アナタは妖精を見たことがあるか?
ロンドン・オリンピックの女子柔道で金メダルをとった松本薫は妖精をよく見るらしい。緑の妖精だそうだ。
私は妖精なんて見たことはない。しかし、エヴァンジェリスト氏は、妖精を見たことがると云う。
ただ見たことがあるだけではなく、妖精と一緒に仕事をしたことさえあると云う。
「いや、君だっていつも見ていたではないか?!」
エヴァンジェリスト氏は、私に対して、お前も妖精を見ていたと、訳の分らぬことを仰る。まあ、妖精を見たということだけで既に訳は分らぬのであるが。
「はああ?」
「ミスター・シューベルトは、知っているだろう」
「ええ、勿論。存じ上げていました。お世話になりました」
存じ上げていた、お世話になりました、と過去形で云わなくてはならぬことが辛い。しかし、ミスター・シューベルトと聞いて合点がいった。
【「妖精」の証拠写真:「妖精」は飛ぶ!】
「そういうことですか。確かに、ミスター・シューベルトはご自身のことを『妖精』だと戯けたことをのたまっていらっしゃいました」
「『妖精』の前には、自分のことを『天使』だとも云っていた。チクショー!コンチクショーだ!」
コンチクショーと叫ぶエヴァンジェリスト氏の様子は尋常ではない。
しかし、それは確かにそうなのだ。まさにコンチクショーなのだ。ミスター・シューベルトは、本当に「天使」になられたのだ。
2012年8月30日、であった。ミスター・シューベルトは、「天使」になり、エヴァンジェリスト氏の許を、そして私の許を離れていかれたのだ。
60歳。今年(2012年)2月22日、還暦を迎えられたばかりであった。「天使」になるには早過ぎるではないか!
「『妖精』は『夭逝』するのか……….」
エヴァンジェリスト氏が天空に呟いた。
「アナタは、私のことをウラナイ営業だと仰った。それに匹敵する駄洒落でしょう。参りましたか?」
ミスター・シューベルトは、エヴァンジェリスト氏のことを「占い」営業だと云っていた。エヴァンジェリスト氏は、自社の商品を「売らない」からであった。
「売らない」が「買って頂ける」ようにする営業方針を持っているからであった。だからと云っても、「占い」営業とはシャレになっていない。
ミスター・シューベルトは、天才的な、いや売れるシステムを開発できる「天災」エンジニアであったが、駄洒落のつまらなさも「天災」であった。
「本当に『妖精』であったかは知らない。しかし、『妖精』でも『天使』でも何でもいいから、また私の前に現れて欲しい」
『妖精』が『夭逝』する一週間前、ミスター・シューベルトが「天使」になる7日前に、エヴァンジェリスト氏は、「妖精」と6時間半ミーティングをした。
長時間ミーティングが、「妖精」を「天使」にしてしまったのではないか、とエヴァンジェリスト氏は悔やむ。
酷であると承知しながら云う。その通りだ。エヴァンジェリスト氏のせいだ。長時間ミーティングがミスター・シューベルトの体調を崩したのだ。長時間、ミスター・シューベルトを付合わせておいて、自分はその翌日、休みをとっているのだ。
「コンチクショー!」
そうだ、コンチクショーだ。
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