2015年6月22日月曜日

【唾の奇跡】美人講師 VS スナイパー…………【ビエール・トンミー氏の優雅な老後】



「ボ、ボ、ボクとしたことがどうしたのだ!」

2015年6月8日の講義の最中であった。いや、カレ自身には、講義の最中であるという自覚すらなかったのだ。

「目が覚めた…..ようやく目が覚めた。先生(●●●子講師)には申し訳ないことをした」

●●●子講師の講義の間、虚ろな目をしていたビエール・トンミー氏は、何故、目を覚ますことができたのか。

「ああ、勿体無いことをした。前期の講義は、後1回しかないのに」

ビエール・トンミー氏は、自分では気付いていなかったが、●●●子講師の唾を口にしたのだ。

その唾は、●●●子講師自身にとっては屈辱であったが、ビエール・トンミー氏(●●●子講師にとっては、ただのエロ爺だが)の気を引く為に態と飛ばしたものであった。


「何だか、唇が香ばしい…」

それはそうだろう。●●●子講師の唾は、奇跡とっていいであろう、見事にビエール・トンミー氏の左手の甲に着いたのだ。

その時点では●●●子講師ではない誰か別の女性に恋した目をしていたビエール・トンミー氏であったが、その女性の姿を虚空に思い浮かべる為かの如く、両肘を机につき、手を口に当てたのだ。

そう、その時、カレの左手に付いていた●●●子講師の唾が、カレの唇に触れたのだ

「ああ、ボクとしたことが、あんな娘(こ)に心乱されるなんて!」

そうだ、ビエール・トンミー氏の心は、あのエーデルワイス(コーヒー)を飲ませてくれるあの喫茶店で遭遇したl'eau the one(ロー ザ・ワン)を付けた、全身黒っぽい服を着た若い女性に心射抜かれていたのだ。


「先生、ごめんなさい」

ビエール・トンミー氏は、●●●子講師に素直に謝った、心の中で。ビエール・トンミー氏の目は、生気を取り戻した。

●●●子講師も、エロ爺のその目の変化を見逃さなかった。自分の唾が、エロ爺の唇に触れるとことも目撃していた。

それは嬉しくもあり、また、悍ましくもある、ドストエフスキー的な心理であった。


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目の覚めたビエール・トンミー氏は、その日の講義の後直ぐに夏期講習の申し込みをした。そして、エヴァンジェリスト氏にメールを送った。


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どうも、どうも。

大学というところは、なんちゅーところなんでしょう。

なししろ6月も半ばなのにもう「夏休み」になってしまうのですから。
6月15日で前期は終了して後期は9月の後半です。

夏休みが何と長いことかと呆れていますが自分が大学生の時はこの
長い休みを何して過ごしていたのだろうと思います。

そこで、今年は「夏季講習」を受講することにしました。

見よ! この燃える学問の情熱を。

講座名は「行ってみよう、○○○美術館」
講師はというと、えーっと、●●●子講師とかいう人。

ぐーぜんにも、前期講座と同じ先生。
こんなに珍しい偶然もあるものですねぇ。

7月からも向学心に燃える私です。

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ノーテンキで、そして、白々しいメールであった。

しかし、エヴァンジェリスト氏は、ビエール・トンミー氏を甘い、と思った。エヴァンジェリスト氏は知っていたのだ、あの彼女の怖ろしさを。





彼女は、狙った獲物は逃さないのだ。だって、彼女はスナイパーなのだから。












2015年6月8日月曜日

【美人講師までが被害者に】スナイパー恐るべし…………【ビエール・トンミー氏の優雅な老後】



●●●子講師は、面白くなかった。

いつもは講義の間中、自分の体を舐めるように見ているあのエロ爺が、今日(2015年6月8日)は、虚ろな目をして講義もまともに聞いていないようであったのだ。

講義の途中で思い切って、エロ爺の席まで唾を飛ばしてみた。以前、たまたま飛んだ唾を、その「泡」をエロ爺が指に取り、舐めるのを見たことがあったのだ。


その時は、寒気がしたものだ。まるで自分の肉体に触られたかのような嫌悪感が走ったのだ。

しかし、今日はエロ爺が舐めるのを期待し、自ら唾を飛ばしたのだ。屈辱だ

少し前までは、怪しげな顎髭をはやし、それまで以上に生理的に受け付けることができない爺と感じていたのに、今日は、その爺を自ら求めるような行為に走ってしまった。

爺の虚ろな目は、ただぼーっとしているのではないと感じたのだ。それは「恋」の目であったのだ。





相手は誰なのだ?自分より美貌の女はそうはいないはずだ。自分の講義(オープンカレッジ)に人気があるのは、自分の美貌がその一因であることも自覚している。

美貌目当てという不純な動機からの受講であっても、そんな受講者にも向学心を芽生えさせることができると、講義の内容には自信がある。

エロ爺もそんな受講者の一人だ。オープンカレッジとは別のカルチャースクールでの自分の講義も受講していることは知っている。レーバン風のサングランスをかけ、白いマスクも着用し、更に、妙な形の帽子まで被り、自分は返送したつもりであったのだろうが、その正体はちゃんとお見通しだ。
それほどの自分の「ファン」なのだ。気持ちは悪い爺だが、「ファン」は大事にしなくてはならない。それなのに、爺ったら、今日のあの「目」はなんなんだ!

……いやいや、そんなことはどうでもいい。あんなエロ爺が誰に恋をしようとすまいとどうでもいいではないか。しかし、ああ.....

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スナイパーが放った1発目の「銃弾」は、エロ爺(ビエール・トンミー氏)を射抜き、流れ弾となり、更にその先に居た●●●子講師にまで傷を負わせたようであった。








2015年6月7日日曜日

【解脱断固阻止】スナイパーに魅了され……【桃怪人2号の反撃】



「首尾はどうだ?」

暗がりで、しかし、振り向きもせず、男は訊いた。

「アタシと誰だと思っているの?勿論、百発百中よ」

暗がりで、しかも黒っぽい服を着た女が憮然として、男の背中に答えた。

「アイツを甘く見るな!ヤツはただのスケベエ爺いにしか見えないかもしれなが、その正体はエロ仙人だ」
「要は、スケベエなのね」
「ただのスケベエではない。元々は桃怪人であり、更に遡ると怪人(初代怪人)なのだ。常人には及びもつかない力を持っているのだ」
「どんな力を持つ男でも、男である限り、アタシに射抜けない男はないのよ。アナタだってね」
「何い!?」

男はやや動揺を見せた。

「アナタだって、アタシの甘い香りにもう腑抜けになっているじゃない」

確かに、女は馨しかった。

「何も匂わん!」
「BVLGARI pour hommeを付けて、アタシの匂いを誤魔化そうとしているのはお見通しよ」


「五月蝿い!BVLGARI pour hommeは、男の身嗜みだ。そんなことはどうでもいい。早くアイツを仕留めるのだ」
「せっかちねえ。獲物はゆっくり味あわなくっちゃ。もう1発目は命中したのだから」

そうだ。元・エロ仙人こと、ビエール・トンミー氏は既に、全身黒っぽい服を着た若い女性の香水(l'eau the one[ロー ザ・ワン])に心奪われ、その若い女性の下半身に目は釘付けになってしまったのだ。




「ミイラ取りがミイラにならんようにな」
「まさかあ。あんな爺さん、1億円積まれても嫌よ。爺さんの友だちの方ならひょっとして、っていうことがあるかもしれないけど」

そう云うと、女は片手をピストル状にして男の背中に当て、消音銃のように低く声を発した。

「ボン」

男は驚き、胸から桃のバッジを落した。





「ホーホッホッホッホ」

女は闇に姿を消した。






2015年6月6日土曜日

【l'eau the one(ロー ザ・ワン)】スナイパーはそこにいる…………【ビエール・トンミー氏の優雅な老後】



「ここの(このお店の)ソフトクリームは絶品ねえ」

コーヒーゼリーの上にのったモカソフトを口にしながら、愉悦の表情を浮かべるマダム・トンミーであった。

何年ぶりであろうか、夫が喫茶店に誘ったのだ。

「ああ」

ビエール・トンミー氏は、久しぶりのエーデルワイス(コーヒー)を口元から外し、ソーサーに置きながら、穏やかな言葉を吐いた。


[参照]



「アナタ、最近、変ったわねえ。なんだか爽やかになったわ、妙な髭を剃ったからかしら」





それはそうだろう、自分は解脱したのだ。悟りを開いたのだ。ビエール・トンミー氏は、妻の言葉で、自分が悟りを開いたことをあらためて実感した。


そこに一瞬、風が吹いた。黒い影のような女性が二人のテーブルの横を通ったのだ。

全身黒っぽい服を着た若い女性であった。

「オープンカレッジで西洋美術史を勉強していることもいいのかもね。向こうの美術ってみんな、宗教的な背景があるのでしょ。きっと心が清められるのね」

ビエール・トンミー氏の●●●子先生への邪心を知らぬマダム・トンミーは無邪気であった。

しかし、その時、ビエール・トンミー氏はもう、妻の言葉が耳に入ってはいなかった。

ビエール・トンミー氏の目は、全身黒っぽい服を着た若い女性の下半身に釘付けになっていたのだ。



鼻腔も開いていた。なんだか芳しい匂いがしていたのである。

「あら、この匂い…」

マダム・トンミーもその匂いに気付いたようであった。

l'eau the one(ロー ザ・ワン)だわ」

そうだ、それはl'eau the one(ロー ザ・ワン)であった。男を虜にするとも云われる香水であった。

そして、実際に、既に一人の男が既に虜にされていたのだ。

l'eau the one(ロー ザ・ワン)は、ビエール・トンミー氏の目がその下半身に釘付けになっている全身黒っぽい服を着た若い女性から漂ってきていたのだ。

ビエール・トンミー氏もマダム・トンミーも、自分たちに背を向けている全身黒っぽい服を着た若い女性が不敵な笑みを浮かべていることを知らなかった。







2015年6月1日月曜日

【解脱後】忍び寄る影…………【ビエール・トンミー氏の優雅な老後】




「悟りを開くということはなんと清々しいことか」

散歩しながら深呼吸し、ビエール・トンミー氏は呟いた。

「かつてあんな見方をされていたのが嘘のようだ」

そう、ビエール・トンミー氏はかつて、ヘンタイだと近所で思われていたのだ。熟女好きのロリコンと噂されていたのだ。


「今はどうだ。近所の奥さん達も『あらトンミーさんのご主人、おはようございます』と挨拶してくれるではないか。少女たちも『おじいちゃん、オハヨ』と声をかけてくる。おじいちゃん、というのが「気に食わんが」

と云いながら、ビエール・トンミー氏の眼は、通りすがりの夫人の大きなお尻に吸い付けられていた。

フッ。何か冷たいものが首筋を走ったような気がした。ビエール・トンミー氏は振り向いてみた。何かを感じたのだ。

しかし、背後には誰もいなかった。

と、思ったが、ビエール・トンミー氏には見えなかっただけだ。ビエール・トンミー氏が再び、前を向くと、電信柱の影から黒い影が姿を見せた