2017年7月17日月曜日

アメリカに自由はあったか(その1)【米国出張記】



アムステルダムに行く前、そのアムステルダムに行く前に行ったパリに行くその前に、エヴァンジェリスト氏は、アメリカ(米国)に行ったのであった。

勿論、出張である。

1989年(2017年の今から28年前である)のことであった。エヴァンジェリスト氏、35歳の年である。

日本から米国に発ち、米国からフランスに回り、フランスからオランダに入り、オランダからアンカレッジ経由で日本に戻ったのであった。「世界一周の旅」と云ってもよかったかもしれない。

この「世界一周の旅」は、苦難の旅であった。

アメリカに発ったのは、1989年6月20日である。

「世界一周の旅」は、最初から、苦難の旅であった。

エヴァンジェリスト氏は、多摩地区の自宅(勿論、賃貸マンションだ)の最寄駅からタクシーに乗った。

約2週間の海外出張の為、旅行鞄に荷物は一杯入っており重かった。だから、京成上野まではタクシーに乗ることにしたのだ。

「京成上野までお願いします」

乗ったタクシーの運転手さんに、そう云った。

「ええ?」
「あ、京成上野駅までお願いします」
「ケイセイウエノ?」
「ええ、京成上野です」
「分るかなあ…..」
「……..」

京成上野を知らないのか…..心配になった。

心配になったが、タクシーはもう動き出している。乗りかかったタクシーだ。

京成上野は、知らなくとも無名の場所ではない。まあ、近くまで行けば分るさ(ナビはまだない時代であった)。

そう高を括った。

中央高速に上り、新宿までは順調に走った。しかし、新宿に入ると、つまり、首都高速に入ると途端に渋滞となった。

少し心配になった。だが、まだ時間は十分あった。

しかし、渋滞は凄まじく、前に殆ど進めない。

「このままだとアレですから、もう少し先で降りましょうか?」

疲れてきていた運転手が、そう声をかけてきた。

「ええ、お願いします」

成田まで間に合うように行けるか心配になってきていた。

首都高速を降りたタクシーは、昭和通りを走っていた。

「こっちでいいんですよね?ええ、大丈夫ですよね?」

そう訊かれても、運転免許を持たぬエヴァンジェリスト氏には、都内の道路事情は分らない。

「昭和通りも渋滞しているので、脇道を行っていいですか?」
「ええ」

心配であったが、そう答えるしかない。

そうして、ようやく上野まで来た。JR上野駅がそこにある。京成上野駅は、もう少し先を行き、左折したところだ。

搭乗予定のJAL便に乗るのに間に合う「スカイライナー」の出発時刻までもう少しだが、まだ間に合う。ホッとした。

しかし、その時であった。

タクシーは、JR上野駅手前で右折したのだ。

何が起こったのか、分らなかった。



「ええ!」

思わず声を発した。

「は?」

運転手さんは、心配そうな声を出した。

「ち、ち、違います!京成上野は、コッチではなくアッチです!」

エヴァンジェリスト氏は必死であった。時間に余裕はないのだ。

「え!そうなんですか!?」

運転手さんも慌てた。

「急いで下さい!」
「ええ、でも……」

こうして、エヴァンジェリスト氏の苦難の「世界一周の旅」は始ったのである。



(続く)






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