2011年9月22日木曜日

スカリーは間違っていたのか?(後編)

「虚」中の「実」は、本来、「虚」である。そのはずである。「夢」の中に「現実」は存在し得ないように

しかし、それはそもそも「虚」であったのか?........と、エヴァンジェリスト氏は云う。

スカリーの教えは「実」である。彼のマーケティングの教えは決して間違っていない。

では、スカリー自身は「虚」であったのか?Appleに対するジョン・スカリーは「虚」であったのか?

彼は、Appleの最大のミスは、自分をCEOにしたことであるとか、Appleに於ける自分の業績はスティーブ・ジョブズに依るものである等と云っているらしい。スティーブ・ジョブズが去った後も(追い出された後も)、スティーブ・ジョブズのDNA(デザイン哲学等)に従いAppleは動き、業績は向上したといった意味であるようだ。

即ち、ジョン・スカリーは、Appleに於ける自身を「虚」であったと云っているに等しいのだ

しかし、スカリーは間違っている。スカリーが「虚」であるとしたら、Apple時代がそうであったのではなく、Appleに於ける自身を否定している今である

スティーブ・ジョブズが去った後(追い出された後)、スカリーはAppleの売上を10倍にしてみせたのだ。Macintoshがそれを実現したのだ。

Macintoshの源流には、パロ・アルトに始るスティーブ・ジョブズの発想があったことは確かである。Macintoshにはスティーブ・ジョブズのDNAが存在することは確かである(当初、スティーブ・ジョブズはMacintoshのプロジェクトには加わっていなかったはずではあるとしても)。

しかし、MacintoshのDNAはスティーブ・ジョブズのそれだけではないのだ。そこには、ジェフ・ラスキンのそれもあったであろうし(彼はMacintoshプロジェクトを立ち上げた一人である)、Macintoshには欠かせぬソフトウエア(ツール)であったHyperCardの開発者でるビル・アトキンソンのそれもあったであろう(彼はMacPaintやQuickDrawも開発している)。

また、ある時期Macintoshのデザインを担当したフロッグ・デザイン社のDNAもあったであろうし、「エヴァンジェリスト」なる存在(概念)を創ったといっていいガイ・カワサキのDNAもあることは間違いない。

そして........

そういった人々をリードしたジョン・スカリー自身のDNAもMacintoshの中にはあるのだ。

確かに、今のAppleの隆盛はスティーブ・ジョブズに依るところが大きい(勿論、スティーブだけの功績ではないことは、スティーブ自身がよく分っているはずだ、とエヴァンジェリスト氏は云う)。

しかし、Macintoshが1984年、衝撃的な登場をし、その後、進化し、成長していった過程にいたのは、スティーブ・ジョブズではなく、ジョン・スカリーであったのだ

今のAppleの隆盛をもたらしたスティーブ・ジョブズを見て、Apple時代の自身を否定してはいけないのだ。

................と、エヴァンジェリスト氏は云う。

「ジョンにそう云ってやりたいが、彼とは親しくはないのでね」

スティーブとは同級生だけど(日本的には同学年ということらしい)、という顔をして云う。

Apple時代のスカリーは決して「虚」ではない。

そして、スカリーの教えは「実」である。彼のマーケティングの教えは決して間違っていない。それは、「虚」中の「実」ではなく、「実」中の「実」なのである

......では、もう一人、エヴァンジェリスト氏にマーケティングを教えた(エヴァンジェリスト氏に初めてマーケティングなるものの存在を教えた)アノ人の教えは「実」であったのであろうか?

尊属傷害致死で逮捕され実刑を受けたアノ人の教えは「実」であったのであろうか。

「いずれそのことは語ることになるであろう」

そう云うエヴァンジェリスト氏の顔はいつになく厳しい。

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