1966年10月2日(日)、広島市立皆実小学校の運動会の日、昼休み、『少年』は、西に2つある校舎と校舎との間の皆実小学校の『便所棟』に駆け込んだ
『便所棟』に入ると、扉の開いていた個室(和式である)に飛び込んだ。
そして、白い短パンを脱ぎ、パンツも脱ぎ、手に抱え、しゃがんだ。
しゃがみこむと同時に、モノが出た。
「間に合った…..」
と、ホッとした瞬間であった。その時、
「あ、あーっ!」
引くような叫び声が、しゃがみこんだ『少年』の斜め後ろで、上ったのだ。
(参照:見てはいけないもの(その8)[M-Files No.1 ]の続き)
『少年』は、しゃがんだまま、斜め後ろを振り向いた。まだ、ソコを拭いていないし、モノはまだ出るかもしれなかったので、立ち上がる訳にはいかなかった。
そこには、両眼を大きく見開き、軀を固めたまま立ちすくんでいる『少女』がいた。小学4年生くらいと見えた。
『少年』は、叫び声も上げることができず、しゃがみこみ、お尻を丸出しにしたままでいた。
どうしていいのか、分らなかった。というよりも、思考が完全に停止していた。
「バシーン!」
『少年』の眼の前で、扉が閉められ、初めて、エヴァンジェリスト君は、事態を認識した。
『少年』は、12歳(小学6年生)のエヴァンジェリスト君であった。
「見られた!」
丸出しのお尻を見られた。女の子に見られてしまった。
モノは出した後であったと思うが、ソコの周りにモノの残骸が付いていたかもしれない。残骸も見られたのであろうか。
個室の扉の鍵を閉めていなかったのだ。鍵を閉め忘れたのではなく、切羽詰まっていたので、鍵をかける余裕がなかったのだ。
エヴァンジェリスト君は、その『少女』を知らなかった。知った子であれば、もっと恥ずかしかったであろう。
しかし、知らない子ではあったが、多感な12歳の少年が、丸出しのお尻を女の子に見られたのだ。しかも、便所でしゃがみこんでいるところをなのである。
当時、『便所』は男女共用であった。『少女』も用を足しに来たのだ。そして、鍵のかかっていない個室を開けただけなのだ。
しかし、そこで上級生の男子児童のお尻を見てしまったのだ。それが、ハンサムな上級生の男の子のお尻であったとはいえ、エヴァンジェリスト君以上に、『少女』の方がショックであったであろう。
『少女』は、見てはいけないものを見てしまったのであった。
だが、エヴァンジェリスト君が、そこに思い到ることはなかった。
『少女』は、叫び声を上げ、扉を閉めた後、別の個室に入り、用を足したのかも、分からなかったが、エヴァンジェリスト君には、そんなことを考えている余裕がなかった。
女の子に、『最中』のお尻を見られてしまったショックはあったが、用を完全には済ませていなかったのだ。
エヴァンジェリスト君は、もうひと気張りし、ソコを拭き、個室を出て、手を洗い、『便所棟』も出て、家族席に戻って行った。
家族には何も云わなかった。
普段、おしゃべりな子が、声すら発しなかったので、母親が訊いた。
「どしたん?」
「どうもせんよお」
と答え、エヴァンジェリスト君は、昼休みを終え、児童席に戻って行った。
午後には、徒競走があった。
選手入場口付近で出番待ちしている時も、エヴァンジェリスト君はまだ茫然自失状態にあった。
『少女』はどの辺から見ていたのであろう。モノが出終った後であったろうとは思うが、もし出ている最中だったら、と思うと、居た堪れなかった。
茫然自失のまま、エヴァンジェリスト君は、徒競走を走った。
動揺はしていたが、天性の脚はその影響を受けることはなく、エヴァンジェリスト君は、6人中1位となった。
だが、この『事件』をエヴァンジェリスト君が忘れることはなかった。今も忘れていない。
そして、この『事件』勃発からおよそ30年後、『事件』は再び、起きたのだ。少し様相は違っていたが、エヴァンジェリスト氏の身に再び、『事件』は起きたのであった。
(続く)
0 件のコメント:
コメントを投稿