2014年12月22日月曜日

「エーデルワイス」を飲みながら(その5=最終回)….【ビエール・トンミー氏の優雅な老後】


「ウッ……」

「理性」はおろか「品性」まで喪おうとしていたビエール・トンミー氏であったが、二人の若い女性の会話が氏を救った。


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「リンカーンってなんだったけ?」

ミニ・スカートが訊いた。

「大統領じゃない?」

ホット・パンツが答えた。

「ああ、ラフマニノフに似てるやつね」

ミニ・スカートが納得した。

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「….いやあ、危ないところだった」

ビエール・トンミー氏は、ふうーっ、と息をついた。

「やはり、●●●子先生だ。●●●子先生は知的で、そして、綺麗で素晴らしい」

思い直したようにコーヒー「エーデルワイス」を啜った。

「しかし、明日(2014年12月22日)で、今期の講義はおしまいだ。残念だ」

と、●●●子先生に想いを馳せながらも、ビエール・トンミー氏の目は隣席へのチラ見を続けていた



(終り)




「エーデルワイス」を飲みながら(その4)….【ビエール・トンミー氏の優雅な老後】



ホット・パンツが美脚を組みかえた。

「……」

ビエール・トンミー氏は、息を飲んだ。

「……」

ミニ・スカートは、流した脚の先を交差させた。

「……」

ビエール・トンミー氏は、再度、息を飲んだ。

「いや、こんなことを目当てにこの店に来ている訳ではない」

しかし、ビエール・トンミー氏の目はもうチラ見といえるレベルではなくなろうとしていた。

「……」

「知性」はあっても「理性」は元々持ち合せないビエール・トンミー氏であったが、今や「品性」までも喪おうとしていた。

「ウッ……」


(続く)







2014年12月21日日曜日

「エーデルワイス」を飲みながら(その3)….【ビエール・トンミー氏の優雅な老後】



二人に若い女性は、席に着くと、ホット・パンツの方は脚を組み、ミニ・スカートの方は伸びやかな脚を見せびらかすように斜めに流した。


「……」

ビエール・トンミー氏は、まだ口を噤んだままであった。

「……」

ホット・パンツの女性は、コーヒー「ブラジルサントス」と「モカフレンチ」を注文し、チーズケーキも頼んだ。

「……」

ビエール・トンミー氏は、iPhoneを見るふりをしながら、4本の美脚にチラチラと目をやっている。

「……そうだ」

ビエール・トンミー氏は、ようやく再び呟いた。

「そうなんだ。ボクはオープン・カレッジ通いとゴミ出ししかしていない訳ではないんだ」

いつの間にか、ビエール・トンミー氏の前にはコーヒー「エーデルワイス」が置かれていた。

「えっ!?」

チラ見が店員にばれたか、と不安になったが、気を取り直して呟きを続けた。

「そうなんだ。ボクはオープン・カレッジ通いとゴミ出しだけではなく、時にこうやって散歩をして駅前の喫茶店でコーヒーを嗜むのだ」

そうして、コーヒー「エーデルワイス」に満足の笑みを見せた。


(続く)



「エーデルワイス」を飲みながら(その2)….【ビエール・トンミー氏の優雅な老後】



ビエール・トンミー氏が自宅最寄りの駅から徒歩3分のマンションの1階にある喫茶店、店の前にコーヒーミルを置いた喫茶店にいると、若い女性二人連れが店に入り、隣席に座った

「……」

二人とも美脚であった。

「……」

一人はかなりなミニ・スカート、もう一人は、ホット・パンツであった。共に、モデル並みに伸びきった長い脚だ。

「……」

ビエール・トンミー氏は、呟きを忘れ、美脚にチラチラと横目をやった。



(続く)





「エーデルワイス」を飲みながら(その1)….【ビエール・トンミー氏の優雅な老後】




「アイツ(「プロの旅人」氏)は、分ったようなことばかり書いて、実はなーんにも分っちゃいない」

注文したコーヒー「エーデルワイス」を待ちながら、ビエール・トンミー氏は、誰にともなく呟いた。

「ボクが、オープン・カレッジ通いとゴミ出ししかしてないと思っているようだが、それは大きな間違いだ」

自宅最寄りの駅から徒歩3分のマンションの1階にある喫茶店だ。

「仕事を完全リタイアして確かに暇だ。確かに、『退屈だあ、ああ、退屈だあ』とは云った」

そんなに高級店ではないが、シックな作りの店だ。

「暇で退屈だから、オープン・カレッジに通うことにしたのは、その通りだ」

出窓風のところに、壺やお皿が飾られている。

「オープン・カレッジには、アイツが思うような下劣な美熟女や女子大学生と出会えはしないかと)期待をして行くようになった訳ではないものの、失礼な言い方になるが、●●●子先生の講義は拾い物だった」

出窓風のところには、帆船の模型も飾られている。

●●●子先生は素晴らしい、いや、●●●子先生の講義は素晴らしい!しかし、●●●子先生目当てで通っている訳ではないんだ。勉強、勉強、勉強なんだ」

カウンター席もあるが、店員と向かい合うのも嫌なので、3人席に一人で座っている。

「『フレグランス作戦』なんて、とんでもない。ボクはもうソッチ(女性との色々なこと)の方は枯れているんだ」


と、若い女性二人連れが店に入り、隣席に座った。



(続く)





2014年12月20日土曜日

【離党】まき子夫人か猪木氏か



「だ・か・らあ、連絡はないって云ってるだろ、猪木さんからは、まだ」

とエヴァンジェリスト氏は否定するが、本当だろうか?

「でも、猪木さんは『次世代の党』を離党したんでしょ?」
「ああ」
「アナタは、猪木さんが離党することは予めご存じだったのではないですか?」
「特に連絡を頂きはしなかった」
「でも、アナタと猪木さんの関係ですから、云わずもがな、だったんでしょ」
「ワシと猪木さんとの関係?何だね、それは?」
「おお、お惚けですね」
「ううっ…」
「なんなら、事務所を通しましょうか?猪木事務所を」
「ううっ…」
「森山愛子にでも訊いてみましょうか、猪木さんとアナタとの関係を」
「愛子ちゃんのことを知っているのか?」
「ええ、彼女、今は歌手ですが、以前は猪木事務所のOLだったんでしょ。『森山愛子』っていう名前も猪木さんの命名なんでしょ?」
「そこまで知っていたのか…」
「猪木さんからは、一緒に新党を立ち上げようとでも云われているのではないですか?」
「ううっ…迂闊なことを云うな!」
「アナタもその気はあるんでしょ?『アベ(安倍晋三)には任せておれんからなあ』と仰っていたではないですか」
「それはそうだが…」


「ひょっとしてまたまき子夫人のことを気にしているのですか?」
「またそれか」
「もう一度申し上げますが、アナタは、石原プロと国とどちらが大事なんですか!?」
「おっと、その手には乗らんぞ」
「ええ?」
「君の質問は、猪木さんからワシに新党立ち上げの話が来ていることを前提にしているだろ」
「いや、そんなことは...」
「そこでワシが、YESでもNOでも答えたら、猪木さんからワシに新党立ち上げの話が来ていることを認めることになるからな。でも、そうはイカン」
「ちっ、バレたか」
「だ・か・らあ、連絡はないって云ってるだろ、猪木さんからは、まだ

勝ち誇ったかのようなエヴァンジェリスト氏だが、「まだ」と云っているところで、氏の置かれた状況は分かるというものだ。

エヴァンジェリスト氏の活躍に期待しようではないか。







2014年12月13日土曜日

「北極美術史を学ぶ!」….【ビエール・トンミー氏の優雅な老後】




「昇天なんかしませんよ。あくまで勉強。勉強」

とビエール・トンミー氏は強弁する。

「ルーベンスで昇天ですか?」

と『ビエール・トンミー氏追跡特別チーム』の特派員から追求されたのだ。

「でも、ルーベンスなんて全然興味ありません。だから勉強なんです」

と意味不明の弁明をする。ルーベンスは、そう、『キリストの昇架』を描いた画家である。

ビエール・トンミー氏は年明けから、オープンカレッジでルーベンスについて学ぶのだ。講師は勿論、●●●子先生である。


●●●子先生の講義は、春のシリーズ、秋のシリーズについで、これで3シリーズ目である。

「まあ、貴方が昇天するのも無理はありませんね、●●●子先生って、ほんとお綺麗ですからね。素敵な先生ですものねえ」

●●●子先生を褒める特派員の言葉に、ビエール・トンミー氏は気分を良くしたのか….

「そうだ、●●●子先生はとても素敵だ。いや、綺麗だからじゃあないんだ。勉強だよ、勉強!●●●子先生の講義は凄いんだ。あんなに内容豊富で面白い授業って他にないんだ」

ビエール・トンミー氏は饒舌になった。

「来年度(4月から)は西洋美術史βをとって、再来年度はまた西洋美術史αを『再受講』してと繰り返していこうかなと考えているんだ。内容は西洋美術史だろうが、東洋美術史だろうが、アフリカ美術史だろうが、それこそ北極美術史だろうが、何でもいい

語るに落ちる、とはこのことだ。ビエール・トンミー氏は、特派員の罠に嵌ったのだ。

「あくまで勉強、勉強。決して昇天ではない」

と云うビエール・トンミー氏の目は既に昇天していた、と特派員は報告して来た。

特派員は更に付け加えた。

「トンミー氏は、その内、母校に再入学する、って云い出しかねませんよ。今度は勿論、文学部でしょう(トンミー氏は、商学部卒である)







2014年12月10日水曜日

【カメラはマズイ!】アオニヨシ君、危機一髪。



「いやあ、助かりましたあ、エヴァさん」

久々にアオニヨシ君である。

「エヴァさんには、いつも本当にお世話になっていますが、今度もエヴァさんのお陰で助かりました」

何やら、エヴァンジェリスト氏に矢鱈、感謝している。

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「はしのえみ」が近づいてきたんです。有楽町です。カメラクルーが付いていました。

『お兄さん、何をしているんですか?』

「はしのえみ」は、マイクを突き出して訊いてきました。『お兄さん』って、25歳ですよ、僕。アラフォーの「はしのえみ」に云われたくはありません。でも、答えました。

『いや、忘年会の会場の下見に行くところです』

面倒臭いんですが、柱のある会場を選ぶと怒る人がいるんです、会社に。だから、ちゃんと下見をして柱がないことを確認しなくちゃいけないんです。面倒臭いです。

いいじゃないの、愛があれば、柱があっても、って感じなんですけどね、僕的には。えっ?意味が分からないって?

私も分からないんですけど、サガラ的表現なんですって。エヴァさんに教わりました。日本エレキテル連合ではないんですって。

『本当は、サガラナオミ的って云うよりも、イワタニトキコ的なんだけどなあ』

って、エヴァさんは云ってましたけど、何のことか分りません。まあ、いいんです。エヴァさんはいつもそうなんですから。

『城みちるが、『なだや』の社長と一緒に出て来て、『ボクはイルカに乗った少年、おじさんはイリコに乗った中年』と云っていたのだ。『なだや』の安芸いりこのCMだ』


なんて、みんなが引くようなギャクにもならないようなギャグを云ってるんですからね。

『忘年会で何かイベントは企画してるの?』

はしのえみは、タメ口で訊いてきました。

『いえ、別に』

エリカ様的に答えてやりましたよ。アッタマにきたんです。一緒に忘年会の幹事をする女性たちが、イベントをやろう、って煩かったんです。「はしのえみよ」、お前もか、ですよ。

いいじゃないの、酒があれば、って感じなんですけどね、僕的には。

『本当は、いいじゃあないの幸せならば、なんだけだな』

そうらしいんですけど、エヴァさん的には。僕はまあ、どうでもいいんです。

『これ(このインタビュー)、テレビで流していい?』

「はしのえみ」がそう訊いてきたので、思わず、

『まあいいですけど…』

って答えかけてしまいました。番組は、どうやら、日テレの『お知らせパパラッチ!』のようでした。

その時、カメラがぐっと僕に近付いてきたんです。

で、ハッとしました。

『いや、ダメよ、ダメダメ!事務所を通してくれ!

思わず、エヴァさんの得意の科白(事務所を通してくれ)を口走っていました。

「はしのえみ」は、『変な奴』って目をして他に通行人に声をかけに行っちゃいました。一般人が何を偉そうに『事務所を通してくれ』だよ、って思ったようです。

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「正直、僕は、エヴァさんの『事務所を通してくれ!』を馬鹿にしていました。でも、その『事務所を通してくれ!』で僕は助かったんです」

アオニヨシ君は本気でエヴァンジェリスト氏に感謝しているようだ。

「まあ、分かればいい」

エヴァンジェリスト氏は鷹揚な態度をみせた。

「危機一髪でした」

額の汗を拭うふりをしながら、アオニヨシ君が云った。

「そうだなあ、正体がバレるところだったものなあ」

エヴァンジェリスト氏は頬に不敵な笑みを浮かべた。

「エヴァさんは何でもお見通しなんですね」

エヴァンジェリスト氏を見るアオニヨシ君の目は、尊敬の眼差しになっていた。

「ああ、まあ今後は気をつけるがいい。人間の目はごまかせても、カメラの冷徹な目はごまかせんぞ。カメラは、君の正体が『鹿』であることはお見通しなんだからな」

アオニヨシ君の独白にせよ、アオニヨシ君とエヴァンジェリスト氏との会話にせよ、マトモに聞いていると頭が痛くなってくる。







2014年12月7日日曜日

【妻の疑念】ネロは何を見て微笑んだのか、夫は何を見て微笑むのか….【ビエール・トンミー氏の優雅な老後】



「あの人ったら変だわ、今更、パトラッシュに興味を持つなんて…」

マダム・トンミーはお皿を洗いながら呟いた。

「アタシが小学5年から6年にかけて放送されたのよねえ、確か」

どうやら『フランダースの犬』のことらしい。

「感動したものだわ。ネロとパトラッシュが天使に抱えられ天に昇るところ、泣いちゃった…」

アニメの『フランダースの犬』のことだ(感動のラストシーンは、原作とは異なっているらしい)。

「でも、その頃、あの人は二十歳頃…ネロとパトラッシュを見ていたのかしら?」

そうだ、あの人、ビエール・トンミー氏は、夫人のマダム・トンミーよりも10歳年上なのだ。


「その頃は、オンナにうつつを抜かしていたって聞いたことがあるけど」

そうそう、その頃だけのことではないが、確かに二十歳頃のビエール・トンミー氏の頭の中にはオンナの子のことしかなかった。

「ネロが最後に見た絵、『キリストの昇架』について勉強したいなんて、あの人にそんな高尚な趣味あったかしら」

そんな高尚な趣味を持っている訳がない。

「まあ、いいわ。来年もオープン・カレッジに行ってもらった方が」


ビエール・トンミー氏は今度は、『キリストの昇架』を描いた画家について勉強すると云い出したのだ。

「毎日毎日、ウチにいられても鬱陶しいもの」

マダムは気付いていないのだ。ネロはキリストの昇架』を見て微笑みながら昇天したが、夫が何を見て微笑み、『昇天』しようとしているのか。







2014年12月2日火曜日

【選択】JAXAか石原プロか



「いやあ、困ったなあ」

困ったと云いながらも、エヴァンジェリスト氏は嬉しそうである。面倒くさいが、付き合ってやるか。

「一体、どうしたんですか?」
「いやな、これは絶対秘密だぞ、いいか」
「大袈裟ですね」
「まあ、国家機密と云ってもいいことだからな」
「ほおほ、それは大変ですね」

どうせ、くだらないことなのだ。

「ある筋の知合いから打診されたんだ」
「何をですか?」
「ジャクサだ」
「えっ?ジャック・ブリスコ?」
「ふざけるな!元NWA世界チャンピオンではない」
「ジャック・ブリスコは、全米カレッジレスリング選手権で優勝もしているんですよ」
「ああ、知っている。アメリカのカレッジレスリングは、普通のアマレスとは違って、総合格闘技向きとも云われるんだぞ」
「だから、地味ですが、強かったんです、ジャック・ブリスコは」
「しかし、アイツは、『全日』に遠征した際に、一週間だけジャイアント馬場にNWAのチャンピオンをプレゼントしたのが気に喰わん。まあ、『政治』上、仕方なかったのであろうが」
「で、ジャック・ブリスコに何か云われたんですか?」
「君はワシをからかっているのか?ジャック・ブリスコは、2010年に亡くなっているんだぞ」

ちっ、ばれたか。ちょっと揶揄ってみただけだ。

「JAXAだ」
「ああ、JAXAですね。ロケットの」
「宇宙航空研究開発機構だ」
「JAXAがどうしたんですか?誰に何を打診されたんですか?」
「いや、誰かは云えん。それは云えんが、JAXA入りを打診されたのだ
「ええーっ!JAXA入りですか?アナタ、宇宙飛行士にでもなるんですか?」

ああ、また妄想だ。しかし、宇宙飛行士になる、というのは、ちょっと行き過ぎだろう。

「違う、違う。『はやぶさ2』だ」
「えっ!?『はやぶさ2』って、この前の(2014年の)11月30日に予定していた打上げを明日(12月3日)の延期したっていう、あの『はやぶさ2』ですか」
「そうだ、その『はやぶさ2』だ」
「アナタ、『はやぶさ2』になるんですか?」
「タワケ!!!問題は、『はやぶさ2』の打上げ延期理由だ」
「雷を誘発する氷結層がある雲に覆われると見込れたからではないですか?」
「ほお、詳しいな。その通りだ。だから、カレは打診してきたんだ」
「カレって誰ですか?」
「だから、それは云えん、と云っただろ。国家機密と云ってもいいことだからな」
「では、そのカレは、アナタにJAXA入りして何をして欲しいんですか?」
「そこだ。そこなんだ。カレは、知っているのだ。ワシが『空を割った』ことがあるのを」
「ま、ま、まさか、あの時のことですか…」
「そう、その時のことだ」

そうなのだ。私は信じないようにしているが、エヴァンジェリスト氏は『空を割った』ことがあるのだ。

2012年2月1日の庄内空港でのことだ。

その日、暴風雪でANA893便が危うく欠航になるところを、エヴァンジェリスト氏が、「視界を開けさせてみせようぞ!」と云って念じたところ、程なくして(2、3分もしない内に)視界が開け、ANA893便は欠航を免れたのであった。


「カレは、ワシに云うのだ。『ロケットは、天候が悪いと、特に雷雲があると、いざという時にブースター分離する際の爆薬に落雷で引火するとマズイんです。だから、天候を操れる人が必要なんです』とな」
「なるほど…」

中途半端だが専門的そうで、何だか真実味がなくはない。

「で、どうするんですか?」
「だから、困っているんだ」
「だから、って?天候を操れはしないからですか?」
「なんだとお!失敬な!まき子夫人のことだ。舘(ひろし)さんのことだ」

ああ、また石原プロか。

「アナタが石原プロをなんとかしないと、このままでは孤軍奮闘の館さんが倒れてしまいかねないんですよね」
「そうなのだ。しかし、『はやぶさ2』のことも放っておく訳にはいかないからな」
「では、JAXAと石原プロを兼任すればいいではないですか」
「ばっかもーん!JAXAも石原プロも、兼任で務まるほど甘くはない!」
「では、どうするんですか?」
「ハムレットはこういう心境であったのであろうなあ。『生か死か』、いやJAXAか石原プロか』、それが問題だ

いやはや、相変らず目出度い人だ。