1965年12月、広島市の宇品線の『下大河駅』に近い家の2階の部屋で、小学5年生の少年が忘我の状態にいた。
『広島市立皆実小学校』5年4組の同級生である『帰国子女』子ちゃんが自宅で開いたクリスマス・パーティに誘われたエヴァンジェリスト君である。
自分だけが誘われたと勝手に思っていたが、クリスマス・パーティには、他の子たち)男の子2人と女の子1人)も来ていた。
女の子はともかく、どうして、数いる同級生の中で、そこにいる男の子2人が招待されたのだろうか。
しかし、そんなことは直ぐにどうでもよくなっていた。エヴァンジェリスト君は、『帰国子女』子ちゃんの姿に目も心も奪われていた。
『帰国子女』子ちゃんは、薄いピンクの服を着、そして、頭に花の『カチューシャ』を付けていた。
他の同級生たちは、『帰国子女』子ちゃんの部屋で何かを触りながら、何かを云っていたが、その時、エヴァンジェリスト君は、自分と『帰国子女』子ちゃんとの『二人の世界』に入ってしまっていた。
『帰国子女』子ちゃん宅でのクリスマス・バーティーが、どんなものであったのか、エヴァンジェリスト氏の記憶は定かではない。
トランプでババ抜きをしたような気はするが、神経衰弱であったかもしれない。
『帰国子女』子ちゃんのお母さんが、オレンジ・ジュースとショート・ケーキを持って来てくれたように思うが、グレープ・ジュースとチョコレート・ケーキであったかもしれない。
何しろエヴァンジェリスト君は、ただただ『帰国子女』子ちゃんに見とれていたのだ。
自分が来た後も、もう二人同級生(女の子だ)が来たことにも気付かなかった。クラスの他の女の子なんてどうでもよかった。
ただ覚えているのは、『帰国子女』子ちゃんが本棚から英語の本を取り出して来て、それを読んだことだ。
英語の本といっても、絵本に近いような本であったとは思う。とにかく英語の本ではあった。
そして、その本を『帰国子女』子ちゃんは流暢な英語で読み上げたのだ。尤も、当時、エヴァンジェリスト君は英語を全く知らなかったので、本当に『帰国子女』子ちゃんが英語を流暢に読み上げたかどうかは、実のところは確かではない。
しかし、『帰国子女』子ちゃんが、英語らしきものを淀みなく喋ったことは間違いなかった。
エヴァンジェリスト君は、感動した。ただただ感動した。同い年の子が英語を喋っている。それも、憧れの『帰国子女』子ちゃんが喋っているのだ。
『帰国子女』子ちゃんが別世界の存在のように思えた。
しかし、その一方、『帰国子女』子ちゃんの英語を聞きながら、エヴァンジェリスト君は妄想した。
『帰国子女』子ちゃんと結婚し、子どもが出来たら、その子は帰国子女子ちゃんのように英語を喋るようになるのだろう、と妄想した。
………その頃、ビエール・トンミー君は、ある疑問を持つようになっていた。
アメリカのコメディー・ドラマ『かわいい魔女ジニー』を見ると、何故、股間に『異変』が生じるのであるのか、と。
ジニーの着ている赤い服は、なんだか布が少なかった。服が、胸のあたりと腰のあたりとに二つに分れ、ジニーは、おヘソを出していた。
ジニーのヘソを見ると、当時、始っていた『コルゲンコーワ』のコマーシャルをもじって、
「おめえ、ヘソあるじゃねーか」
と云いたくなった。
しかし、ヘソの下、ジニーが腰から下に履いている淡いピンクのスケスケなズボンのようなものが揺らめくのに目が行った。薄く透けたスカーフのようなものを腰にまとった、といった方がいいかもしれない。
「寒くないのか?」
と思ったが、何故か、股間に『異変』が生じていたのだ。
(続く)
0 件のコメント:
コメントを投稿