2017年10月21日土曜日

【ゲス児童】『くしゃれ緑』な『ウンギリギッキ』(その22)[M-Files No.5 ]



「皆さんに、お知らせがあります.......」

担任の先生は、そう切り出した。

1966年3月、修了式の日の『広島市立皆実小学校』の5年4組である。エヴァンジェリスト君と『帰国子女』子ちゃんのクラスだ。






「皆さんに、お知らせがあります.......」

担任の先生がそう切り出した時、エヴァンジェリスト君はまだ酩酊状態であった。

前年(1965年)の12月、『帰国子女』子ちゃんに招待されたクリスマス・パーティーで、花のカチューシャをつけた『帰国子女』子ちゃんが放った香りに、エヴァンジェリスト君は、酔ってしまった。

その酔いは、冬休みに入り、年の瀬を超え、新年を迎え、更に、三学期に入っても、覚めることはなかったのだ。

修了式の日も、教室の後方席に座るエヴァンジェリスト君は、前の方の席に座る『帰国子女』子ちゃんに見とれており、担任の先生の言葉は耳に入ってはいたが、聞いてはいなかった。

「大変残念なんですが.....」

担任の先生の次の言葉でようやく、エヴァンジェリスト君は、担任の先生が何か大事なことを云おうとしていることを理解した。

「このクラスは、今日で最後です」

先生は何を云い出すのだ。そりゃ、今日は修了式の日、つまり学年最後の日なんだから、5年4組としては最後の日ではある。4月からは6年4組になるだけだ。

しかし、担任の先生の言葉は、文字通りの意味であったのだ。

そして、先生は、『今日で最後』の意味を説明し出した。

4月からは、この学年は9クラスから10クラスになることになった、というのだ。

それはつまり、クラス替えがある、ということであった。

要は、エヴァンジェリスト君の学年の児童数が増えたので、それまでの9クラスでは、1クラスの規定児童数を超えることになってしまったのである。

そこで、1クラス増やすことになり、必然的にクラス替えをすることになったのだ。

『広島市立皆実小学校』では、通常、1年から2年、3年から4年、5年から6年は、クラスは持ち上りで、クラス替えはない。

しかし、その年(1966年)、エヴァンジェリスト君の学年は、5年から6年になるにあたり、クラス替えすることになったのだ。

エヴァンジェリスト君は、動揺した。

クラスの他の子たちも動揺し、教室中が騒ついた。

しかし多分、エヴァンジェリスト君の動揺とクラスの他の子たちの動揺とは、種類が違っていた。

クラスの他の子たちは、5年4組で親しくなった友だちと別れ別れになるかもしれないことが悲しかったのだ。

しかし、エヴァンジェリスト君の懸念は、それとは違った。

『帰国子女』子ちゃんと別れ別れになることが、悲しかったのか?

そうと云えばそうであったが、それではクラスの他の子たちの感傷と大差はない。

心の底にあるものが、友情であるのか、恋心であるのかの差はあるとしても。

だが、エヴァンジェリスト君の想いは、そんな軽いものではなかった。

「ボクたちの『結婚』はどうなるのだ?」


……….1965年3月、山口県宇部市も、もう春休みに入ろうとしていたが、気を緩めず、勉強をしていた少女がいた。

「お兄ちゃん」

その子は、自宅の同じ部屋にいた2歳上の兄に声を掛けた。

「あ、あ、あ……..」

それまで、ベッドでうつぶせ寝をしていた兄が、そのままの姿勢で顔を向け、返事というか、唸り声を上げた。

「算数、教えて」

起してしまって悪かったかな、とは思いつつも、少女は、算数で疑問なところを確認したい気持ちの方が強かった。

それに、まだ眠る時間ではなかった。

「あ、あ、あ……..いいよ」

と返事はしたものの、兄はどうしたのか、股間を抑えたまま、なかなか起き上がろうとしなかった。

「お兄ちゃん、どうしたの?」
「あ、あ、なんでもないよ….」

と、何故か、股間を抑えたまま、ようやく体を起こしてきた兄に妹は質問をした。

「この問題なんだけど、『鶏の卵が7個ありました。それを…..』」

妹が問題を読み上げると、兄は、妹には聞こえないほどのものであったが、

「うっ」

と呻き声をあげた。『鶏』という言葉に、股間が『反応』したのだ。体を起こしてなんとかおさまったと思った股間の『異変』が再び、生じたのだ。




『鶏』という言葉から、うつぶせ寝の状態での妄想を思い出したのだ。

『鶏』、『白いパンツ』、『透けた白いスカーフをまとったような若い女性の下半身』……..

そう、兄は、ビエール・トンミー君であった。


(続く)



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