2017年10月15日日曜日

【ゲス児童】『くしゃれ緑』な『ウンギリギッキ』(その17)[M-Files No.5 ]



「2階よ」

と、『帰国子女』子ちゃんのお母さんに促され、エヴァンジェリスト君は、『『帰国子女』子ちゃんの家の玄関を上がった削ぐ横にある階段を上って行った。

その前を『帰国子女』子ちゃんのお母さんが、上った。

エヴァンジェリスト君の目の前を、『帰国子女』子ちゃんのお母さんの白いふくらはぎが二つ交互に動き、そのふくらはぎの上でスカートが揺らめていた。揺らめくスカートは、なんだかいい匂いまでしていた。

「誰だ?3人って?」

『帰国子女』子ちゃんが、自宅のクリスマス・パーティに誘ったのが自分だけではなかった。

「もう3人おみえよ」

『帰国子女』子ちゃんのお母さんは、そう云ったのだ。自分以外の誰が、招待されたのか…….

頭の中はその想いしかなく、エヴァンジェリスト君は、『帰国子女』子ちゃんのお母さんが無意識の内に見せていたエロチックな光景も眼中にはなかった。

当時(1965年である)、既に『鶏小屋』で『変態』の萌芽を見せていたビエール・トンミー君と異なり、『帰国子女』子ちゃんのお母さんエロスにも、エヴァンジェリスト君の股間に『異変』は生じなかった。







『帰国子女』子ちゃんのお母さんとエヴァンジェリスト君は、2階に上った。

そして、玄関側の道路に面した部屋まで進んだ。そこが、『帰国子女』子ちゃんの部屋であったのだ。

エヴァンジェリスト君は、下校する『帰国子女』子ちゃんの後をつけた日、『帰国子女』子ちゃんの家の前の狭い道路の反対側にある電信柱に身を隠し、『帰国子女』子ちゃんの家の2階を見上げた。『帰国子女』子ちゃんの部屋は、2階にあるような気がしたのだ。

その直感は当っていたのだ。




『帰国子女』子ちゃんの部屋から、複数の人間の笑い声が聞こえてきた。

しかし、『帰国子女』子ちゃんのお母さんが、部屋の扉を開けると、笑い声が止んだ。

「エヴァンジェリスト君よ」

『帰国子女』子ちゃんのお母さんが、部屋の中に声をかけた。

「いらっしゃーい!」

陽気な『帰国子女』子ちゃんの声が、エヴァンジェリスト君を迎えた。

「メリー・クリスマス!」

続けて、男女入り混じった声がした。招待された他の子たちであろう。

その声に、エヴァンジェリスト君も、

「メリー・クリスマス!」

と応えた。

『広島市立皆実小学校』5年4組の同級生たちがいた。男の子2人と女の子1人であった。

女の子は、『帰国子女』子ちゃんの友だちであったから、彼女がそこにいることに不思議はなかった。

しかし、どうして、数いる同級生の中で、そこにいる男の子2人が招待されたのだろうか、と思ったが、その思いは直ぐに失せた。

『帰国子女』子ちゃんの姿に目を奪われたのだ。

『帰国子女』子ちゃんは、薄いピンクの服を着、そして、頭に何か付けていた。

交互に白い花とピンクの花と付けられた『カチューシャ』であった。



『カチューシャ』という言葉も物も、エヴァンジェリスト君は知らなかった。

しかし、それが何であるかは問題ではなかった。

エヴァンジェリスト君の視界には、もう、薄いピンクの服を着、花の『カチューシャ』を頭に付けた『帰国子女』子ちゃんしかいなかった。

他の同級生たちもその部屋で何かを触りながら、何かを云っていたが、その時、エヴァンジェリスト君は、自分と『帰国子女』子ちゃんと『二人の世界』に入ってしまっていた。

『帰国子女』子ちゃんの『カチューシャ』を見たのが、ビエール・トンミー君であったなら、彼はまた別の世界に入って行ったであろう。

……….ビエール・トンミー君なら、カチューシャ』を頭に付けた『帰国子女』子ちゃんを見て、『サイボーグ』の世界に入っていったかもしれない。『帰国子女』子ちゃんのことを『サイボーグ』と思ったかもしれない。

ニール・ハビンソン氏のようなサイボーグと思ったかもしれない。

色覚障害から(11歳まで白黒の世界に生きてきたそうだ)、ニール・ハビンソン氏は、頭にアンテナのようなカメラをつけ、そのカメラが捉えた光の波長を後頭部に埋め込まれたチップで音に変換し、色を音で捉えるようにしている。



このアーム付カメラを装着した姿でパスポート写真を撮ることを英国政府に認めさせたので、ニール・ハビンソン氏は、『世界初の公認サイボーグ』と呼ばれているそうだ。

エヴァンジェリスト君同様、ビエール・トンミー君も当時、『カチューシャ』なるものを知らなかったので、頭に装着したモノをサイボーグのアンテナと理解したかもしれないのだ。

当時、ニール・ハビンソン氏は、まだ生を受けておらず、氏のことをビエール・トンミー君は知ってはいなかったが、サイボーグというものは知っていた。

前年(1964年)、石森章太郎(当時は、石ノ森章太郎、ではなかった)の漫画『サイボーグ009』の連載が始っていたのだ。

そして、ただの『変態』ではなく、『インテリ変態』、『インテリ野獣』であるビエール・トンミー氏は、小学5年生にして既に、サイボーグなるものに関心を持っていたのである。


現在(2017年)、63歳になり、最近、『股間』に衰えを覚えるビエール・トンミー氏は、『股間』のサイボーグ化の研究を始めていると噂される。



(続く)


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