2012年10月30日火曜日

スパイが神になった日




2012年10月26日(金)、スパイが神になった。

17:30過ぎ、名古屋駅、東京方面行新幹線のホームである。

「金曜日のこの時間で、直ぐに新幹線に乗れ,それも窓側がとれるなんて珍しい」

という私に、キタグニカラキタ・スパイ氏がしたり顔で応えた。

「修学旅行じゃあないですかあ。名古屋では時に、そういう奇蹟が起きるんですよ。名古屋で修学旅行の一団が降りて、ぽっかり席が空くってことがね」

「ああ、確かにね」

とは云ったものの、

「そんなこともあるまい。それにしてもまあ、『プロの旅人』の私に対して偉そうに云えるもんだ」

とキタグニカラキタ・スパイ氏の言葉を鵜呑みにすることはなかった。

が…………

キタグニカラキタ・スパイ氏が17:50発の東京行「のぞみ380号」に乗り、先に名古屋を発ったその3分後のことであった。

私は、17:53発の東京行「のぞみ40号」に乗ろうとしたのだ。12号車である。

「のぞみ40号」は到着したものの、12号車になかなか乗ることができなかった。

修学旅行生たちが無尽蔵に湧いて来るかの如く、12号車から次々と降りて来たのである。生徒たちが一向に降車しきらないので、私が乗車した時は既に17:57にはなっていた。

しかし、そう、キタグニカラキタ・スパイ氏の予言は的中したのだ

その時、スパイが神になった、のである。

「今後は、キタグニカラキタ・スパイ氏のことを『キタグニカラキタ・カミ』と呼ぶことにしようと思う」

とエヴァンジェリスト氏に告げたところ、

「君は相変らず甘いなあ、フン」

と鼻で笑われた。

「修学旅行生を予言しただって!?奴は、スパイだぞ。スパイだったら、総ゆる所に仲間のスパイを配置しているものだ。新大阪駅か、或は、その修学旅行生たちが乗る『のぞみ40号』にスパイが居たのにきまってるではないか。そんなことも読めないのか、君は」

そう云われればそうだ。まんまとキタグニカラキタ・スパイ氏の罠にはまってしまうところであった。





2012年10月7日日曜日

【疑惑の旅】清水か尖閣か(シーン9)






そこは、魚釣島でも釣魚島でも釣魚台でもない。そこは、尖閣諸島ではないのだ。

しかし……..

「タイアンクワイライラ」

等と「彼ら」は云っているように、二人には聞こえた。

「彼ら」は、中国人である。中華民国から来たのか、中華人民共和国から来たのか、台北から来たのか、台南から来たのか、北京から来たのか、上海から来たのかは、知らない。

いずれにせよ、彼らはソコを占拠していると云ってもいい状態であった。

…..ソコは、尖閣諸島ではなく、清水寺であった。

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その日(2012年9月13日)、「ダイワロイネットホテル京都四条烏丸」の1階にある居酒屋「杬之蔵」で朝食を済ませたエヴァンジェリスト氏と連れの若い女性が先ず、向ったのは、清水寺であったのだ。

朝食をとりながら、ミスター・シューベルトのことに思いを馳せていたエヴァンジェリスト氏が訪れたかったのは、清水寺ではなかったが、先ずは京都旅行の定番中の定番の地を訪れることにした。

「ダイワロイネットホテル京都四条烏丸」の前でひろったタクシーが着いたのは、清水寺の参道の一口であった。



坂道の参道を登りながら、エヴァンジェリスト氏はモンサンミシェル(Le Mont-Saint-Michel)を思い出していた。



清水寺の参道の、お土産に挟まれた坂道の感じは確かに、モンサンミシェルのGrande Rueを彷彿させなくはない。

しかし、参道を抜けたところにある仁王門の階段を登ろうとして、そこが決してモンサンミシェル、フランスではないことに気付かされた。



更に云うと、そこは日本でもないのではないかと錯覚するところであったのだ。

「タイアンクワイライラ」

等と「彼ら」は云っているように、エヴァンジェリスト氏と連れの若い女性には聞こえた。

そう、仁王門の階段は、中国人観光客の一団に(いや二団であったかもしれない)占拠されていたのだ。

階段に並び、記念写真を摂っているのであった。

「ホーリーコーキイネン」

何を云っているのかは分らなかったが、猛烈に騒いでいた(彼らからすると、猛烈に楽しんでいた、ということになるのであろうが)。

「尖閣でもあるまいしなあ」

というエヴァンジェリスト氏の呟きに耳を貸さず、連れの若い女性は

「チッ」

と舌を鳴らした。

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仁王門の階段は中国人観光客の一団に占拠されていたので、横の階段から西門、三重塔、経堂、そして本堂へと二人は登っていった。

「妙なことに二人にラブラブ感がないなあ」

特派員は不満げに独りごちた。

まあ、清水寺はまさに京都観光のメッカである。中国人に一団の他に、修学旅行生達も一杯だ。

カップルも少なからずいるが、まあ、ラブラブ感を出すような場所ではなかろう。

しかし、エヴァンジェリスト氏の連れの若い女性は、本堂で待ち受けていた「出世大黒天像」を見ながら、



柄にもなくといった感じで、何やら物思いに耽っていた



(続く)









2012年10月6日土曜日

ミニテルは死なない




Appleから「iCloudの無料ストレージアップグレードが延長されました」というメールが届いた。

そのメールは、「カレ」にも届いた。「カレ」は云った。

「ミニテルは死なない」

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この「iCloudの無料ストレージアップグレードの延長」は、MobileMe時代から長くサービスを利用して来たユーザー向けの処置らしい。

MobileMeからiCloudへの移行時に、通常のiCloudアカウントに含まれる5GBのストレージに加えて無料アップグレードが提供されていたが、そのストレージアップグレードは2012年9月30日で終了予定であったのだ。

MobileMeからiCloudへの移行は、2012年6月30日であった。

そして、その2012年6月30日は、「ミニテル」の終焉の日であったのだ。

「ミニテル」は、フランスで大成功を収めた情報通信サービスである。

正しくは、サービス名称は「テレテル」(Télétél)で、その端末の名称が「ミニテル」(Minitel)であるが、通常、「ミニテル」サービスと云われている。ネットワークには、Transpac(FranceTelecomが提供するパケット通信網)が使われた。




「ミニテル」は、インターネットを先取りしたサービスであったとも云える。

「ミニテル」は、フランスの他に、イタリアでもサービス化され、また、米国等でもサービス会社が設立されたが、フランスのような成功は収めなかった。

そして、今は知る人も少ないのであろうが、「ミニテル」は日本でも事業化が計画されたのであった

日本からフランスの「ミニテル」に接続するサービスである「Minitelnet」というサービスがあったが、そのことではない。因に、「Minitelnet」はFrance TelecomとINFONET Serices Crporation との提携によるサービスであったが、そのINFONET(その後、BTに買収されBT-Infonetとなった)も今年でなくなるらしい。

「ミニテル」の日本での事業化は、「日本語ミニテル協会」という組織により計画されたのだ。「feasibility study」が為され、Business Planが作成されたらしい。

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….しかし、日本で「ミニテル」事業化は実現されなかった。

その「ミニテル」の日本での事業化、「日本語ミニテル協会」に「カレは深く関係していたらしい。

私とエヴァンジェリスト氏の共通の知合いであり、Monsieur Minitel au Japon(ムッシュウ・ミニテル・オ・ジャポン:日本のミスター・ミニテル)と呼ばれていた「カレ」は、Appleから「iCloudの無料ストレージアップグレードが延長されました」というメールを見て、云った。

「ミニテルは死なない。ミニテルも死なないのだ」

「.mac」が「MobileMe]となり、「iCloud」となり、ある意味では生き残っているように、「ミニテル」も形を変え、生き残っていく、とでも云いたいのであろうか。

或は、ミスター・シューベルトが「天使」になってもまだ、私の心の中に、そして、エヴァンジェリスト氏や「カレ」(Monsieur Minitel au Japon)の心の中に生きているのと同じように、とも云いたいのかもしれない(参照:アナタは妖精を見たことがあるか?!

「ミニテルは死なない」

その言葉の真意を、そして、「ミニテル」の日本での事業化、「日本語ミニテル協会」について「カレ」に訊いてみたいが、今、「カレ」は、「ミニテル」の思い出にふけっているのか、虚空を見つめ、とても話しかけられる雰囲気ではない。

いずれ「カレ」には、何故「ミニテルは死なない」のか訊き、報告したい。






2012年10月5日金曜日

【疑惑の旅】「最後のホテル」「最後の朝食」(シーン8)






そう、お下劣な京都の特派員は、「ダイワロイネットホテル京都四条烏丸」とエヴァンジェリスト氏の因縁を分っていないのだ。

その因縁を予め知っていて今回、「ダイワロイネットホテル京都四条烏丸」を選んだ訳ではないのであるが、それはエヴァンジェリスト氏にとって偶然ではなかったのかもしれないのだ。

エヴァンジェリスト氏が、「ダイワロイネットホテル京都四条烏丸」を予約したのは、2012年8月20日である。丁度、「その日」の10日前であったのだ。

その時(2012年8月20日)、まさか、「ダイワロイネットホテル京都四条烏丸」が「最後のホテル」になろうとは知る由もなかったのである。


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「朝食は如何なさいますか?」

チェックインする時に、訊かれた。いつものことである。

いつもは(つまり出張の時には)、「要らない」と答える。今回も「要らな….」と答えながら、しかし、躊躇した。今回は出張ではないからである。

「要らな….」と言葉を留め、振り向き、ロビーのソファーに座っていた連れの若い女性に訊いた。

「朝食要る?」

連れの若い女性は言葉では答えなかったが、首を横に振った。

「出張の時のように、コンビニで買ったパンででも朝食を済ませるつもりか。ケチな奴め」

ロビーの片隅に身を潜め、二人の様子を窺っていた特派員が言葉を吐き棄てた。

………しかし、その晩遅く、特派員は、「情報屋」からエヴァンジェリスト氏が、後からフロントに戻り、二人分の朝食券を買い求めたとの情報を入手した。

部屋に入った後に、

「ねええ、明日の朝食どうすんの?」

とでも連れの若い女性が訊いたのであろう。

「コンビニでもパンでも買う」

とエヴァンジェリスト氏が答えると、「ええ」と不満顔でも見せたのであろう。

「我が儘な女だ。それに振り回されるエヴァンジェリスト氏もエヴァンジェリスト氏だ」


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翌朝(2012年9月13日の朝)、エヴァンジェリスト氏とつれの若い女性は、「ダイワロイネットホテル京都四条烏丸」の1階にある居酒屋「杬之蔵」に居た。

そこが朝食会場であった。ブッフェ・スタイルの朝食である。

歳のせいで食が細くなっているはずであるのに、エヴァンジェリスト氏は矢鱈、料理と飲み物をとり、「苦しい」と云いながら完食していた。

貧乏性なのであろう。ブッフェ・スタイル(俗に云う、『バキキング』)なのに勿体ない(沢山取らないと)、ということなのであろう。



一方、連れの若い女性が取って来た料理、飲み物は僅かであった。



「それだけでいいの?」

エヴァンジェリスト氏が訊いた。相手のことを気にして云ったのではないことを特派員は察した(特派員は、その居酒屋のどこかに朝から身を潜めていたのだ)。

ケチなのだ。

「朝食券は一人当たり1000円するのだ。元を取らないと損だ」

そう思ったのに違いない。

その一方で、エヴァンジェリスト氏は、どこか切ない表情を見せていた

そう、その朝食が、「ホテルの最後の朝食」であったからである。

「ダイワロイネットホテル京都四条烏丸」は、「最後のホテル」であり、その朝食は、「ホテルの最後の朝食」であったのだ……….ミスター・シューベルトの(参照:アナタは妖精を見たことがあるか?!

いつも自分ことを「天使」だと戯けたことをのたまっていたところ、2012年8月30日に、本当に「天使」になってしまったミスター・シューベルトが、人生の最後に泊ったことになったホテルが「ダイワロイネットホテル京都四条烏丸」であり、その1階にある居酒屋でとった朝食が「ホテルの最後の朝食」となったのであったのだ。

エヴァンジェリスト氏は、朝食をとりながら、ミスター・シューベルトのことに思いを馳せていたのであろう。

そして、エヴァンジェリスト氏のその思いが、その日の(2012年9月13日)の行動を決めさせたのであろう。




(続く)



2012年10月2日火曜日

【疑惑の旅】導かれて、ダイワロイネットホテル京都四条烏丸(シーン7)






「いよいよ本当に『しけ込むんだな』。ヒヒヒ」

と京都の特派員をほくそ笑ましたエヴァンジェリスト氏と連れの若い女性は、阪急「烏丸」駅でおり、烏丸通を南下して行き、そのホテルに入っていった。

「ダイワロイネットホテル京都四条烏丸」である。


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大都市であり、また、日本一の観光都市でもある京都には、ホテルは沢山ある。

「プロの旅人」であるエヴァンジェリスト氏は、これまで出張で幾度も京都のホテルに泊ったことがある。

三井ガーデンホテル京都四条、三井ガーデンホテル京都三条、ホテルマイステイズ京都四条、ヴィアイン京都四条室町、スーパーホテル京都・烏丸五条、スーパーホテル京都河原町、ホテル京阪京都、新・都ホテル、ダイワロイネットホテル京都八条口、等々である。

いずれもいいホテルであるが、京都は観光客が多いのか季節を問わず、ホテルの予約をとりにくい。

それでも最近、好んで宿泊するのは、スーパーホテル京都河原町とダイワロイネットホテル京都八条口である。

大垣に始まり、エヴァンジェリスト氏は、スーパーホテル好きである(参照:スーパーホテル:大垣で一番いいホテル)。スーパーホテルの中でもスーパーホテル京都河原町は、最も新しいスーパーホテルの一つであり、新しく気持ちがいい。また、文字通り河原町にあり、立地もいい。

ダイワロイネットホテル京都八条口は、全国的によく泊るお気に入りのダイワロイネットホテルであり、これも最も新しいダイワロイネットホテルの一つであり、新しく気持ちがいい。

そして、「ダイワロイネットホテル京都四条烏丸」は、今年(2012年)の4月に開業したばかりであり、エヴァンジェリスト氏はこれまでまだ泊ったことがなかった

その「ダイワロイネットホテル京都四条烏丸」についに宿泊したようであるのだ。


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「そりゃ、新しく奇麗なホテルがいいでしょう、若い女性としけ込むにはね。ヒヒヒ」

お下劣野郎め!

「ツイン・ルームのようです」




どうやって調べたのか、分らぬが、部屋の種別まで調べ上げたようだ。



「トイレとバスが分れている部屋のようです。ヒヒヒ」



トイレとバスが分れているからって、「ヒヒヒ」てこともないであろう。写真を見ると、どうやら分れているトイレとバスとの間の壁がガラスで互いに見えるようになっており、ちょっとだけ確かに「ヒヒヒ」かもしれないが…….

しかし、特派員は分っていないのだ。「ダイワロイネットホテル京都四条烏丸」とエヴァンジェリスト氏の因縁を。

その因縁を予め知っていて今回、「ダイワロイネットホテル京都四条烏丸」を選んだ訳ではないことは確かであるが、それはエヴァンジェリスト氏にとって偶然ではなかったのかもしれないのだ。




(続く)









2012年10月1日月曜日

【疑惑の旅】「松葉」か「古ばやし」か(シーン6)






八坂神社から再び四条大橋方面に向ったエヴァンジェリスト氏は、連れの若い女性の存在を忘れたかのように呟いた。

「水曜日は定休日だったんだ」

いらついた連れの若い女性が訊いた。

「どこで食べるのぉ?」
「北店にしよう」

京都の特派員は、「北店」と聞いて、さすがにエヴァンジェリストうじが行こうとしている店を理解した。



「松葉」であった。「総本家にしんそば」の「松葉」である。

京都四條南座の隣と云うか、一角にあるというか、文字通り、「にしんそば」の元祖の蕎麦屋さんである。


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「『にしんそば』なら、『古ばやし』も美味いがな」

「古ばやし」と云われても、京都の特派員も何ことか分らず、また、連れの若い女性も分らなかった。

「チッ、要するに何処に行くの?」
「『松葉』だ。蕎麦屋だ。いいか、蕎麦屋でも?」

連れの若い女性の物言いも無礼だが、エヴァンジェリスト氏の口のきき方も偉そうだ。

「本店はお休みのようだから、北店に行くがいいか?」

「松葉」は、本店は水曜日が定休日なのである。その日は、9月12日(2012年)、水曜日であった。

しかし、四条通を挟んで本店の向かい側を少し道を入ったところに北店があり、そこの定休日は本店とは違っていたはずであることをエヴァンジェリスト氏は承知していたのである。

エヴァンジェリスト氏の見通し通り、「松葉」北店は営業していた。



「松葉」は、「鴨なんばんそば」も美味いが、エヴァンジェリスト氏はその日は、一番の定番である「にしんそば」(1200円)を注文した。



連れの若い女性は、まだ「にしんそば」や「鴨なんばんそば」なるものも知らぬ歳であるからなのか、「天ぷらそば」(1350円)を注文した。



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「なんだ、『松葉』で食事するだけかあ」

拍子抜けした京都の特派員であった。縁結びの神を祀る八坂神社の後、「今度は、どこにしけ込むんだ」と妙な「期待」を抱いていたのである。

しかし、「松葉」を出たエヴァンジェリスト氏と連れの若い女性は、河原町の」交差点に向かい、地下の阪急電車に乗った。

「『にしんそば』は、『古ばやし』も美味いが、やはり『松葉』は美味いなあ」

とエヴァンジェリスト氏は、電車の中で満悦な表情で再び、「古ばやし」の名前を出した。

京都の特派員は知らないようなので、解説すると、「古ばやし」は信州は松本駅の「お城口」を出て、駅を背中に左手に少し行ったところにある蕎麦屋さんである

そこは「古ばやし」の駅前店である。

『古ばやし』の「にしんそば」は、エヴァンジェリスト氏の云う通り、確かに美味いのである。

しかし、そんなことに興味はない京都の特派員は、二人を追った。

エヴァンジェリスト氏と連れの若い女性は、阪急電車を一駅行った「烏丸」駅でおり、烏丸通を南下して行った。

「いよいよ本当に『しけ込むんだな』。ヒヒヒ」

こんな奴を特派員にした自分を私は少々後悔した。



(続く)