ローラククイーン13世は、マダム・エヴァンジェリストをも籠絡した......................
岩手のお土産と云えば、『かもめの玉子』だとお思いだろうが、エヴァンジェリスト氏によると、『かもめの玉子』しか思い浮かばないのは素人だそうだ。
「勿論、『かもめの玉子』は美味しい。震災で一時、製造できる状態になかったが、震災から1ヶ月余り後の4/20に製造開始をし、ホットした。しかし、しかし、だ」
「なんですか?」
「岩手のお土産は『かもめの玉子』だけではない。『田むらの梅』もお薦めだ。梅餡を求肥で包んで、更に青紫蘇の葉でも包んだ生菓子だ。『献上 田むらの梅』と『伝承 田むらの梅』とがあるが、表面に砂糖をまぶした『伝承 田むらの梅』が特にいい。絶品だ」
故あって、マダム・エヴァンジェリストが岩手事情に詳しいのだ。
出張しても普段は、自宅にも会社にもお土産を買って帰らないエヴァンジェリスト氏だが、盛岡に出張した時には、時々ではあるが、マダム・エヴァンジェリストの指示で、『田むらの梅』を自宅向けに買って帰ることもあるらしい。
しかし、最近、エヴァンジェリスト氏が盛岡出張の際に買って帰るお土産が変った。『酒ケーキ』である。勿論、マダム・エヴァンジェリストの指示だ。
「お酒を含ませたスポンジ・ケーキだ。ほのかな日本酒の味わいが上品だ。花巻の砂田屋が製造している」
「盛岡駅でも買えますよね?」
「おぉ、たまにはいいことも訊くなあ。そこに注意だ」
「注意?」
「盛岡駅で買えるが、新幹線の改札内のお土産屋『美味山海』でしか売っていないのだ。先日の出張の際には、1200円のものを4個も買って帰った」
「ローラククイーン13世と盛岡出張した時ですね?」
「そうだ。ローラククイーン13世にも酒ケーキを教え、薦めた。女房(マダム・エヴァンジェリスト)の指示があったのだ。逆らう訳にはいかない」
「情けない亭主ですね」
「ワシを信用するローラククイーン13世は素直にワシの薦めに従い、彼女も酒ケーキを買って帰った」
「貴方を信用しているかどうかは知りませんけどね。他人を疑うことを知らない、素直な性格の人ですからね、ローラククイーン13世は」
「後日、ローラククイーン13世は『酒ケーキ』ってとっても美味しかったです、と感激していた。そのことを女房(マダム・エヴァンジェリスト)に報告すると、普段、ワシに対して笑顔を見せることのない女房の顔が僅かだが綻んだ」
ローラククイーン13世は勿論、意図してのものではないであろうが、エヴァンジェリスト氏に対していつだって眉間に皺を寄せた顔しか見せないマダム・エヴァンジェリストの顔を綻ばせたのである。『ローラククイーン』の本領発揮である。
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