2012年3月28日水曜日

【WWD】青春のハナヱモリ(その4)





「パンンツ一丁にさせられたんです」
「……っ!?」
「パンツ一丁になって、風呂みたいなところに入らされたんです…」

ヴィトン君は項垂れたまま、そう云った。

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今週(23012年3月26日の週)で終りとなる、コシノ・ヒロコ、コシノ・ジュンコ、コシノ・ミチコ三姉妹の御母堂をモデルにしたNHKの朝ドラ「カーネーション」は、最後になって(最後の月になって)主役を評判の良かった尾野真千子から夏木マリに変えたことで、また、その物語の内容や三姉妹以外の登場人物を総替えしたことで批判を浴びているようだ。

確かに、昌ちゃん(幻覺悠子)や恵さん(六角精児、つまり、『相棒』の米沢さん)がいなくなっており(死んだのか、歳で退職したのか判然としていないことでネットで少々話題にもなっているが)、また、八重子さん(田丸麻紀)もいないのは淋しい限りである。

それぞれ、主人公の糸ちゃんと同世代であり、高齢になっていたはずである。糸ちゃんは90歳以上まで生きたので、その周りはもう死んでいてもおかしくないし、実際、北村(ほっしゃん。である)達は死んだことになっている。生きていたとしても、死ぬまで現役でいた糸ちゃんの側で現役ではいられず、登場して来なくとも仕方なくはない。

唯一、幼馴染で、因縁浅からぬ奈津だけは登場させない訳にはいかず、栗山千明から江波杏子に配役を替え、以前と同じように糸ちゃんに対峙させてみてくれた。江波杏子の奈津は、その凛とした、しかし、鼻持ちならぬ役柄にはまっていたと云える。

…………エヴァンジェリスト氏も、NHKの朝ドラ「カーネーション」にファッション業界時代の自分を映し,懐かしんでいるが、「WWDジャパン」時代のエヴァンジェリスト氏は、糸ちゃんであるコシノ・アヤコの店は大阪岸和田にある為、行ったことはない。コシノ・ヒロコ、コシノ・ジュンコ、コシノ・ミチコ三姉妹の店に「営業」に行ったどうかも、覚えてはいないようだ。

そう、入社したてのエヴァンジェリスト氏は、ブティックやアパレル・メーカーを「営業」で廻らされたのである。

今は知らないが、創刊当時、「WWDジャパン」は通信販売しかしていなかった。アパレル・メーカーやテキスタイル・メーカー、繊維会社、ファッション・ブティック、その他ファッション関係者のダイレクト・メールのリストを作成し、「WWDジャパン」紙を先ず、「贈呈」として送付する。

その後、リストを見ながら、フォローの電話を入れる。購読をお願いする。こうして、お客様を獲得していったのである。勿論、ケンモホロロの扱いで電話を切られることも少なくなかった。

通信販売しかしないとはいうものの、一部書店には一種のデモンストレーションとして、販売をして頂いた。それら書店への納品はエヴァンジェリスト氏他、若手が行った。

また、入社直後は、「飛込み営業」も経験させられた。見本紙(といっても、本物であるが)を持って、原宿、青山界隈のブティックやアパレル・メーカー等を廻る

「WWDですが、購読をお願いできませんでしょうか」

しかし、「飛込み営業」で購読なんかしてもらえる訳がない。1件もお客様を得ることは出来なかった。「WWD」は間違いなく、世界的権威であるが、「WWDジャパン」紙は、日本で創刊したばかりである。まだまだ無名であるから、「飛込み営業」をするエヴァンジェリスト氏はブティックの人達から見ると、ただの怪し気な奴だったかもしれない。まあ、今でも怪しげな人ではあるが。

会社も、「飛込み営業」でお客様が獲得できることを期待していた訳ではなかったようだ。度胸をつけさせる為だったのだ。そんなやり方はエヴァンジェリスト氏の好みではないが、今からすると、「飛込み営業」も、長い営業の経験の中では一つの懐かしい思い出であるようだ。

ヴィトン君も入社したての時には、この「飛込み営業」をさせられたが、その後は、広告担当(広告取り)の営業になったのだ。

そして、その日、その「先生」のところに広告出稿のお願いに行っていたのである。

広告営業の先輩であるカリスマ氏が訊いた。

「お前、なんでアノ先生とキョーカイに行って、風呂に入ったんだ?キョーカイに風呂あんのか?」


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