「あら、アナタ、素敵な匂いね。うっとりするわ」
9月29日、再開したオープンカレッジの教室で、ビエール・トンミー氏は、前の席に座ったご婦人が振り向き、声をかけてきた。
しかし、ビエール・トンミー氏は無視をした。
「でも、何かしら、この匂い……焦げた感じね」
『焦げた感じ』、それはそうだ、ビエール・トンミー氏は、『D.S.&DURGA』のフレグランス『BURNING BARBERSHOP』を身に浸けていたのだ。
「何だか変になりそうよ…ウフン」
『ちっ、勝手に変になってろ!』
不機嫌なビエール・トンミー氏は、心の中でそう呟いた。
『お前みたいな婆さんなんかの為に高いフレグランスを浸けてきたのではない』
そうだ、ビエール・トンミー氏が『BURNING BARBERSHOP』を身に浸けてきたのは、オープンカレッジの講師で、●●●子先生を魅惑する為であったのだ。
オープンカレッジの教室で一番前に座り、そこからいい匂いを漂わせて、美人の誉れ高い●●●子先生を魅惑しようという作戦だ。『このオジサマ、す・て・き!』と思わせようと考えていたのだ。
それなのに…
先ず、一番前の席が取れなかったのだ。講義が始る40分前には登校して席を確保しようとしたが、ビエール・トンミー氏以上に暇を持て余した「ご婦人方」はさらに早く登校し、一番前の席を占拠していたのである。
ビエール・トンミー氏は、二列目の席に座るしかなかった。不機嫌になった。
『これでは、折角の匂いが●●●子先生まで届かないではないか』
更に、一番前の席を占拠したご婦人の中の一人が振り向いて声をかけてきたのだ。
「あら、アナタ、素敵な匂いね。うっとりするわ」
ビエール・トンミー氏がオープンカレッジに通うようになったのは、「美熟女」目当てでもあったので、ご婦人に声をかけられたのは、目論見通りではないのか?
「何だか変になりそうよ…ウフン」
しかし、『お前みたいな婆さんなんかの為に高いフレグランスを浸けてきたのではない』、とビエール・トンミー氏の思うのも無理はなかった。
声を掛けてきたご婦人は、確かに「婆さん」であった。70歳は過ぎていたであろう。
『BURNING BARBERSHOP』で●●●子先生の代りに「婆さん」を魅惑してしまったのだ。
「授業が終ったら、お茶でもご一緒しませんこと?」
ビエール・トンミー氏は無視を続けた。
「お茶でなくってもいいわよ」
周りにも聞こえるであろうに、「婆さん」は怖いもの知らずだ。
「二人だけで静かに話せるところに行ってもいいことよ…ウフン、ほんと、いい匂い」
『ボクはヘンタイだが、そっちの趣味はない…多分』
「婆さん」の「口撃」にやや自信がなくなってきたビエール・トンミー氏であった。
……授業が終った後、「二人」がどうしかたかは定かではない。
その日から二日後(2014年10月1日)、ビエール・トンミー氏は還暦を迎えた。ビエール・トンミー氏も「爺さん」になった。
その日から二日後(2014年10月1日)、ビエール・トンミー氏は還暦を迎えた。ビエール・トンミー氏も「爺さん」になった。
おめでとう、ビエール・トンミー氏!
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