2012年2月25日土曜日

【ミステリー】女房を返せ、反町隆史よ!(後編)

【ミステリー】女房を返せ、反町隆史よ!(前編)の続きである)


茫然自失となったエヴァンジェリスト氏が気付いた時、「場面」はどこか知らない街となっていた。

自身の少し前をハハ・エヴァンジェリストが歩いていた。

「?」

疑問が生じたが、エヴァンジェリスト氏のその疑問もものかわ、精力的で恥ずかしさというものを知らないハハ・エヴァンジェリストは、街にいる人毎に声をかけていった。

「マダム・エヴァンジェリスト見かけませんでしたか?」

ハハ・エヴァンジェリストは道が分らない時、調べることはせず、直ぐにヒトに訊く人間であった。ハハ・エヴァンジェリストの息子ではあるが、エヴァンジェリスト氏にはできないことであった。

子どもの頃、直ぐにヒトに道を訊く母親が恥ずかしかった。その母親は、今は、自分(エヴァンジェリスト氏)を棄てて出て行った嫁を探し、道行く人に尋ねっていってくれているのであった。

エヴァンジェリスト氏はそんな母親のことが恥ずかしく、少し間をあけて、顔を地面に向けて、しかし、ハハ・エヴァンジェリストに付いて行った。

ふと顔を上げると、ハハ・エヴァンジェリストがマダム・エヴァンジェリストと話していた。

「あんたあ、どうしたん?」

広島弁で話しかけていた。

「ええけえ、もう戻ってきんさい」

うなだれたマダム・エヴァンジェリストはハハ・エヴァンジェリストに付き従った。反町隆史はそこにはいなかった。どうやらもう棄てられたらしい。

マダム・エヴァンジェリストはまだこちらを見ることはなかったが、エヴァンジェリスト氏は嬉しかった。「戻ってきてくれるんだ」

ハハ・エヴァンジェリストに感謝した。もう死んでいるのに、有り難かった。

..............そう、ハハ・エヴァンジェリストはもう7年前に死んでいたのだ。


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博多から長崎に向かう「白いかもめ」の中であった。

いつもは人を軽侮するような尊大な言動しかとらないエヴァンジェリスト氏が、寝汗をかき、初めてと云ってもいい弱気な姿を見せていた。

「反町ぃ.......」とうなされていたのだ。顔は苦渋で、まさに歪んでいた。

「反町がどうしたんですか?」と訊くと、夢から覚めたエヴァンジェリスト氏が、マダム・エヴァンジェリストと反町隆史との顛末、ハハ・エヴァンジェリストの活躍を語ったのであった。

普通であれば恥となることを自ら、ましてやエヴァンジェリスト氏が語る訳がないが、まだ夢うつつであり、油断があったのであろう。

何故、反町隆史であったのかは分らない。マダム・エヴァンジェリストは反町隆史ファンではない。エヴァンジェリスト氏も反町隆史との接点は殆どない。

近く、またエヴァンジェリスト氏と接点を持つと噂される「うぬぼれ営業」氏を通しての関係がなくはない程度である。

反町隆史はご存じかと思うが、ジャニーズの元「平家派」である。そして、「平家派」と云えば、「うぬぼれ営業」氏なのであるが(疑惑.....ジャニーさんの一言か、タイの王族の介入か、サイババの遺言か?)、まあ、その程度の接点にすぎない。

反町隆史は久々にテレビの連続ドラマに出ているTBS 系 木曜ドラマ9 「 最高の人生の終り方~エンディングプランナー~ 」)。それがエヴァンジェリスト氏の脳に影響を与えたのであろうか?

また、何故、マダム・エヴァンジェリストのことで悪夢にうなされることになったのか?

「白いかもめ」が向かう先が、新婚旅行の地「長崎」であったからであろうか?最近、マダム・エヴァンジェリストに近づくと、「近いっ!」と手で払いのけられるのを淋しく感じていたからであろうか?

そして、死んだハハ・エヴァンジェリストは何故、現れたのか?命日(3月15日)が近いからなのか?

ミステリーである。

2012年2月24日金曜日

【ミステリー】女房を返せ、反町隆史よ!(前編)



「女房を返せ、反町隆史よ!」

...............帰宅したエヴァンジェリスト氏が見たのは、膝に両肘をつけ、そこにのせた自らの顔を突き出すように、相対した若い男に満面の笑みを向けるマダム・エヴァンジェリストの姿であった。

何を話しているのかは分らなかった。分ったのは、マダム・エヴァンジェリストにはこちらの声が届いていないことであった。

すぐ側で「ただいま」と云っているのだが、返事がない。

「ご飯は......?」と云ったが、振り向く様子は全くない。「ちょっとぉ!」と云っても無駄であった。

..........その後、晩ご飯をどうしたのか、記憶がない。

マダム・エヴァンジェリストは相変らず若い男から目を外さず、嬉しそうに語りかけている。

何を話しているのかは、分らなかった。

「風呂に入るね」と云っても、関心がないというか、エヴァンジェリスト氏の存在を全く感じていないようであった。

若い男が何故、ウチにいるのかが分らなかった。

勝手に上がり込みやがって、と思ったが、マダム・エヴァンジェリストが話しかけているのだから、「勝手に」とは云えない。

若い男もぼそぼそと口を開いているように見えたが、何を云っているのかは分らなかった。分るのは、マダム・エヴァンジェリストがとにかく嬉しそうであることであった。

....と、若い男としか見えていなかった男が反町隆史であることが分った。

38歳の反町隆史が「若い」かどうか本来、疑問なところであるが、58歳のエヴァンジェリスト氏から見たら「若い」のは確かであった。

何故、反町隆史がウチにいるのか分らなかったが、そんなことより、疲れて帰ってきた亭主をそっちのけで「若い男」に文字通り首ったけになっている妻が許せななかった。

いい加減にしろ、と思った。

と思ったら、云っていた........「そんなにソイツが良かったら、ソイツと出て行ってしまえ!」

「あ、そう」

それでも何を云っても反応のなかったマダム・エヴァンジェリストが、応えた。

そして、応える間もなく、マダム・エヴァンジェリストは反町隆史と出て行ってしまった

181cmと背の高い反町隆史の左腕に両手をかけてぶら下がるようにして、反町隆史の方に顔を向け、こちらを振り返ることもなく、出て行ってしまったのであった。

まさか本当に出て行くとは思っていなかった。しかし、出て行ってしまったのだ。

「女房を返せ、反町隆史よ!」



(明日に続く)

2012年2月11日土曜日

【奇跡 ! ? 】「その時、空は割けた!」........モーゼかエヴァンジェリスト氏か

「その時、空は割けた!」

誰がそんなことを信じるというのか。またしても、エヴァンジェリスト氏の妄言に決っている。

「オレハオトコダヒロイン氏が証言するなら信じます」

そんなローラククイーン13世の言葉に(自分の言葉は信じてくれないローラククイーン13世に)エヴァンジェリスト氏は怒っているが、違う意味で、私もローラククイーン13世ともあろう方が一体どうしたのかと思う。

2012年2月1日、山形県は庄内地方の鶴岡で、というか、庄内空港で、エヴァンジェリスト氏が起こしたこと(とは私は思わないが)について、エヴァンジェリスト氏自身が云うだけでは信じないが、「確かにエヴァンジェリスト氏が起こした」とオレハオトコダヒロイン氏が証言するなら信じると、ローラククイーン13世は云ったのだ。

しかし、そんなことが起きる訳がないではないか!オレハオトコダヒロイン氏が証言したとしても、私は信じない。

エヴァンジェリスト氏にどうして空を割くことができようか!?

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その日、庄内地方は豪風雪であった。地吹雪が縦横無尽に吹き荒れていた。オレハオトコダヒロイン氏は、エヴァンジェリスト氏と東京行の9:10発の第2便(ANA896便)に乗る予定であった。

荒れた天候で折り返し便となる東京からの第1便(ANA893便)が無事に着陸できるかどうかも怪しかったが、何とか到着した。

飛行機は離陸よりも着陸が難しい(危ない)。着陸できたのだから、離陸(出発)は問題ないかと思われた。

事実、折り返し便が到着したのを見て、オレハオトコダヒロイン氏はほっとした顔になった。

しかし...........「安心はできない」

空港の窓から外を見ていたエヴァンジェリスト氏が呟いた。まだまだ地吹雪の猛威は凄まじいものであったのだ。

そして、そのエヴァンジェリスト氏の言葉通り、ANA896便の出発は遅れることになった。

30分経ち、1時間経ち、そして、1時間半が経った。除雪車が滑走路を走り回るが、除雪したその跡に直ぐにまた雪が積もる。いたちごっことはこのことを云うのであろうかと思われた。

空港職員は、「JRは今のところ、動いています。ANA896便は欠航にはならない予定ですが、いつ出発できるかは分りません。お急ぎの方は....」と云って、JRで新潟経由で東京に出る為の乗換案内を配り始めた。

真面目で、その日には東京の会社に戻りたいオレハオトコダヒロイン氏は、その乗換案内の資料をもらいに行った。

「エヴァンジェリストさん、僕はJRで戻ることにしようかと......」
「待て!」

両手を躯の前で組んだエヴァンジェリスト氏が、どこかを見ながら云った。

「待て!飛ばしてみせよう!」
「はあ?」
「視界を開けさせてみせようぞ!」

「ああ、お願いします」と云ったオレハオトコダヒロイン氏の皮肉もものかは、エヴァンジェリスト氏は念じ続けた。

「そら、開けて来たぞ!」
「.................!?」

エヴァンジェリスト氏が念じ始めて程なくして(2、3分もしない内に)、気のせいであろうか、これまで見えなかった滑走路の向こうの林が見えて来たように思えた。

「ムムムムム!.........フフフ」

更に念じ続ける不敵なエヴァンジェリスト氏の笑いに呼応するかのように、視界は開け、滑走路が見えて来た。

「飛ぶぞ!今だ!今のうちだ、飛ぶのは。早くしろ」

もう、エヴァンジェリスト氏の言葉を待つまでもなかった。「今」飛べるのは誰に目にも明らかであった。

「貴方っていう人は!」

オレハオトコダヒロイン氏は、エヴァンジェリスト氏を感嘆の眼で見た。モーゼに率いられてエジプトを出ようとしていたユダヤの民のように。

モーゼが海を割ったように、エヴァンジェリスト氏は空を割いたのであった。

ANA896便は2時間遅れではあったが、無事、庄内空港を飛び立った。

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以上は、オレハオトコダヒロイン氏の「証言」を元に再現した2012年2月1日の庄内空港の様子である。


「その時、空は割けた!」とエヴァンジェリスト氏は云う。

そうだ。「空は割けた」のだ。エヴァンジェリスト氏が「割いた」のではなく、たまたま雪が止んだだけなのだ。

オレハオトコダヒロイン氏が証言しても、私は信じない。「エヴァンジェリスト」という名前に反して極めて俗っぽいエヴァンジェリスト氏に「奇跡」を起こせようはずがないではないか!

2012年2月7日火曜日

【後任】「いや、ワタシではない、多分。新相棒は」

「いや、ワタシではない、多分。新相棒は」

それがエヴァンジェリスト氏の回答であった。

神戸尊警部補役の及川光博が「相棒」を卒業するという報道があり、直ぐにエヴァンジェリスト氏に訊いてみたのだ。


「今度こそ、アナタではないのですか、新相棒は?【緊急特報】尊(ミッチー)が結婚!「いよいよ貴方の出番ですか?」寺脇康文亀山薫役)が降板した時も次はアナタかと思いましたが」
「もう、それ以上、訊かないでくれ」
「怪しいですね..........アナタが杉下右京に対抗して、袖下(そでのした)左京役で『相棒』入りするのではないかという人もいますが」
「だ、誰だ、そんなことを知っているのは。いや、そんなことを云っているのは」
「ほほお、やはりそうなんですね」
いや、ノーコメントだ」
豊さん(水谷豊さん)からも松本さん(プロデューサーの松本基弘さん)からも連絡は入ってはいないんですか?」
「事務所を通してくれ」
「一旦、豊さんの相棒となり、でも豊さんも今年で還暦ですから、次は豊さんが『相棒』を卒業して、そこからはアナタ中心の『相棒』になるのではないかと見る人もいるのですが」
だ、誰だ、そんな鋭い.........いや、事務所を通してくれ。今は、ノーコメントだ」


私は、狼狽する振りをしながらも嬉しそうに「ノーコメント」を繰返すエヴァンジェリスト氏を見てみたかっただけだ。思う壷であった