2014年10月28日火曜日

重力発見!【原点(後編)】







当時も(昭和52-53年の頃も)、エヴァンジエリスト氏は、貧乏であった。

上池袋で間借り生活をしていた。家賃は、当初、9000円、2年後に値上げされ、9500円となった。3.75畳の部屋であった。

そんな部屋にしか住むことができなかった。勿論、お金がなかったからである。



台所は共同であったが、他の間借り人(数人いた)の誰も料理はせず、お湯を沸かし、食器(といっても、せいぜいコップ程度のものであったが)を洗うだけであった。

トイレも共同であった。和式の水洗便所であったが、水タンクは天井付近にあり、そこから鎖の紐が下がっており、水を流すときはその紐を引っ張った。トイレットペーパーはなく、ちり紙が置いてあった。

便器は、入ったところより少し上にあり、小用は入ったところに立ってたすようになっていた。




が、隣室のお兄さんには困った性癖があった

下図のようにトイレのドアの外に立って、そこから小水を飛ばすのである。




これがどういう事態を引き起こすか、お判りか?

そう、小水の飛ばし始めと、飛ばし終りの時に、小水は便器の手前に落ちるのである。しかも、隣室のお兄さんは、それを拭かないのである。

隣室のお兄さんのこの性癖を知る前、エヴァンジエリスト氏は時々、トイレがやけに水浸しになっているなあ、と思いながら、濡れた床にちょっと爪先立ちで足を置き、トイレ奥に置いてあるちり紙に手を伸ばし、濡れたトイレ用の木製のサンダルと濡れたトイレの床を拭いていたのだ。

サンダルと床を濡らしているのは、水だと信じていたのだ。天井付近の水タンクから水が漏れたのだ、と。



しかし、ある日、自室の扉を開いた時、エヴァンジエリスト氏は見たのだ。エヴァンジエリスト氏の部屋からトイレがよく見えるのだ。

そう、エヴァンジエリスト氏は見たのだ。隣室のお兄さんが、トイレのドアの外に立って、そこから小水を飛ばしていたのだ。

「な、な、何をするのだ。お兄さんは、重力というものを知らないのか!」

その時、エヴァンジエリスト氏は初めて知ったのだ。トイレ用の木製のサンダルとトイレの床を濡らしていたのは、水ではなく、お兄さんのお小水であったのだ!

エヴァンジエリスト氏が拭いていたのは、隣室のお兄さんのオシッコであったのだ。



皆さん、その時のエヴァンジエリスト氏の驚愕はお判りか?

当時のエヴァンジエリスト氏は前回の写真が示す通り、まあ、天知茂や杉良太郎、田宮二郎のようになる、と云えなくはない風貌であったが(ちょっとイケメンであったかもしれない)、隣室のお兄さんのオシッコを拭かなくてはなならい貧乏生活であり、スターへの道からはかけ離れたところにいたのであった。

そして今、年老いたエヴァンジエリスト氏は、隣室のお兄さんのではなく、自分がしょぼしょぼとトイレにこぼしたオシッコを拭いている。

間借り生活からは(賃貸住まいからは)、還暦直前に逃れたが、80歳までの住宅ローンを持つ、相変らずの貧乏生活だ。


そして、スターへの道からも(石原プロからも)相変らずかけ離れたところにいるのだ。








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