2022年11月15日火曜日

【牛田デラシネ中学生】変態の作られ方[その327]

 


「いや、ボク、ドイツ語もそんなに知らないよ」


と、ビエール少年は、今度は、動揺を見せぬ冷静な言葉を少女『トシエ』に返した。


1967年4月のある土曜日、広島市立牛田中学を出た1年X組のビエール少年と『ボッキ』少年が、『ハナタバ』少年と、後で『秘密の入口』で会おう、と別れたところであった。いつからか、ビエール少年と『ボッキ』少年の背後にいた少女『トシエ』が、『秘密』という言葉を捉え、何の『秘密』か追求していたところ、遠りがかった赤い髪の若い外国人女性が、『バド』と呼ばれているビエール少年に対して、アメリカ人なのかと訊き、ビエール少年と英語での会話を交わしたのを見て、『ボッキ』少年と少女『トシエ』が、ビエール少年の英語力に感嘆していたことから、ビエール少年が見ているというNHK教育テレビの『テレビ英語会話』話題へとなっていた。そして、更に、少女『トシエ』が、奥さんが英語喋れない訳にはいかないから、自分も『テレビ英語会話』見るようにすると云い出し、少女の妄想は、ビエール少年の妻となった自分が、『整体拝受』の際の『ホスチア』だって作るかもしれない、とまで拡がっていっていた。しかし、『ボッキ』少年が、自分はキリスト教の知識のない理由として、お経の一節、『ナ~ムア~ミダ~ンブー』を唱えたことから、広島には『浄土真宗』の家が多いらしい、とビエール少年が博識ぶりを見せ、『ボッキ』少年も『東本願寺』、『西本願寺』を持ち出しはしたものの、『浄土真宗』が『東』と『西』とに別れた事情を知らず、ビーエル少年が、元は一つの『本願寺』だった『石山本願寺』を信長が攻撃したことが原因と説明しだした。そして、その『石山本願寺』信長がなかなか攻め切れなかったのは、『毛利輝元』が『石山本願寺』に食料とか武器なんかを提供して味方したからだとも説明をしたのだ。そこで、少女『トシエ』が、『石山本願寺』にお好み焼きも差し入れしたのだろうか、と云い出し、ビエール少年はそれを否定したが、少女『トシエ』は今度は、『もみじ饅頭』を差し入れしたのだろう、と云い出しことから、話は『もみじ饅頭』という名前の謂れ(『伊藤博文』が名前のヒントを与えた)へと派生していっていた。だが、話は、『伊藤博文』が、山口県光市出身であることから、『夢の超特急』に移っていったものの、今度は、『光市』から臨海学校へと移ってきたのであった。『光市』は、当時(19060年代である)、広島の学校がよく臨海学校で行くところであったからである。そして、最初は臨海学校に興味なさげであった少女『トシエ』が、ビエール少年と(だけではないが)教室で一緒に寝ることになるであろう臨海学校に眼を輝かせ、あろうことかネグリジェを着るとまで云い出し、ビエール少年は、『かわいい魔女ジニー』の姿態を思い出し、股間に『異変」を生じさせていたが、『ボッキ』少年の言葉で、どうにか『本願寺』が『東』と『西』とに別れた事情へと話は戻ったのではあった。だが、『浄土真宗』を広めた『親鸞』の子孫『蓮如』の関連して、晩年、『浄土真宗』に改宗した『一休さん』へとまたまた話は逸れたが、ビエール少年は、なんとかまた『本願寺』が『東』と『西』とに別れた事情へと話は戻し、『信長』が和睦の為、『本願寺』に渡した『一文字呉器』に言及したところ、少女『トシエ』は、『呉器』を『ゴキブリ』と勘違いし、『ボッキ』少年は、『一文』から『ジャイアント馬場』の『十六文キック』の言及してきたので、ビエール少年は、あらためて『一文字呉器』を解説したが、『ボッキ」少年がなかなか理解できないでいる様子である一方、少女『トシエ』は、『ジャイアント馬場』の『十六文』は、実は『文』ではなくアメリカの靴のサイズに由来するというビエール少年の説明を理解していることを自慢し、更に、ビエール少年がアメリカの靴のサイズのことまで知っていることまで自慢げに云い、アメリカで靴を買う時にはビエール少年に付き添って欲しいと云出だし、その際には『ガラスの靴』を買うと云ったことから、話は、今度は、『シンデレラ』に及び、ビエール少年は、『シンデレラ』があだ名であり、その名前の由来について言及していたところ、少女『トシエ』がいきなり、「ひゃああ!『バド』いうたらあ!」と叫び声を上げた。そして、『シンデレラ』からさらに派生してドイツの国鉄の名前を出したところ、少女『トシエ』がまた、「ひゃああ!『バド』いうたらあ!」と叫び声を上げたのであった。


「あ、でもね。『シンデレラ』は、ドイツ語では、『アッシェンプッテル』っていうようなんだけど、ドイツ語では『灰』のことを『アッシュ』っていうそうなんだ」


と、ビエール少年が、『シンデレラ』のドイツ語での解説をすると、


「『バド』いうたらあ、やっぱり、ドイツ語もようできるんじゃないねえ!」


少女『トシエ』は、あらためて叫び声を上げたが、ビエール少年は、構わず、『シンデレラ』の名前の由来を解説した。


「『アッシェンプッテル(Aschenputtel)』って、『灰』の『アッシュ(asche)』に、『プッテル(puttel)』っていう女の子を意味する言葉を付けたとも云われているらしいんだ。フランス語での『サンドゥリオン(cendrillon)』も『灰(cendre)』の後に、『イオン(illon)』っていう小さいものを意味する言葉を付けてるみたいだから、やっぱり女の子みたいな感じかな。英語の『シンデレラ(cinderella)』の最後に付く『エラ(ella)』も小さいものを意味する言葉らしくて、おんなじだね」

「よう分らんけど、可愛い女の子なんじゃね。じゃあ、ウチのこと、『トシッテル』とか『トシオン』とか『トシテラ』いうて呼んでもええよ」


と、少女『トシエ』は、ビエール少年の学生服の袖を掴んで左右に揺すってきた。




「(んぐっ!)」


ビエール少年は、慌てて、また学生鞄を体の前に持ってきた。


少女『トシエ』自身の頭の左右に揺れ、靡く髪の香が、ビエール少年を襲い、その香が、少年の鼻腔を通って下半身をも襲ってきたのであった。


「『トシッテル』とか『トシオン』とか『トシテラ』いうん、あんまり可愛ゆうないでえ。それより、なんとか『ゴキ』で、なんで『本願寺』が『東』と『西』に別れたんやあ?」


と、『ボッキ』少年の冷静な言葉が、ビエール少年の下半身を救った。


「ああ、そうだったね、『本願寺』だね」

「なにが可愛ゆうないんねえ!」


と、少女『トシエ』は、頬を膨らませたが、『ボッキ』少年は、言葉を続けた。



(続く)




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