2022年11月9日水曜日

【牛田デラシネ中学生】変態の作られ方[その321]

 


「『一休さん』、アタマええじゃろうがあ」


と、『ボッキ』少年は、ビエール少年に対して、不満げにそう云った。


1967年4月のある土曜日、広島市立牛田中学を出た1年X組のビエール少年と『ボッキ』少年が、『ハナタバ』少年と、後で『秘密の入口』で会おう、と別れたところであった。いつからか、ビエール少年と『ボッキ』少年の背後にいた少女『トシエ』が、『秘密』という言葉を捉え、何の『秘密』か追求していたところ、遠りがかった赤い髪の若い外国人女性が、『バド』と呼ばれているビエール少年に対して、アメリカ人なのかと訊き、ビエール少年と英語での会話を交わしたのを見て、『ボッキ』少年と少女『トシエ』が、ビエール少年の英語力に感嘆していたことから、ビエール少年が見ているというNHK教育テレビの『テレビ英語会話』話題へとなっていた。そして、更に、少女『トシエ』が、奥さんが英語喋れない訳にはいかないから、自分も『テレビ英語会話』見るようにすると云い出し、少女の妄想は、ビエール少年の妻となった自分が、『整体拝受』の際の『ホスチア』だって作るかもしれない、とまで拡がっていっていた。しかし、『ボッキ』少年が、自分はキリスト教の知識のない理由として、お経の一節、『ナ~ムア~ミダ~ンブー』を唱えたことから、広島には『浄土真宗』の家が多いらしい、とビエール少年が博識ぶりを見せ、『ボッキ』少年も『東本願寺』、『西本願寺』を持ち出しはしたものの、『浄土真宗』が『東』と『西』とに別れた事情を知らず、ビーエル少年が、元は一つの『本願寺』だった『石山本願寺』を信長が攻撃したことが原因と説明しだした。そして、その『石山本願寺』信長がなかなか攻め切れなかったのは、『毛利輝元』が『石山本願寺』に食料とか武器なんかを提供して味方したからだとも説明をしたのだ。そこで、少女『トシエ』が、『石山本願寺』にお好み焼きも差し入れしたのだろうか、と云い出し、ビエール少年はそれを否定したが、少女『トシエ』は今度は、『もみじ饅頭』を差し入れしたのだろう、と云い出しことから、話は『もみじ饅頭』という名前の謂れ(『伊藤博文』が名前のヒントを与えた)へと派生していっていた。だが、話は、『伊藤博文』が、山口県光市出身であることから、『夢の超特急』に移っていったものの、今度は、『光市』から臨海学校へと移ってきたのであった。『光市』は、当時(19060年代である)、広島の学校がよく臨海学校で行くところであったからである。そして、最初は臨海学校に興味なさげであった少女『トシエ』が、ビエール少年と(だけではないが)教室で一緒に寝ることになるであろう臨海学校に眼を輝かせ、あろうことかネグリジェを着るとまで云い出し、ビエール少年は、『かわいい魔女ジニー』の姿態を思い出し、股間に『異変」を生じさせていたが、『ボッキ』少年の言葉で、どうにか『本願寺』が『東』と『西』とに別れた事情へと話は戻り、晩年、『浄土真宗』に改宗した『一休さん』の明晰さを『ボッキ』少年は主張したが、その主張にビエール少年が勿体をつけてきたのだ。


「うん、アタマ良かったんだろうとは思うけど、『屏風の虎』についてはね。ボクが殿様だったら、『屏風から出てきたら危ないから、出てくる前にちゃんと捕まえろ』って云うけどなあ」


ビエール少年は、冷静に自分の考えを主張した。


「うわあ、やっぱり、『バド』の方が『一休さん』よりもっとアタマええねえ!」


少女『トシエ』は、顎を前に突き出すようにビエール少年を凝視める。


「いや、そんなことはないよ。でも、『一休さん』は確かにアタマのいい、立派なお坊さんだったんだろうと思うんだけど、元々は禅僧で、つまり『禅宗』だったのに、歳をとってから『浄土真宗』に改宗したんだって。『蓮如』の影響を受けたんだと思うよ。『蓮如』の方が、『一休さん』より19歳も若かったらしいんだけど」

「へええ、『一休さん』もウチらと同じ『浄土シンシュー』なんねえ!」

「で、『一休さん』の影響を与えた『蓮如』の子孫に、『顕如』というお坊さんがいたんだけど、その『顕如』の頃に、『信長』が『石山本願寺』を攻めてきたんだよ。でも、さっき話したように、戦いが長引いて、『信長』は、正親(おかちまち)天皇に仲裁を頼んで、『石山本願寺』に和睦を求めたんだけど、その時に、『一文字呉器』を『石山本願寺』に渡したんだって」

「え!ひゃーあーっ!『ゴキ』いー!」


突然、少女『トシエ』が叫び声を上げ、ビエール少年に抱きついて来た。


「えっ!」


何が起きたのか分らず、ビエール少年は、小さな声を上げただけであった。


「んもー、嫌じゃあ!」


少女『トシエ』は、ビエール少年に抱きついたまま、身を左右に捩った。


「(へ?!...んぐっ!)」


ビエール少年は、分らなかった。何故か少女『トシエ』が叫びながら自分に抱きついてきて、そのまま体を左右に揺らせたことは、分っていたが、それでどうして、自分の体のある部分に『異変』が生じたのかは、分らなかった。


「んん?」


少女『トシエ』も、分らなかった。少し膨らんできていた自分の柔らかな胸が、ビエール少年の胸で潰れている一方で、体の下の方に突き刺さるように当っている硬いものが何であるのか、分らなかった。


「ど、ど、どうしたの?」


ビエール少年は、少女『トシエ』の体を、両手で肩を優しく押して離し、少女『トシエ』に抱きつかれた際に、体の横に移動していいた学生鞄を再び、自らの股間に当てた。


「なんでじゃないよねえ。『バド』いうたら、『ゴキ』云うんじゃけえ」

「え?『呉器』って云っちゃいけないの?」

「ウチ、『ゴキブリ』大嫌いじゃけえ」




(続く)




0 件のコメント:

コメントを投稿