まだ、『くしゃれ緑』に遭遇もしておらず、『ウンギリギッキ』をするにも到っていなかったエヴァンジェリスト君の『恋』は、まだまだ『ウブな恋』であった。
1965年、『広島市立皆実小学校』5年4組のエヴァンジェリスト君は、同級生の『帰国子女』子ちゃんに『恋』をしていた。
時に『帰国子女』子ちゃんと目が合うと、
「目が合った!」
と浮かれた。『恋』が成就したような気分となったが、『帰国子女』子ちゃんが、他の男子児童と話していると、
「『帰国子女』子ちゃんは、アイツ(他の男子児童だ)のことが好きなのだ、きっと」
と、11歳にして人生が終ったような気分になっていたのだ。
そうして、春が過ぎ、初夏も終り、夏休みとなった。
夏休みは、『帰国子女』子ちゃんに会えないから、つまらない。
しかしだからこそ、エヴァンジェリスト君の恋心はつのるのであった。
『帰国子女』子ちゃんの自宅近くをうろつきたかったが、エヴァンジェリスト君にその勇気はなかった。
しかし、翠町公園で、町内の小学生のソフトボール・チームの練習があった。
翠町公園は『帰国子女』子ちゃんの自宅近くだ。『帰国子女』子ちゃんが、側の道を通るかもしれない。
そう思うと、ウキウキ、ドキドキした。
だから、守備練習でライトでフライを捕ろうとしても、万歳をして、球を後ろに逸らしてしまう。
(参照:見てはいけないもの(その4)[M-Files No.1 ])
捕球できないのは、実際には、ウキウキ、ドキドキのせいではなかった。
実は、ただ捕球の仕方を知らなかったからなのであるが、ウキウキ、ドキドキのせいで、エヴァンジェリスト君の酷い守備は、破滅的なものにまでなった。
そんな『万歳』守備を『帰国子女』子ちゃんに見られたら、という懸念よりも、『帰国子女』子ちゃんが通りがからないか、という思いの方が強かった。
しかし、残念ながら、『帰国子女』子ちゃんを夏休みの間、翠町町内でもどこでも見かけることはなかった。幸運にも、無様な姿を見られずに済んだ、というべきかもしれないが。
かくして、エヴァンジェリスト君の夏休みは、何事もなく終った…….
一方、宇部市の『琴芝小学校』5年生であったビエール・トンミー君はまだ『恋』も知らなかったが、彼には夏休みの間に、ある『異変』が生じていた。
『いきものがかり』として、夏休みの間も時として登校して、『鶏』の世話をした。
その為に鶏小屋に入り、しゃがんでいる時に、股間に、それまで経験したことのない感覚、何か『違和感』を感じるようになっていたのだ。
それは股間を『鶏』に突かれることがあったからなのか、或いは、同じ『いきものがかり』の同級生の女の子が、鶏小屋の中でしゃがむ時、スカートの中を少し見せていたからなのかは分らなかった。
その『違和感』はその後、ビエール・トンミー君を段々と『変態』へと育てていったものと思われるが、彼もエヴァンジェリスト君同様、その夏はまだ、『くしゃれ緑』とも『ウンギリギッキ』とも無縁であった。
かくして、股間に『違和感』は生じてきたものの、ビエール・トンミー君の夏休みも、表向きには何事もなく終った。
(続く)
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