2015年2月22日日曜日

「そう、アレは『桃怪人』よ」….【ビエール・トンミー氏の優雅な老後】



「キャアアアアアアーッ!」

首都圏の郊外のある駅付近で、女性の叫び声が上った。アラフォー女性であった。

アラフォー女性は腰を抜かしたか、お尻を地面に落とした。パンツが見えた。

ピカーッ!

その時、何かが光った。そして、

「ふふ」

という声が漏れた。

周りには他に誰もいなかった。

女性は、お尻を地面につけたまま後ずさりし、立ち上がると、「ふふ」という声を背に一目散にその場を立ち去った。


女性は、駅前の交番に駆け込んだ。

「か、か、怪人です!」

警官は目を剥いた。若い警官であった。

「エエッ!怪人ですか?!」

最近、本署から通達が回って来ていたのだ。

最近、首都圏内に怪人が出没している、というものであった。首都圏外では、怪鹿が奈良に現れた模様ともあった。

「で、その怪人はアナタに何かしたんですか?そのお….エッチなことでも」
「いえ、何も」
「え?何も?」
「ええ、何も」

そうだ、通達にも怪人は何かをしたとも、何かをするとも書いてはいなかった。ただ、怪人出現に注意とあるのみであった。

「何もしていないとこちらとしてはどうしようもないのですが…」
「でも、怪人なのよ」
「と云われても…」
「ああ、私が腰を落とした時、パンツを見られたと思うわ。目が光ったもの」
「えっ、パンツを!?でも、貴女が腰を落としたからパンツが見えただけなんですよね」
「それが怪人の戦略だったのではないのかしら!」
「でも、証拠がないと…」
「うんもおー!」
「で、その怪人はどんな年格好でしたか?」
「ええっつとお…..そう、還暦ぐらいのおじいちゃんね。ピンクの帽子を被っていたわ。黒いサングラスもしてたわ」
「ピンクの帽子ですかあ…怪人は普通、茶色の帽子らしいんですが」
「だって、ピンクだったんだからしょうがないじゃあないですか、うんもおー!シャツもピンクだったし」
「で、サングラスですか。でも、サングラスをしていてどうして目が光ったのが分ったんですか」
「だって、怪人ですもの」
「いや、それでは理屈になりませんが」
「アナタ、ほんとワカラズヤね!」
「まあ、いいでしょ。で、白いマスクもしていたんでしょ?」
「いいえ、マスクはしていなかったわ」
「えっ?マスクなし?」
「ええ、何だかいやらしい髭を生やしていたわ」
「マスクなしでエロい髭?」



「ええ、そうよ。エロかったわ、あの髭。あの髭でどうするつもりかしら」
「どうするって、どういう意味ですか?」
「そういう意味よ」


若い警官はアラフォーのおばさんに気圧されて、とにかく調書を書いた。

題名は、「エロい髭の怪人桃怪人であった。

アラフォー女性が云ったのだ。

「そう、アレは『桃怪人』よ」










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