8年前の9月某日、エヴァンジェリスト氏が、H田空港から会社に電話を入れた際に、いつも通り、名前も名乗らず、いきなり、「んんん、いい匂い…..」とやや鼻にかけた声で云ってみたところ、電話をとったカレは黙ってしまいました。
電話をとったのがモテタイ氏だと思ったのです。モテタイ氏が電話に出たら、いつか云ってみようと何日か前からチャンスを窺っていたのです。
「は、はい、ヒガシナカノ・カンパ….」と、会社名を少しだけですが詰りながら云うその声は、「モテタイ氏だ!」、と喜び勇んで、「んんん、いい匂い…..」と云ってみたのです。「こりゃ、大受けだ」と確信しながら。
しかし、待受けていたのは、恐ろしいと云うのがまさに相応しい「沈黙」でした。神の沈黙よりももっと恐い沈黙でした。
「だ、誰だ!?」と思いました。電話に出た相手の方がよほど「だ、誰だ!?」と思ったに違いない、とは思いは及ばず、勝手に頭の中で「誰なんだ、誰なんだ」との思いを巡らせました。聞いたばかりの相手の声を頭の中で反芻させてみました。
「ち、違う。モテタイ氏ではない」、と遅まきながら理解した瞬間、「エヴァンジェリストだけど、ゴタンダ・タワー・レディ、います?」と精一杯、真面目な声に切替え、取繕いながら云いました。云いながら気付きました、「アカパン・コ−ハ氏だ。硬派な彼に云ってしまったんだ」。「んんん、いい匂い…..」なんて戯けた台詞を、よりによって硬派中の硬派のアカパン・コ−ハ氏に云ってしまったと思うと、戦慄がまさに背中を走り抜ける気がしました。
しかし、後日、アカパン・コ−ハ氏にその時のことを謝った際に、氏は、さすが大人です、「いや、誰かなあ、と思いました」と云っただけで、エヴァンジェリスト氏を責めることは全くありませんでした。
ところで、そもそも何故、エヴァンジェリスト氏は「んんん、いい匂い…..」なんてことをモテタイ氏に云おうかと思ったのか........ 【続く】
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