2017年9月16日土曜日

見てはいけないもの(その10 )[M-Files No.1 ]




1966年10月2日(日)、広島市立皆実小学校の運動会の日であった。

『少女』は、見てはいけないものを見てしまった。

4年生と思しき『少女』は、鍵のかかっていなかった個室の扉を開けたところ、6年生の『少年』が『大』をしていたのだ。

「あ、あーっ!」

と叫び、『少女』は、「バシーン!」と扉を閉めた。

見られた『少年』は、12歳(小学6年生)のエヴァンジェリスト君であった。

「見られた!」

エヴァンジェリスト君は、丸出しのお尻を見られた。女の子に見られてしまったのだ。

モノは出した後であったと思うが、ソコの周りにモノ残骸が付いていたかもしれない。残骸も見られたのであろうか。

モノが出終った後であったろうとは思うが、もし出ている最中だったら、と思うと、居た堪れなかった。

茫然自失のまま徒競走を走った。動揺はしていたものの、天性の脚はその影響を受けることはなく、エヴァンジェリスト君は、6人中1位となった。

だが、この『事件』をエヴァンジェリスト君が忘れることはなかった。今も忘れていない。

そして、この『事件』勃発からおよそ30年後、『事件』は再び、起きたのだ。少し様相は違っていたが、エヴァンジェリスト氏の身に再び、『事件』は起きたのであった。






1995年であった。

当時、エヴァンジェリスト氏は、大分と宮崎とを頻繁に訪問していた。大分のお客様案件と宮崎のお客様案件が、同時並行で動いていたのだ。

なので、時に、大分と宮崎とを合せて出張することがあった。ある時は、大分から宮崎へ、そしてある時は、宮崎から大分へとJRの特急電車で移動した。

大分(大分市)-宮崎(宮崎市)間は、特急で3時間余りかかる。隣県と云っても、県庁所在地同士はかなり離れているのだ。

大分市は、大分県の海沿いで中間より少し北にあり、宮崎市は、宮崎県の海沿いでかなり南の方にあるのだ。これは、今でも変っていない。

特急は、『にちりん』であった。

『事件』は、その特急『にちりん』の中で起きたのであった。

……….『事件』の伏線となる事象が、大分駅であった。

大分のお客様訪問を終えたエヴァンジェリスト氏は、急いで大分駅に行った。お客様との打合せが長引き、乗ろうとしていた特急『にちりん』の発車時刻が迫って来ていた。

宮崎までの乗車券と指定席特急券を買い、改札を通った。発車時刻まで後、5分程であった。

「間に合った」

エヴァンジェリスト氏は、ホッとした。大分から宮崎までの『にちりん』は1時間に1本程度しかないのだ。この『にちりん』の逃すと、1時間待たないといけないのだ。

ホッとしたが、ホッとすると同時に、あることに気付いた。

「オシッコをしたい」

そして、『しまった』、と思った。

トイレに行く時間が余りない。でも、オシッコだから、5分あればまあ、用は足せる。

しかし、トイレがすぐに見つからない。駅員さんに訊けば分るとは思ったが、止めた。

駅のトイレは、一般に余り綺麗ではないからだ。トイレの場所が分ったとしても、駅の構内のトレイにはできれば行きたくはなかった。

『トキハ』でシテくれば良かった、と思った。『トキハ』は、大分市にある地元のデパートだ。デパートのトイレは綺麗だ。

しかし、先程まで、自身の尿意に気付いていなかったのだ。『トキハ』に寄るということに考えは到らなかった。

仮に、尿意に気付いていたとしても、尿意よりも特急の発車時刻が迫っていた。『トキハ』本店は、大分駅から遠くはないが、そこのトイレに行っている時間はなかったであろう。

改札を通過したその時、尿意を覚え、『しまった』、と思ったが、いやいや、そんなことは『問題』ではないのだ。

エヴァンジェリスト氏は、思った。

「ボクは、コドモではないのだ。我慢というものをボクはできるのだ」


確かに、エヴァンジェリスト氏は、コドモではなかった。しかし、エヴァンジェリスト氏は、世間をなめていた。

いや、『九州』をなめていた。


(続く)



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