「ボ、ボ、ボクとしたことがどうしたのだ!」
2015年6月8日の講義の最中であった。いや、カレ自身には、講義の最中であるという自覚すらなかったのだ。
「目が覚めた…..ようやく目が覚めた。先生(●●●子講師)には申し訳ないことをした」
●●●子講師の講義の間、虚ろな目をしていたビエール・トンミー氏は、何故、目を覚ますことができたのか。
「ああ、勿体無いことをした。前期の講義は、後1回しかないのに」
ビエール・トンミー氏は、自分では気付いていなかったが、●●●子講師の唾を口にしたのだ。
その唾は、●●●子講師自身にとっては屈辱であったが、ビエール・トンミー氏(●●●子講師にとっては、ただのエロ爺だが)の気を引く為に態と飛ばしたものであった。
「何だか、唇が香ばしい…」
それはそうだろう。●●●子講師の唾は、奇跡とっていいであろう、見事にビエール・トンミー氏の左手の甲に着いたのだ。
その時点では●●●子講師ではない誰か別の女性に恋した目をしていたビエール・トンミー氏であったが、その女性の姿を虚空に思い浮かべる為かの如く、両肘を机につき、手を口に当てたのだ。
そう、その時、カレの左手に付いていた●●●子講師の唾が、カレの唇に触れたのだ。
「ああ、ボクとしたことが、あんな娘(こ)に心乱されるなんて!」
そうだ、ビエール・トンミー氏の心は、あのエーデルワイス(コーヒー)を飲ませてくれるあの喫茶店で遭遇したl'eau the one(ロー ザ・ワン)を付けた、全身黒っぽい服を着た若い女性に心射抜かれていたのだ。
「先生、ごめんなさい」
ビエール・トンミー氏は、●●●子講師に素直に謝った、心の中で。ビエール・トンミー氏の目は、生気を取り戻した。
●●●子講師も、エロ爺のその目の変化を見逃さなかった。自分の唾が、エロ爺の唇に触れるとことも目撃していた。
それは嬉しくもあり、また、悍ましくもある、ドストエフスキー的な心理であった。
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目の覚めたビエール・トンミー氏は、その日の講義の後直ぐに夏期講習の申し込みをした。そして、エヴァンジェリスト氏にメールを送った。
大学というところは、なんちゅーところなんでしょう。
なししろ6月も半ばなのにもう「夏休み」になってしまうのですから。
6月15日で前期は終了して後期は9月の後半です。
夏休みが何と長いことかと呆れていますが自分が大学生の時はこの
長い休みを何して過ごしていたのだろうと思います。
そこで、今年は「夏季講習」を受講することにしました。
見よ! この燃える学問の情熱を。
講座名は「行ってみよう、○○○美術館」
講師はというと、えーっと、●●●子講師とかいう人。
ぐーぜんにも、前期講座と同じ先生。
こんなに珍しい偶然もあるものですねぇ。
7月からも向学心に燃える私です。
ノーテンキで、そして、白々しいメールであった。
しかし、エヴァンジェリスト氏は、ビエール・トンミー氏を甘い、と思った。エヴァンジェリスト氏は知っていたのだ、あの彼女の怖ろしさを。
彼女は、狙った獲物は逃さないのだ。だって、彼女はスナイパーなのだから。