そう、お下劣な京都の特派員は、「ダイワロイネットホテル京都四条烏丸」とエヴァンジェリスト氏の因縁を分っていないのだ。
その因縁を予め知っていて今回、「ダイワロイネットホテル京都四条烏丸」を選んだ訳ではないのであるが、それはエヴァンジェリスト氏にとって偶然ではなかったのかもしれないのだ。
エヴァンジェリスト氏が、「ダイワロイネットホテル京都四条烏丸」を予約したのは、2012年8月20日である。丁度、「その日」の10日前であったのだ。
その時(2012年8月20日)、まさか、「ダイワロイネットホテル京都四条烏丸」が「最後のホテル」になろうとは知る由もなかったのである。
-------------------------------------------------
「朝食は如何なさいますか?」
チェックインする時に、訊かれた。いつものことである。
いつもは(つまり出張の時には)、「要らない」と答える。今回も「要らな….」と答えながら、しかし、躊躇した。今回は出張ではないからである。
「要らな….」と言葉を留め、振り向き、ロビーのソファーに座っていた連れの若い女性に訊いた。
「朝食要る?」
連れの若い女性は言葉では答えなかったが、首を横に振った。
「出張の時のように、コンビニで買ったパンででも朝食を済ませるつもりか。ケチな奴め」
ロビーの片隅に身を潜め、二人の様子を窺っていた特派員が言葉を吐き棄てた。
………しかし、その晩遅く、特派員は、「情報屋」からエヴァンジェリスト氏が、後からフロントに戻り、二人分の朝食券を買い求めたとの情報を入手した。
部屋に入った後に、
「ねええ、明日の朝食どうすんの?」
とでも連れの若い女性が訊いたのであろう。
「コンビニでもパンでも買う」
とエヴァンジェリスト氏が答えると、「ええ」と不満顔でも見せたのであろう。
「我が儘な女だ。それに振り回されるエヴァンジェリスト氏もエヴァンジェリスト氏だ」
-------------------------------------------------
翌朝(2012年9月13日の朝)、エヴァンジェリスト氏とつれの若い女性は、「ダイワロイネットホテル京都四条烏丸」の1階にある居酒屋「杬之蔵」に居た。
そこが朝食会場であった。ブッフェ・スタイルの朝食である。
歳のせいで食が細くなっているはずであるのに、エヴァンジェリスト氏は矢鱈、料理と飲み物をとり、「苦しい」と云いながら完食していた。
貧乏性なのであろう。ブッフェ・スタイル(俗に云う、『バキキング』)なのに勿体ない(沢山取らないと)、ということなのであろう。
一方、連れの若い女性が取って来た料理、飲み物は僅かであった。
「それだけでいいの?」
エヴァンジェリスト氏が訊いた。相手のことを気にして云ったのではないことを特派員は察した(特派員は、その居酒屋のどこかに朝から身を潜めていたのだ)。
ケチなのだ。
「朝食券は一人当たり1000円するのだ。元を取らないと損だ」
そう思ったのに違いない。
その一方で、エヴァンジェリスト氏は、どこか切ない表情を見せていた。
そう、その朝食が、「ホテルの最後の朝食」であったからである。
いつも自分ことを「天使」だと戯けたことをのたまっていたところ、2012年8月30日に、本当に「天使」になってしまったミスター・シューベルトが、人生の最後に泊ったことになったホテルが「ダイワロイネットホテル京都四条烏丸」であり、その1階にある居酒屋でとった朝食が「ホテルの最後の朝食」となったのであったのだ。
エヴァンジェリスト氏は、朝食をとりながら、ミスター・シューベルトのことに思いを馳せていたのであろう。
そして、エヴァンジェリスト氏のその思いが、その日の(2012年9月13日)の行動を決めさせたのであろう。
(続く)
0 件のコメント:
コメントを投稿