「舘さんの応援に、NHKホールに行かなくていいんですか?」
「うぅむ」
私の冷やかしにエヴァンジェリスト氏は唸った。
「うぅむ。舘さんには申し訳ない。あんなことにならなければなあ……」
誰もエヴァンジェリスト氏が、28年ぶりに紅白歌合戦に出場する舘ひろしさんの応援に行く、というか、応援出場できるなんて思っていやしないのに、真顔で答えられてしまった。
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2012年12月26日の夜、寒気から始まり、嘔吐、下痢、発熱と続き、エヴァンジェリスト氏はフラフラになってしまったのだ。
ウイルス性胃腸炎である。
2012年12月23日に、バイト先のパン屋から深夜に帰宅したマドモワゼル・エヴァンジェリストがやはり、嘔吐、下痢を繰返したのであった。
マドモワゼルにうつされたのだ。
2012年12月27日、嘔吐は何とか止ったが、下痢気味のお腹を抱えるようにし、また、発熱、全身倦怠のまま、「プロの旅人」であるエヴァンジェリスト氏は、出張に出た。
「待っているお客様を裏切る訳にはいかぬ」
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「うぅむ。舘さんには申し訳ない。舘さんたちにうつす訳にはいかんからな」
理屈に合わない。紅白歌合戦に出場している歌手たちにうつすことは気にし、一方、自身の仕事のお客様にはウイルス性胃腸炎をうつしていいのか!
「そりゃ、おかしくはありませんか!」
ちょっとやり込めてみようと思い、そう云ってみた。
「しかしなああ、ウイルス性胃腸炎にも効用はあるんだなあ」
はぐらかされてしまった。
「ウイルス性胃腸炎になり、血圧が下がったんだ」
「本当ですか?」
ああ、いかん。またエヴァンジェリスト氏の術にはまってしまった。
しかし、ウイルス性胃腸炎になり、血圧が下がったことは事実のようではあった。
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そして、今(2012年12月31日20時30分頃)、今度は、マダム・エヴァンジェリストがウイルス性胃腸炎になってしまったらしい。
仲のいい家族である。