2012年10月26日(金)、スパイが神になった。
17:30過ぎ、名古屋駅、東京方面行新幹線のホームである。
「金曜日のこの時間で、直ぐに新幹線に乗れ,それも窓側がとれるなんて珍しい」
という私に、キタグニカラキタ・スパイ氏がしたり顔で応えた。
「修学旅行じゃあないですかあ。名古屋では時に、そういう奇蹟が起きるんですよ。名古屋で修学旅行の一団が降りて、ぽっかり席が空くってことがね」
「ああ、確かにね」
とは云ったものの、
「そんなこともあるまい。それにしてもまあ、『プロの旅人』の私に対して偉そうに云えるもんだ」
とキタグニカラキタ・スパイ氏の言葉を鵜呑みにすることはなかった。
が…………
キタグニカラキタ・スパイ氏が17:50発の東京行「のぞみ380号」に乗り、先に名古屋を発ったその3分後のことであった。
私は、17:53発の東京行「のぞみ40号」に乗ろうとしたのだ。12号車である。
「のぞみ40号」は到着したものの、12号車になかなか乗ることができなかった。
修学旅行生たちが無尽蔵に湧いて来るかの如く、12号車から次々と降りて来たのである。生徒たちが一向に降車しきらないので、私が乗車した時は既に17:57にはなっていた。
しかし、そう、キタグニカラキタ・スパイ氏の予言は的中したのだ。
その時、スパイが神になった、のである。
「今後は、キタグニカラキタ・スパイ氏のことを『キタグニカラキタ・カミ』と呼ぶことにしようと思う」
とエヴァンジェリスト氏に告げたところ、
「君は相変らず甘いなあ、フン」
と鼻で笑われた。
「修学旅行生を予言しただって!?奴は、スパイだぞ。スパイだったら、総ゆる所に仲間のスパイを配置しているものだ。新大阪駅か、或は、その修学旅行生たちが乗る『のぞみ40号』にスパイが居たのにきまってるではないか。そんなことも読めないのか、君は」
そう云われればそうだ。まんまとキタグニカラキタ・スパイ氏の罠にはまってしまうところであった。