「昇天なんかしませんよ。あくまで勉強。勉強」
とビエール・トンミー氏は強弁する。
「ルーベンスで昇天ですか?」
と『ビエール・トンミー氏追跡特別チーム』の特派員から追求されたのだ。
「でも、ルーベンスなんて全然興味ありません。だから勉強なんです」
と意味不明の弁明をする。ルーベンスは、そう、『キリストの昇架』を描いた画家である。
ビエール・トンミー氏は年明けから、オープンカレッジでルーベンスについて学ぶのだ。講師は勿論、●●●子先生である。
●●●子先生の講義は、春のシリーズ、秋のシリーズについで、これで3シリーズ目である。
「まあ、貴方が昇天するのも無理はありませんね、●●●子先生って、ほんとお綺麗ですからね。素敵な先生ですものねえ」
●●●子先生を褒める特派員の言葉に、ビエール・トンミー氏は気分を良くしたのか….
「そうだ、●●●子先生はとても素敵だ。いや、綺麗だからじゃあないんだ。勉強だよ、勉強!●●●子先生の講義は凄いんだ。あんなに内容豊富で面白い授業って他にないんだ」
ビエール・トンミー氏は饒舌になった。
「来年度(4月から)は西洋美術史βをとって、再来年度はまた西洋美術史αを『再受講』してと繰り返していこうかなと考えているんだ。内容は西洋美術史だろうが、東洋美術史だろうが、アフリカ美術史だろうが、それこそ北極美術史だろうが、何でもいい」
語るに落ちる、とはこのことだ。ビエール・トンミー氏は、特派員の罠に嵌ったのだ。
「あくまで勉強、勉強。決して昇天ではない」
と云うビエール・トンミー氏の目は既に昇天していた、と特派員は報告して来た。
特派員は更に付け加えた。
「トンミー氏は、その内、母校に再入学する、って云い出しかねませんよ。今度は勿論、文学部でしょう(トンミー氏は、商学部卒である)」
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