2022年11月10日木曜日

【牛田デラシネ中学生】変態の作られ方[その322]

 


「え?『ゴキブリ』?」


と、ビエール少年は、少女『トシエ』からの言葉を、意外の感を隠さず、繰り返した。


1967年4月のある土曜日、広島市立牛田中学を出た1年X組のビエール少年と『ボッキ』少年が、『ハナタバ』少年と、後で『秘密の入口』で会おう、と別れたところであった。いつからか、ビエール少年と『ボッキ』少年の背後にいた少女『トシエ』が、『秘密』という言葉を捉え、何の『秘密』か追求していたところ、遠りがかった赤い髪の若い外国人女性が、『バド』と呼ばれているビエール少年に対して、アメリカ人なのかと訊き、ビエール少年と英語での会話を交わしたのを見て、『ボッキ』少年と少女『トシエ』が、ビエール少年の英語力に感嘆していたことから、ビエール少年が見ているというNHK教育テレビの『テレビ英語会話』話題へとなっていた。そして、更に、少女『トシエ』が、奥さんが英語喋れない訳にはいかないから、自分も『テレビ英語会話』見るようにすると云い出し、少女の妄想は、ビエール少年の妻となった自分が、『整体拝受』の際の『ホスチア』だって作るかもしれない、とまで拡がっていっていた。しかし、『ボッキ』少年が、自分はキリスト教の知識のない理由として、お経の一節、『ナ~ムア~ミダ~ンブー』を唱えたことから、広島には『浄土真宗』の家が多いらしい、とビエール少年が博識ぶりを見せ、『ボッキ』少年も『東本願寺』、『西本願寺』を持ち出しはしたものの、『浄土真宗』が『東』と『西』とに別れた事情を知らず、ビーエル少年が、元は一つの『本願寺』だった『石山本願寺』を信長が攻撃したことが原因と説明しだした。そして、その『石山本願寺』信長がなかなか攻め切れなかったのは、『毛利輝元』が『石山本願寺』に食料とか武器なんかを提供して味方したからだとも説明をしたのだ。そこで、少女『トシエ』が、『石山本願寺』にお好み焼きも差し入れしたのだろうか、と云い出し、ビエール少年はそれを否定したが、少女『トシエ』は今度は、『もみじ饅頭』を差し入れしたのだろう、と云い出しことから、話は『もみじ饅頭』という名前の謂れ(『伊藤博文』が名前のヒントを与えた)へと派生していっていた。だが、話は、『伊藤博文』が、山口県光市出身であることから、『夢の超特急』に移っていったものの、今度は、『光市』から臨海学校へと移ってきたのであった。『光市』は、当時(19060年代である)、広島の学校がよく臨海学校で行くところであったからである。そして、最初は臨海学校に興味なさげであった少女『トシエ』が、ビエール少年と(だけではないが)教室で一緒に寝ることになるであろう臨海学校に眼を輝かせ、あろうことかネグリジェを着るとまで云い出し、ビエール少年は、『かわいい魔女ジニー』の姿態を思い出し、股間に『異変」を生じさせていたが、『ボッキ』少年の言葉で、どうにか『本願寺』が『東』と『西』とに別れた事情へと話は戻ったのではあった。だが、『浄土真宗』を広めた『親鸞』の子孫『蓮如』の関連して、晩年、『浄土真宗』に改宗した『一休さん』へとまたまた話は逸れたが、ビエール少年は、なんとかまた『本願寺』が『東』と『西』とに別れた事情へと話は戻し、『信長』が和睦の為、『本願寺』に渡した『一文字呉器』に言及したところ、少女『トシエ』は、『ゴキブリ』は嫌いだと云い出したのだ。


「大きい『ゴキブリ』じゃったんじゃろう、『一文』じゃけえ」


『ボッキ』少年も、『呉器』を『ゴキブリ』と勘違いし、更には、『一文字呉器』の『一文字』を『一文』という大きさと思ってしまっていた。


「は?」

「『一文』いうことは、『十六文』の十六分の一じゃろ?」

「は?はは?」

「『十六文』いうたら何センチか知らんけど、『馬場』の足の大きさじゃけえ、かなり大きいんじゃろ。その十六分の一なんじゃけえ、『信長』が『本願寺』に渡した『ゴキブリ』も相当大きかったんじゃろ」

「『馬場』?」

「『馬場』知らんのん?『ジャイアント馬場』よお」

「ああ、プロレスのね。だけど、『ジャイアント馬場』の足の大きさは、『十六文』ではないみたいだよ」

「何云うとん!?『馬場』の『十六文キック』知らんのん?」




「ああ、聞いたことはるけど」

「『馬場』の足が『十六文』じゃけえ、『十六文キック』いうんでえ」

「ああ、皆んなそう思ってるらしいんだけど、『ジャイアント馬場』の足の大きさは、『十六文』ではなく、アメリカにいた時に買った靴のサイズが『16』だったのを、日本人の新聞記者が間違って『十六文』と書いたかららしいよ」


当時も(1967年である)今も(2022年である)プロレスに興味のないビエール少年であるが、博識であった父親から『ジャイアント馬場』の『十六文』の謂れを聞いたことがあったのである。


「ええ?ほ、ほ、ほうなんかあ…?」


『ボッキ』少年は、自分の好きなプロレスでもビエール少年の方が詳しいことに顔を苦くした。



(続く)




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