2017年10月24日火曜日

【ゲス児童】『くしゃれ緑』な『ウンギリギッキ』(その25)[M-Files No.5 ]



1966年の4月、『広島市立皆実小学校』から下校する『トウキョウ』子さんの後20m程のところを、俯き加減で、しかし、上目遣いで歩く男の子がいた。

整った顔立ちの男子児童であった。






そう、今で云う『イケメン』な男の子は、エヴァンジェリスト君であった。

Déjà vu(デジャヴュ)な光景である。

今度の対象は、『赤毛のアン』の『アン』のような女の子ではなく、楚々とした和風美少女、というよりも和風美人ではあったが、エヴァンジェリスト君が、その和風美人『トウキョウ』子さんの後を付けていた。

二人は、『皆実小学校』の6年10組の同級生であった。クラス替えがあったばかりなので、なりたての同級生であった。

5年4組の時、妄想の中で『妻』としていた『帰国子女』子ちゃんとクラス替えで離れ離れになって(『結婚生活』が破綻して)間もないというのに、エヴァンジェリスト君は、もう新たな妄想を創り上げようとしていた。

『東京』の『川崎』というところから転校してきた『トウキョウ』子さんを高嶺の花のように思いながらも、またもやエヴァンジェリスト君は、恋の相手の自宅を突き止めないと気が済まなかったのだ。『トウキョウ』子さんを新たな『妻』としたかったのだ。

『トウキョウ』子さんの自宅は、『帰国子女』子ちゃんの時よりも容易に知ることができた。

『トウキョウ』子さんの自宅は、皆実町にあり、『皆実小学校』から数分のところにあったのだ。

通学路から、ある路地を入ったところであった。

路地は、少し行くと行止りであり、『トウキョウ』子さんが入って行く家は、その前まで行かずとも、通学路から直ぐそこに見えたのだ。

エヴァンジェリスト君は、徐々に『トウキョウ』子さんとの『結婚生活』に入ろうとしていた。

今度の『結婚生活』は、広島ではなく、『東京』で送ろうとした。

『東京』がとんなところかも分からなかっが、『妻』は馴染みのある地の方が安心して『結婚生活』が送れるであろうと、思い遣ったのだ。

心優しい『夫』である。

そして、これから始める『結婚生活』の実態もまた、『帰国子女』子ちゃんの時と同じで、純なものであった。

『結婚』しているのに、手も握らないのだ。小学生6年のエヴァンジェリスト君にとって、『結婚』とは、好き合った男女が一緒に暮らす、ただそれだけのものであったのだ。

しかし、その小学生らしい妄想を打ち砕く奴がいた。

春の遠足であった……….




………もう一人、山口県宇部市にも、純な小学6年生がいた。

『琴芝小学校』のビエール・トンミー君は、5年生の終わりの頃に発見した『うつぶせ寝』にはまり、彼の股間には、少しずつ、ほんの少しずつではあるが、異臭が溜まり始める程になっていた。

後に、『変態の神』と呼ばれるまでになる萌芽がそこに見ることができたのだ。

しかし、彼はまだまだ純であった。

「お兄ちゃん」

同じ部屋を使う2歳下の妹が声を掛けてきた。妹とは仲が良かった。

仲が良かったので、後年、兄に頼まれ、兄の友人(誰かは、お判りであろう)の為に、ある女優を装った手紙を書くという犯罪的行為に手を染めることになるのだ(犯罪的ではあるが、犯罪ではない)。

「クラスの子がねええ……ふふ」

妹は、なんだか嬉ししそうだ。

「はあ?」

勉強しながら手を股間に置いていたビエール・トンミー君は、気のない返事をした。

「クラスの子がねええ、お兄ちゃんのこと、『素敵』、だって。ふふ」

妹は、兄のことが自慢であった。勉強もよくできた。学年でトップであった。背も高く、妹の目から見ても『ハンサム』であった。

「はあ.....」

ビエール・トンミー君は、妹の話を聞いているのかいないのか、判然としなかった。股間に手が置かれたままであることだけは確かであった。

「お兄ちゃんに、鼻に指を当てて『幸せだなあ….』と云って欲しいんだって。ふふ」

前年(1965年)の暮れに発売された歌『君といつまでも』を唄う時、間奏の部分で、加山雄三は、鼻に指を当てて擦りながら、『幸せだなあ….』と云った。

それが流行していたのだ。

「はあ.....」

妹から、後輩の女子児童が自分に憧れている、と聞いても、ビエール・トンミー君は、全く関心がないようであった。

彼は、まだ純であったのだ。

女の子に興味はなかった。と云っても、男子に関心がある訳でもなかった。

まだ、『恋』するという感覚が彼にはなかった。

「お兄ちゃん、加山雄三みたいに、鼻に指を当てて『幸せだなあ….』と云ってみたら?」



と、妹に促されたが、ビエール・トンミー君は、

「はあ.....」

と、息を漏らしただけで、鼻に指を当ててこすることはしなかった。彼の指は、妹に悟られぬよう、微かに股間を擦っていた。


(続く)



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