2017年10月10日火曜日

【ゲス児童】『くしゃれ緑』な『ウンギリギッキ』(その12)[M-Files No.5 ]



『帰国子女』子ちゃんはエヴァンジェリスト君のところまで来ると、

「これ」

と、ピンクの封筒を手渡した。

手渡すと直ぐ、『帰国子女』子ちゃんは先程まで話していた級友たちの輪に戻っていった。

ピンクの封筒は何なのか?その中身は何であろうか?

1965年、『広島市立皆実小学校』5年4組の二学期の教室でのことであった。11月の末の頃であった。






エヴァンジェリスト君は、驚愕と喜悦と羞恥とで呆然としていた。

「なんやあ、それえ?」

先程までテレビ・アニメ『オバQ』について会話していたが級友が、訊いた。

「なんなん?」

級友は重ねて訊いてきた。

「知らん」

そうだ、本当に『知らん』のんじゃ。知りたいのは、こっちの方じゃ。

いつもは、自分の方から、下校の後をつけたり、見ぬふりをしながら姿をチラ見するだけの『帰国子女』子ちゃんの方から、こちらに『行動』をとってきたのだ。それも、思いもせぬ『行動』であった。

しかし、

「何じゃろう?ピンクの封筒の中身は何なんじゃろうか?」

と、直ぐにでも封を開けたかったが、エヴァンジェリスト君は、ピンクの封筒を右手に持ち、その手を体の横に垂らしたまま(ピンクの封筒になんか興味ない、という強がりをして見せたのだ)、再び、『オバQ』について話し始めた。

「何が書いてあるんじゃろ?『好き』いうて書いてあるんじゃろうか?」

『オバQ』について話しながらも、心中は、ピンクの封筒のことしかなかった。

『好き』と書いてあったら、それは『ラブ・レター』だが、そんな言葉をまだ、エヴァンジェリスト君は知らなかった。

『くしゃれ緑』も『ウンギリギッキ』も知らない頃であったのだ。『帰国子女』子ちゃん『恋』はしていたが、『好き』と言う自覚があるだけで、それが『恋』というものだとも知らなかった。


ましてや、『ラブ・レター』という言葉も知らなかった。

早く帰宅したかった。早く自宅に帰って、ピンクの封筒を開けたかった。開けて、中身を確認したかった。

「『好き』いうて書いてあるんじゃろうか?」

下校途中で開封して中身を確認すればよかったが、友だちが一緒だった。

いや、一人であったとしても、下校途中で開封するという考えには到らなかったであろう。もらった手紙(封筒)を道端で開ける、という感覚はなかった。

『皆実小学校』では毎年、『学級委員』をするお行儀のいい子であったのだ。成績もほぼいつもクラスでトップであった。

ビエール・トンミー君も、宇部市の『琴芝小学校』でいつもクラスでトップの成績を収めていたが、彼の方は徐々に、『くしゃれ緑』と『ウンギリギッキ』の世界に近づいていた。

『鶏小屋』を見ると、いつも股間に『異変』が生じるようになっていた。何故、そうなるのかは知らなかったが。



(続く)


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