「いやあ、助かりましたあ、エヴァさん」
久々にアオニヨシ君である。
「エヴァさんには、いつも本当にお世話になっていますが、今度もエヴァさんのお陰で助かりました」
何やら、エヴァンジェリスト氏に矢鱈、感謝している。
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「はしのえみ」が近づいてきたんです。有楽町です。カメラクルーが付いていました。
『お兄さん、何をしているんですか?』
「はしのえみ」は、マイクを突き出して訊いてきました。『お兄さん』って、25歳ですよ、僕。アラフォーの「はしのえみ」に云われたくはありません。でも、答えました。
『いや、忘年会の会場の下見に行くところです』
面倒臭いんですが、柱のある会場を選ぶと怒る人がいるんです、会社に。だから、ちゃんと下見をして柱がないことを確認しなくちゃいけないんです。面倒臭いです。
いいじゃないの、愛があれば、柱があっても、って感じなんですけどね、僕的には。えっ?意味が分からないって?
私も分からないんですけど、サガラ的表現なんですって。エヴァさんに教わりました。日本エレキテル連合ではないんですって。
『本当は、サガラナオミ的って云うよりも、イワタニトキコ的なんだけどなあ』
って、エヴァさんは云ってましたけど、何のことか分りません。まあ、いいんです。エヴァさんはいつもそうなんですから。
『城みちるが、『なだや』の社長と一緒に出て来て、『ボクはイルカに乗った少年、おじさんはイリコに乗った中年』と云っていたのだ。『なだや』の安芸いりこのCMだ』
なんて、みんなが引くようなギャクにもならないようなギャグを云ってるんですからね。
『忘年会で何かイベントは企画してるの?』
はしのえみは、タメ口で訊いてきました。
『いえ、別に』
エリカ様的に答えてやりましたよ。アッタマにきたんです。一緒に忘年会の幹事をする女性たちが、イベントをやろう、って煩かったんです。「はしのえみよ」、お前もか、ですよ。
いいじゃないの、酒があれば、って感じなんですけどね、僕的には。
『本当は、いいじゃあないの幸せならば、なんだけだな』
そうらしいんですけど、エヴァさん的には。僕はまあ、どうでもいいんです。
『これ(このインタビュー)、テレビで流していい?』
「はしのえみ」がそう訊いてきたので、思わず、
『まあいいですけど…』
って答えかけてしまいました。番組は、どうやら、日テレの『お知らせパパラッチ!』のようでした。
その時、カメラがぐっと僕に近付いてきたんです。
で、ハッとしました。
『いや、ダメよ、ダメダメ!事務所を通してくれ!』
思わず、エヴァさんの得意の科白(事務所を通してくれ)を口走っていました。
「はしのえみ」は、『変な奴』って目をして他に通行人に声をかけに行っちゃいました。一般人が何を偉そうに『事務所を通してくれ』だよ、って思ったようです。
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「正直、僕は、エヴァさんの『事務所を通してくれ!』を馬鹿にしていました。でも、その『事務所を通してくれ!』で僕は助かったんです」
アオニヨシ君は本気でエヴァンジェリスト氏に感謝しているようだ。
「まあ、分かればいい」
エヴァンジェリスト氏は鷹揚な態度をみせた。
「危機一髪でした」
額の汗を拭うふりをしながら、アオニヨシ君が云った。
「そうだなあ、正体がバレるところだったものなあ」
エヴァンジェリスト氏は頬に不敵な笑みを浮かべた。
「エヴァさんは何でもお見通しなんですね」
エヴァンジェリスト氏を見るアオニヨシ君の目は、尊敬の眼差しになっていた。
「ああ、まあ今後は気をつけるがいい。人間の目はごまかせても、カメラの冷徹な目はごまかせんぞ。カメラは、君の正体が『鹿』であることはお見通しなんだからな」
アオニヨシ君の独白にせよ、アオニヨシ君とエヴァンジェリスト氏との会話にせよ、マトモに聞いていると頭が痛くなってくる。
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