2022年11月7日月曜日

【牛田デラシネ中学生】変態の作られ方[その319]

 


「ネグリジェって、透けてるの?」


と、ビエール少年は、少女『トシエ』に思わず訊いてしまった。


1967年4月のある土曜日、広島市立牛田中学を出た1年X組のビエール少年と『ボッキ』少年が、『ハナタバ』少年と、後で『秘密の入口』で会おう、と別れたところであった。いつからか、ビエール少年と『ボッキ』少年の背後にいた少女『トシエ』が、『秘密』という言葉を捉え、何の『秘密』か追求していたところ、遠りがかった赤い髪の若い外国人女性が、『バド』と呼ばれているビエール少年に対して、アメリカ人なのかと訊き、ビエール少年と英語での会話を交わしたのを見て、『ボッキ』少年と少女『トシエ』が、ビエール少年の英語力に感嘆していたことから、ビエール少年が見ているというNHK教育テレビの『テレビ英語会話』話題へとなっていた。そして、更に、少女『トシエ』が、奥さんが英語喋れない訳にはいかないから、自分も『テレビ英語会話』見るようにすると云い出し、少女の妄想は、ビエール少年の妻となった自分が、『整体拝受』の際の『ホスチア』だって作るかもしれない、とまで拡がっていっていた。しかし、『ボッキ』少年が、自分はキリスト教の知識のない理由として、お経の一節、『ナ~ムア~ミダ~ンブー』を唱えたことから、広島には『浄土真宗』の家が多いらしい、とビエール少年が博識ぶりを見せ、『ボッキ』少年も『東本願寺』、『西本願寺』を持ち出しはしたものの、『浄土真宗』が『東』と『西』とに別れた事情を知らず、ビーエル少年が、元は一つの『本願寺』だった『石山本願寺』を信長が攻撃したことが原因と説明しだした。そして、その『石山本願寺』信長がなかなか攻め切れなかったのは、『毛利輝元』が『石山本願寺』に食料とか武器なんかを提供して味方したからだとも説明をしたのだ。そこで、少女『トシエ』が、『石山本願寺』にお好み焼きも差し入れしたのだろうか、と云い出し、ビエール少年はそれを否定したが、少女『トシエ』は今度は、『もみじ饅頭』を差し入れしたのだろう、と云い出しことから、話は『もみじ饅頭』という名前の謂れ(『伊藤博文』が名前のヒントを与えた)へと派生していっていた。だが、話は、『伊藤博文』が、山口県光市出身であることから、『夢の超特急』に移っていったものの、今度は、『光市』から臨海学校へと移ってきたのであった。『光市』は、当時(19060年代である)、広島の学校がよく臨海学校で行くところであったからである。そして、最初は臨海学校に興味なさげであった少女『トシエ』が、ビエール少年と(だけではないが)教室で一緒に寝ることになるであろう臨海学校に眼を輝かせ、あろうことかネグリジェを着るとまで云い出していたのだ。


「ほうよ、透けとるんよ」

「なんかスカーフみたいなの?」


ビエール少年の口は、勝手に次の質問を吐き出した。


「んんん…スカーフじゃあないけど、スカーフみたいな生地かもしれんねえ」

「赤いの?」

「なんねえ、『バド』いうたら、ネグリジェ知っとるんじゃね」

「いや、知らないんだけど…」


と、言葉を濁すビエール少年の脳裏には、『かわいい魔女ジニー』のおへそとその周りを赤、ピンクな布がヒラヒラする様が巡り……



(参照:【ゲス児童】『くしゃれ緑』な『ウンギリギッキ』(その18)[M-Files No.5 ]



「(んぐっ!)」


ビエール少年は、慌てて体の前に持っていっていた学生鞄を強く強く股間に押し付けた。


「ううん?どしたん?」


『女』になり始めていた中学一年の少女『トシエ』は、本能的に『何か』を察知し、ビエール少年の学生鞄に隠れたその背後のモノへと目を向けた。


「あ、いや…」

「んふっ。『バド』いうたら、赤いネグリジェが好きなんじゃね。ええよ、着たげるう」


少女『トシエ』は、本人も知らない内に、踊る『かわいい魔女ジニー』のように体をクネらせた。


(んぐっ!)...いや、ん、そのお….あ、そうだ!浄土真宗では、赤い蝋燭を使うんだって」


浄土真宗では、『東』と『西』とで使う法事のタイミングに違いはあるものの、赤い蝋燭(朱蝋燭ではあるが)を使う、と父親から聞いたことをなんとか思い出した。




(続く)




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