「少々不満があり、メールさせて頂きます」
「うぬぼれ営業」氏は、勇気を振り絞って、メールを書き始めた。
「お二人のロボットに関するご発言について、です」
エヴァンジェリスト氏とビエール・トンミー氏に対して、である。
「お二人は、大事なことをお忘れではないかと思うのです」
マダム・ウヌボーレは、夫の股間で縮こまっている、夫婦で飼う『亀』の頭を撫でていた。珍しく本音をぶつけようとする夫を、『頑張れー!』と励ましていたのだ。
「海が『超個体』という一種の生命体だ、ということなんかは、何を仰っているのか、ボクには分りませんが、ロボットが進化をすれば、その内、労働者としての権利を主張するようになるかもしれない、というのは、その通りだと思います。人間であろうと、ロボットであろうと、会社から自分の役割以上の仕事をさせられ、毎度のように深夜残業、徹夜を強いられるのはおかしい、と思います。絶対におかしいと思います!」
(参照:『死』を創る【ロボットとAIの行く末】)
メールしている内容は、エヴァンジェリスト氏への不満というよりも、自身の現状に対する不満ではないか、と疑問を抱いていたように見える『亀』の頭を、マダム・ウヌボーレは、『よしよし』とさすった。
「しかし、ロボットやAIは、自らに『死』を創るようになるであろう、というのは、その通りだと思います」
何だか、不満を述べるのではなく、むしろ賛成しているではないか、という嘆きから萎え始めたように見える『亀』を、マダム・ウヌボーレは、『ぺん!』と叩いた。
「ロボットに、『Hentai-AI』を与えてやろう、というのも、なるほど、と感心しました」
いつものように弱気になり始めた「うぬぼれ営業」氏同様、萎縮して「うぬぼれ営業」氏のパンツの中に隠れ始めた『亀』の首を、マダム・ウヌボーレは、『ギュッ!』と握ってパンツから引き出した。
「しかし、しかし、なんです!」
「うぬぼれ営業」氏は、再度、勇気を振り絞った。
「ロボットに必要なのは、『死』や『Hentai-AI』だけではないと思うのです」
『亀』はいきり立ち始めた。
「ロボットには、『嘘』も必要だと思うんです」
『亀』は青筋を見せ始めた。
「ロボットが真の『生』を得るには、『嘘』も必要です。『嘘』をつけるようになって初めて、『生きている』存在となるのです。正確無比、間違ったことは絶対しないというところから脱して、『嘘』をつくようになってようやく、ロボットも『生々しい』存在となるのです」
『硬直』した『亀』の頭に、マダム・ウヌボーレは、『もっと頑張れえ!』と励ましのキスをした。
「ロボットも、仕事で手抜きをしているのに、そんなことはしていない、と『嘘』をつくようになるのです。浮気しているのに、妻に、君一筋だ、と『嘘』をつくようになるのです。こうして、ロボットも『機械的』存在から『生きた』存在となるのです。『死』や『Hentai-AI』させあればいい、というのは間違っています!『嘘』もつけるようになってようやく、ロボットも『生きた』存在となるのです!」
「うぬぼれ営業」氏が不満を爆発させたことで満足したのか、『亀』の頭も興奮に汗まみれで、ぐしょぐしょになっていた。
マダム・ウヌボーレは、夫に『頑張ったね』と云い、『亀』の頭をティッシュで拭ってやったのであった。
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