(参照:アメリカに自由はあったか(その8)【米国出張記】の続き)
今はHiltonの『Double Tree』というホテルになっているロサンゼルスの「(Compri)Hotel」にトイレを詰まらせたことをきちんと伝えなかったバチが当ったのか、エヴァンジェリスト氏の苦難はまだまだ続いたのである。
尚、ロサンゼルスの「(Compri)Hotel」、とはしているが、「(Compri)Hotel」があったのは、厳密にはロサンゼルスではない。ロサンゼルス郊外の街、El Segundo(エル・セグンド)であった。
しかし、まあ、いいではないか。東京ディズニーランドだって千葉にあるのだから。
トイレを詰まらせたことを黙ったままのエヴァンジェリスト氏は、上司と共に、1989年6月22日(2017年の今から28年前のことだ)、そのロサンゼルスからニューヨークに向う予定であった。
ロサンゼルス空港からニューヨークのJFK空港まで、軽くひとっ飛び、のはずであった。
ロサンゼルスからニューヨークまでは勿論、国内線であるが、実は、軽くひとっ飛び、ではない。フライトに5時間20分くらいかかるのだ(時差を考慮すると6時間20分だ)。
アメリカは広い。
だが、午前10:35発なので、JFK空港には午後6:55には到着する。日本からロサンゼルスまでの太平洋横断よりはマシだ。
そのはずであった。
しかし、このエヴァンジェリスト氏の「世界一周の旅」(世界一周の出張)は、苦難の旅であるのだ。
午後6時過ぎ、エヴァンジェリスト氏と上司とは、機内に入り、席についた。
機内アナウンスは英語だ。何かを云っている。荷物の収納のことでも云っているのだろう。そう思っていた。
実際、席についた頃はそうであったかもしれない。
ところが、出発時間の午前10:35が来ても、一向に出発しようとしない。出発しようがないどころか、ドアを閉めようともしていない。
その頃の機内アナウンスは、何だか雰囲気がそれまでと違っていた。
そうこうしている内に、黄色いヘルメットを被り、作業着を着た人たちが機内に入って来た。腰には、工具をぶら下げていた。
なんだ、なんだ、なんだ!?
おいおい、冗談じゃあないぜ。何が起こったか知らないが、機内に作業員(整備士であろうか)が、ヅカヅカと入ってくるのは尋常ではない。
エヴァンジェリスト氏は、動揺した。上司も、
「おい、どうしたんだ?」
と、英語が分からない分、余計に不安になっていた。
アナウンスをよく聞くと、機体になんらかのトラブルが発生したようであった。上司にもそう告げた。
そして、エヴァンジェリスト氏と上司が座っている席の下あたりで、ドリルするような音が聞こえて来た。
ぎょ、ぎょ、漁業協同組合だ!何してるんだ!?
それから程なくして、乗客は一旦、飛行機を降りろ、と云っているように聞こえた。聞き間違いではなかった。周りの乗客たちは、席を立ち始めた。
エヴァンジェリスト氏と上司も機外に出た。そして、しばらく搭乗口付近にいた。
アナウンスでは、修理には相当時間がかかるようなことを云っている。
その英語を聞き取れている自分に少し感心した。しかし、感心している場合でもなかったので、上司にもその状況を伝えた。
「マジかよお!」
上司は不機嫌だ。
「マズイなあ。サンペイが待ってるんだ」
サンペイは、当時、ニューヨークに駐在していたエヴァンジェリスト氏の先輩だ。上司の後輩にして部下である。ニューヨークにやって来る上司とエヴァンジェリスト氏とを待っているのだ。
上司は、公衆電話をかけに行った。まだ携帯電話のない時代であった。英語はできないが、1年弱、ニューヨークにいたからか、公衆電話のかけ方は分っているようだ。しかも相手は日本人だ。
それから、エヴァンジェリスト氏と上司とは、待ちに待った。1時間が過ぎ、2時間が過ぎた。
そうして、4時間くらいして、ようやく再び、機内に入ることができ、ニューヨークに飛び立ったのであった。
エヴァンジェリスト氏は反省した。
「(Compri)Hotel」のトイレを詰まらせたことを、そして、そのことを「(Compri)Hotel」にきちんと伝えなかったことを反省した。
そんなんだからバチが当ったのだ。そう思った。4時間近い航空便の遅れは辛い。それも海外でなのだ。
JFK空港に着いた頃、エヴァンジェリスト氏はヘトヘトになっていた。午後6時55分到着予定であったものが、午後10時半を過ぎていた。
宿泊予定のホテル「Grand Hyatt New York」に早く入り、ゆっくりしたい。眠りたい。
しかし、35歳のエヴァンジェリスト氏は、甘かった。このエヴァンジェリスト氏の「世界一周の旅」(世界一周の出張)は、苦難の旅であるのだ。
上司と共に、JFK空港からタクシーに乗り、「Grand Hyatt New York」に向ったエヴァンジェリスト氏は、その後に控えていた試練というか苦難をまだ知らなかった。
(続く)
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