープだ!」
編集長ブロークン・レッグは、1枚の写真を手にし、叫んだ。
「相当なイケメンだ。いや、当時は、ハンサムと云っていたのか」
それは、読者からの投稿写真であった。
「アイツが何故、59歳で完全リタイア、つまり、会社を『引退』したのか、不思議だったのだ。そういうことだったのか……..アイツの同級生のエヴァンジェリストは未だに会社にしがみついて働いているというのに、4年前(2013年)、アイツは早々に『引退』したのだ」
編集長は、ビエール・トンミー氏を直撃した。
「貴方が、59歳で仕事を完全リタイア、つまり『引退』をしたのも、安室奈美恵のように『劣化』を恐れたからですか?」
いつものパジャマ姿で散歩を終え、自宅に入ろうとしたところを突然、インタビューを受け、ビエール・トンミー氏は狼狽えた。
「な、なんだね、君は?...はっ、週刊『ヘンタイ』か。ブロークン・レッグとかいったな」
「このイケメンは、いや、ハンサム・ボーイは、貴方ですね?」
編集長ブロークン・レッグは、1枚の写真を見せながら訊いた。
「君は、この写真を一体どこで入手したのか?」
「貴方は、この写真が示す通り、相当なハンサムであった。しかし、寄る年波には勝てず、貴方の容貌が『劣化』してきたからですね、『引退』されたのは?」
「なにー!」
「それまで、何人もの女性を哭かせてきた美貌が無残になるのに耐えかねたのですね?」
「五月蝿い!」
「ほら、その怒った姿、かつて『原宿のアランドロン』と呼ばれた男と同一人物とは、とても思えません」
「黙らっしゃい!........ノー・コメントだ!事務所を通すんだ!」
そう云うと、ビエール・トンミー氏は自宅に駆け込んだ。
「まあ、いいさ。独占スクープで、あの写真(イケメン写真)を載せてやる。今の哀れな姿と並べてな。ふふふ」
編集長ブロークン・レッグは、北叟笑んだ。
しかし、彼は知らなかったのだ、ビエール・トンミー氏の『引退』の真の理由を。
(つづく)
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