ビエール・トンミー氏からメールが届いた。
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ども、ども。
私が「怪人」だという噂があるようですね(その噂、とても気に入ってます)。
ところで、私だと噂される「怪人」と全く同じ怪人にされた怪人2号は例のアオニヨシさんなんですか?
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ビエール・トンミー氏は、まだ面識はないものの、アオニヨシ君のことがお気に入りらしい。
怪人2号がアオニヨシ君であるのかどうかは、私には分からないので、翌日、会社で本人に単刀直入に訊いてみた。
「君なのかい、怪人2号は?」
「はあ?何ですか、怪人2号って?」
「ほほー、お惚けかい?」
「あのお、ボクはアナタと違って忙しいんです。妙なカラミ、止めてもらえませんか」
「おお、これは怪しいなあ」
「すみません。これから奈良に出張なので」
と云って、大きな鞄を手にするとアオニヨシ君は会社を出た。
「そうか、アイツだったのか….」
『フフッ』
誰かの抑えた笑い声が聞こえてきた。
その日は、出張等で外出している者が多く、会社で周りにに残っているのは、メールでの顧客フォローが得意のスモーキン・パパ・カニー氏とドルト氏だけであった。
スモーキン・パパ・カニー氏はしかし、その時も、いつものようの喫煙室に行っていた。喫煙室長だからである。
つまり、残っているのはドルト氏だけであった。
「今、笑いました?」
ドルト氏に近付いて訊いた。
「いえ、何も。フフッ」
「ほら、また笑ったでしょ」
「いえ、ちょっと喉がつまって。後ろの席のドルト2号さんがインフルエンザにかかったので、うつされちゃいましたかね。フフッ」
何だか怪しいが、まあいいだろう、と思っていると、ドルト氏がコピーをとる為、席を立った。
あれ?何だかいい匂いがした。
しかし、フレグランスに疎い私にはその匂いが『BVLGARI pour homme』によるものであることが分らなかった。
そして、その夜…..
奈良の特派員から久しぶりのレポートが入った。
「た、た、大変でおます!」
なんなんだ。相変らず妙な関西弁だ。
「か、か、怪人が奈良にも現れましてんねん」
なんだと、奈良にも怪人!?
「今から、写真を送りますわ」
そうか、やはりアオニヨシ君が怪人2号であったのか!
しかし、送られてきた写真を見ると…..
おや、確かに怪人のトレードマークである白いマスクにサングラス、そして、茶色の妙な帽子を被っているようだが、それは怪人2号ではない。少し、いやかなり様子が異なる。
そもそも、送られてきた写真の「怪人」は、「人」ではないのではないか。
そう、鹿なのだ。怪鹿だ!
怪人ではなく怪鹿なのだ。とすると、その正体は、アオニヨシ君に違いあるまいが、怪人2号ではなく、それは怪鹿なのだ。
怪人2号に続いて、怪鹿まで現れるなんて、本当に恐ろしい時代になったものだ。
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