「では、何故なんだ?」
「いや、まあ、それは………じ、じ、事務所を通してくれ」
エヴァンジェリスト氏は、都合が悪くなった時の決め台詞を吐いた。
テレビ朝日の『モーニーングショー』でエヴァンジェリスト氏のインタビューが1秒も放映されなかったのは、『その筋』からの『圧力』があったからではないのか、とビエール・トンミー氏に問われたのだ。
「そうか、分った。では、事務所に訊いてみる」
「えっ!いや、それは困る」
「君が、『事務所を通してくれ』と云ったのではないか」
「いやまあ、そうだが、事務所はまだ何も云えないはずだ」
「んん?.....まだ?」
「うっ….」
「まだ、と云ったな、君は。『事務所はまだ何も云えないはずだ』と」
「…そんなこと云ったかなあ?」
「惚けても無駄だ。……そ、そ、そっかあ!読めたぞ!」
「何が読めたのだ?」
「君がインタビューを受けたのが2015年12月24日、そして、そのインタビューが放映されるはずだったのは、2015年12月25日だったな」
「そ、そ、そうだが」
「おやおや動揺してきたな。そう、丁度、その2015年12月24日は、カレが記者会見をし、翌日(2015年12月25日)は、テレビ、新聞にはそれについての報道で溢れた」
「な、な、何を云いたのだ…..」
「カレの『降板』に関連していたのだな」
「『降板』?」
「シラを切るつもりか!分っているんだ。イチローの後任になるのだな、君が」
「イチロー?いや、ワシは野球はやらん。それにイチローは来季もまだ現役で後任なんて不要ではないか」
「フルタチの方のイチローだよ。古舘伊知郎だ」
「うっ….」
「古舘伊知郎も1954年生れだな。君とは『同級生』な訳だ」
「し、し、知らん」
「古舘伊知郎に『同級生』のよしみで頼まれたのだな、後を頼むと。『報道ステーション』のメイン・キャスターになってくれと」
「古舘伊知郎の後任は、ハトリ(羽鳥慎一)かミヤネ(宮根誠司)ではないのか?いや、アズミ(安住紳一郎)だったかな?トミカワ(富川悠太)でもいいではないか、彼は名門『国立高校』出身だし」
「ほ、ほー、随分、詳しいではないか。しかし、惚けても無駄だ」
「いや、惚けてなんか….」
「羽鳥慎一も宮根誠司も安住紳一郎も富川悠太も意外性に欠ける。しかし、シロウトがいきなりメイン・キャスターになると、そりゃあ、凄い意外性ではないか!」
「意外性はなくても…」
「それに古舘伊知郎は『不自由な12年間』と云った」
「確かに」
「その『不自由』を打ち破ることができるのは君しかいないのではないか」
「うっ….」
「自身の講演でも聴講者に『出入り自由』とか『居眠り、鼾もOK』と、『既成の枠』にも『規制の枠』にも囚われない君を古舘伊知郎は後任に望んだのではないのか?」
「し、し、知らん」
「しかもだ、君には美貌もある。女性視聴者も釘付けになるはずだ」
「いや、ワシも衰えた。嘗て程の….」
「なになに、君はまだイケル。むしろ、渋みが加わり、若い頃よりももっと素敵だ」
「ワシを持ち上げても何も出んぞ」
「そうか、君が古舘伊知郎の後任になるのかあ。それで、テレビ朝日内で『報道ステーション』から『モーニングショー』に待ったがかかったのだな」
「何を勝手に妄想しているのだ」
「『モーニーングショー』で君のインタビューが放映され、面白いいインタビューだと評判になり、モーニーングショーが君を、君の念願通り、コメンテーターに抜擢し、またそのコメンテーターとしてのコメントが面白い、とさらに評判となり、『ちょっと映画、ドラマでも出ませんか』、となり、君はいよいよ役者の道を歩み始めてしまうと、『報道ステーション』としては君にメイン・キャスターになってもらえなくなるからなあ。そうだったのか」
「何を勝手に結論付けているのだ。君の妄想もそこまでいくとモンスター級だな」
「シラを切るではない!総て辻褄があったではないか、君がインタビューを受けたのに、それが『モーニーングショー』で1秒も放映されなかった理由がこれで分った」
「妄想、妄想、妄想だ、そんなこと!」
「まあ、いいさ、君の事務所に訊いてみるさ」
「いや、それは困る。事務所が困る」
「何故、困る?」
「だって、まだ事務所(石原プロ)とは契約を締結してはいないんだ」
(おしまい)
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