2014年10月17日金曜日

「ケダモノねえ」……【ある研修の夜】



「オンナを連れ込んだんだって?」

卑猥な表情を顔に浮かべながら、エヴァンジェリスト氏がアオニヨシ君に訊いた。

「連れ込んでなんかいませんよ」

先日、アオニヨシ君は、ある宿泊研修に行った。というか、上司の上司の上司の上司であるコニャニャチワ氏に命令されて行ったのだ(参照;鹿、ザ・ワイルド)。エヴァンジェリスト氏はその時のことを云っているのだ。

「あの研修所は、個室だからなあ。連れ込み放題さ」

エヴァンジェリスト氏も行ったことのある研修所であった。

「いえ、連れ込んでいませんったら」
「隠すな、隠すな」
「隠していません」
「君はまだ若くて盛んなんだろうから、いいのさ、連れ込んだって」
「だ・か・ら、連れ込んでいません!そもそも、女性は数十人の研修生の中で、二人しかいなかったんですよ」
「二人いれば十分だ。普通、連れ込むのは一人だからな。それともなにかい、二人同時に連れ込んだのか?」
「いえ、二人同時に連れ込んだりはしていません!」
「じゃあ、普通通り、一人か、連れ込んだのは」
「いえ、女性を連れ込んだりはしていませんよ!」
「ほー、じゃあ、オトコを連れ込んだかあ。まさか君にソッチの方の…」
「ソッチの方もケありません。アナタ,シツコイですね」
「そりゃそうだな、君は無類のオンナ好きだからな」
「ええ、まあ、女性は好きですねえ」
「ほー、やはりオンナを連れ込んだんだな」
「いえ、だ・か・ら…」
「連れ込んで、どうせ、云われたんだろ『アナタ、ケダモノねえ』って」
「云われてませんったら、あの晩は」
「じゃあ、どの晩に云われたのだ、『ケダモノねえ』って?」
「それはそのお…」
「どうせボクは、『鹿』ですからねえ」
「そうだなあ、人間っぽく服は着ているが、服の下は『野生』だものなあ、時に、シタの方は」(参照:鹿、ザ・バイブレーション
「まあ、それは否定は出来ませんねえ」

最初は噛み合っていなかった二人の会話が、最後は何だか意見の一致を見ていた。

二人は仲良しだ。何だか嫉妬する。







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