2017年2月28日火曜日

【疑惑】パジャマでデート?




「ふうううん、そうだったのねええ」

な、なんだ、なんだ….

「変だと思ってたのよ」

妻の思わせぶりな言葉に、何故か怯えてしまっていた。

「アナタ、若い娘好きだものね」

うっ。ビール・トンミー氏は、身に覚えはなくはなかった。●●●子先生のことか…..でも、今になって何故….しかも、まだ先生とは何も…..

「あんな臭いものをどうしてなの?とは思っていたのよ」

は?臭いもの?

「何週間も洗濯もさせないし」

は?は?洗濯?●●●子先生のことではないのか…..

「泉ちゃんとだったのね、まさか、だったわ」

へ?へ?泉ちゃん?

「ひかり(星)ちゃんでは、若すぎるものね」

ひ?ひ?ひかりちゃん?

森泉って、もう34歳だそうだけど、森星(もり・ひかり)って、泉ちゃんの10歳下だから24歳だもの。さすがのアナタも24歳は若すぎでしょ?」

そうだ。昔は、24歳も『射的圏内』であったが、こちらも歳をとったので、今は30歳台半ばが『下限』だ。…しかし、何故、森姉妹の話になるのだ?

「聞いたわよ、昨夜の(2017年2月27日の)『しゃぺくり007』で」

て、て、テレビの話か。

「森泉もパジャマで外出するんですって」

ほ、ほ、ほうそうなのか。

「しらばっくれてもダメのことよ!」

何を云いたいのだ、妻は?

「アナタがパジャマで外出するのは、森泉とデートする為だったのね!」

ええ、ええ、ええ、そんな疑惑だったのか。

「隠そうとしても無駄よ、分ってるんだもの。アナタ、最近、これまで以上に、エヴァンジェリストさんに会ってるでしょ」

まあ、エヴァとのことはその通りだが。

「エヴァンジェリストさんって、森泉の知り合いなんでしょ?」

いえ、それはちょっと違う。エヴァは、彼女のお父様(「森顕」(もり・あきら)氏)のことは存じ上げていると聞いている。「アキラ」さんは以前、奴の上司であったからだ。




しかし、エヴァの奴は、森泉さんと面識はないはずだ。それに、エヴァが森泉さんの知り合いだったとしても、どうだというのだ。

「アナタ、エヴァンジェリストさんに森泉を紹介してもらったのね!その為に、エヴァンジェリストさんに頻繁に会ってたのね」

そ、そ、そういう発想か。エヴァと会っているのは、奴が病気で、その『治療』の為のようなものなのだ。友情の行為なのだ。

「アナタ,それで森泉みたいに、パジャマで外出するようになったのね、フン!」

も、も、妄想だあ!


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ビエール・トンミー氏は、iMessagaの着信音に目を覚ました。汗をかいていた。

「君、昨晩の『しゃぺくり007』を見たか?」

エヴァンジェリスト氏からのメッセージであった。

そうか、そうだ。夢か、夢だったのだ。

昨晩、『しゃぺくり007』を見たのは自分であった。自分だけであった。妻は、その時、ソファで居眠りしていた。

ホッとした。妻が、昨晩の『しゃぺくり007』を見ていたら、正夢になっていたかもしれない。妻は今でも、自分のことを恋人のように思っているからだ。





「君は、いつから『いずみ』ちゃんと関係を持つようになっていたのだ?」

エヴァンジェリスト氏は、相変らず巫山戯たメッセージを送ってきていた。








2017年2月23日木曜日

「Oui……present…Oui……present…」【青春の東京日仏学院】



老いた男はうなされていた。

「Oui……present…Oui……present…」

ベッドの中で眠る男は、言葉を繰り返していた。


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20歳過ぎの男は、飯田橋駅で国電を降り、外堀通りを市ヶ谷方面に数分行ったところで右折し、坂を登って行った。

男は、『プロの旅人』氏の若い頃のようにも、エヴァンジェリスト氏の若い頃のようにも見えた。

坂を少し登ると更に右折し、木立の中の白い、瀟洒という言葉が相応しい建物の方に向かって登って行った。

坂を登りきり、左手の建物の中を窓から覗き込むと、男は踵を返し、今登ってきたばかりの坂を今度は下って行った。

男は首を左右に細かく振っていた。何かに怯えているようであった。

そうだ、男は怯えていたのだ。

男が覗き込んだ建物の中には、知っている者は誰もいなかった。教室の中には、男と同じ20歳過ぎの女性たちしかいなかったのだ。

そこは教室であった。東京日仏学院の教室であった。アンスティチュ・フランセ東京が東京日仏学院という名前であった頃のことである。

教室の中の女性たちは皆、どこか品が良く、教室はいい匂いに包まれているであろうと思われが、その男には恐怖でしかなかったのである。

教室には、自分の友人が誰もおらず、自分とは身分が違うであろう女性たちしか見えなかったその瞬間、男は前回の授業を思い出したのだ。

羞恥と恐怖の記憶しかなかった。



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自分とは身分が違うであろう女性たちの中にいても、授業が始まるまでは、怯むところはなかった。

地方出身の貧乏人の小せがれに過ぎなかったが、男が通う大学は、ハイソな女子大学生が多かった。

男が属する文学部文学研究科フランス文学専攻は特に、ハイソな女子大学生が多かった。本来、男女比は、50:50であったが、男は学校に来ないものが多く、男はいつも地元の広島では見かけたことのない女性たちに囲まれていたのだ。

そのような環境にいる内に、貧民ながら、どこか自分もハイソな一員になっていたように思っていたのだ。

しかし、東京日仏学院のその授業の女性たちは、男のそんな思い上がりを打ち砕いたのだ


…..授業開始の時間となり、毛量の多いカイゼル髭の男が教室に入ってきた。フランス人というよりも、何故か、スペイン人みたいな教師だ、と思った。





その時はまだ、胸には授業への期待しかなかった。

『プロの旅人』氏の若い頃のようにも、エヴァンジェリスト氏の若い頃のようにも見える男は、フランス文学を専攻しているとはいえ、フランス語を聞き、喋るトレーニングは一度も受けたことがなかった。

敬愛する遠藤周作のように自分もいつかフランスに留学するのではないかと思い、フランス語を喋ることができるようになる必要があると感じ、大学の同級生の男たち3人と東京日仏学院に通うことにしたのだ。

親に頼み込んで、男の家庭には安いとはいえない授業料を出してもらった。

先ず、選んだ授業は「Dictéeディクテ)」であった。聞き取りである。

カイゼル髭の教師は、出席を取り始めた。アルファベット順のようであった。

まだ自分の番ではないな、と周りを見渡していた。大学で綺麗な女性は見慣れて入るとはいえ(憧れの女性も同じフランス文学専攻にいた)、「いい娘はいないかなあ」、と。

その瞬間であった。

「Monsieur XXXXXX」

という声がした。

カイゼル髭の教師が自分を呼んだのだ。慌てた。

慌てた男は、思わず、

「はい」

と返事した。

その「はい」を聞いたかぐわしい女性たちは、一斉に笑った。ただ笑ったのではない。爆笑であった。

男は真っ赤になった。

カイゼル髭の教師は既に、次の者の名前を呼んでいっていたが、赤面した男は、どうしよう、とばかり思っていた。どうしようもないのに、どうしよう、と思っていた。

そうだ、女性たちは、教師の呼ばれると、ある者は、「Oui」と応え、ある者は「presente」と応えていたのだ。

「Oui」も「presente」も聞こえていたが、自分は、「いい娘はいないかなあ」としか思っていなかった。

フランスでは、授業の点呼に「Oui」とか「presente」と応えるのだ、と知った時には、もう遅かった。自分は「はい!」と日本語で応えてしまったのだ。

女性たちには、「何この人」と思われてしまった。「ハンサムだけど(当時は、まだイケメンという言葉はなかった)、この人、貧乏人ね」と。

どうしたらいいのだ、どうしたらいいのだ、とどうしようもないことを考えている内に、授業は始った。

カイゼル髭の教師は、どうやら、自分がこれから文章を読むから、それを聞け、その後に、当てるからその文章を繰り返せ、と云っているらしかった。

フランス語を聞く訓練を一度も受けたことのないのに、どうして、教師の云っていることが理解できたのかは分からなかったが、なんとなく理解はできていた。さすが、OK牧場大学の文学部文学研究科フランス文学専攻の学生ではあった。

けれども、男は、本当にフランス語を聞く訓練を一度も受けたことはないのだ。普段、大学の授業で聞いているフランス語は、日本人教師のフランス語だ。ネイティヴの発音ではない。

ある助教授は(当時は、准教授とは云っていなかった)、「paritir」を「パルチール」と発音していた。

いくらランス語を聞く訓練を一度も受けたことはないとはいえ、そんな発音はないだろうとは思った。

要は、普段、大学の授業で聞いているフランス語はそんな程度のものであったのだ。

なのに、ここでは(東京日仏学院の「Dictéeディクテ)」の授業では、いきなりネイティヴのフランス語なのだ。

カイゼル髭の教師が読み上げた文章は、テキストがあったとしたら、最初の2-3行しか男には聞き取れなかった。

「当てられたらどうしよう…..」

何も答えられないと、また女性たちの嘲笑を浴びることになる。焦った。そう思うと、既に赤面する程、焦った。

「いや、当てられないのじゃあないか…….いやいや、そんな油断をしていてはいけない。さっき、そんな油断をしているから赤っ恥をかいたのではないか」

と思っていたら、

「Monsieur XXXXXX」

と当てられてしまった。しかし、今度は、

「Oui」

と答えた。

そして、拙い発音でフランス語を発した。

まだ、なんとか聞き取れていると思えていた部分であった。

しかし、聞き取れたと思えていたのは、最初の2-3行なのだ。

あっ、という間に、まさに「あっ」という内に、聞き取れたと思えていた部分の最後まで来てしまった。

「まずい!これ以上は、まずい。何も云えない…」

と思ったら、男のパートはそこまでであった。

脱力した。肩で息をしていた。

授業のその後のことは覚えていない。


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…..これが、前回の授業であったのだ。

羞恥と恐怖の授業であった。

再びここまで(東京日仏学院まで)来るのが怖かった。

しかし、親になけなしの金を出してもらって通うことにしたのだ。逃げ出す訳にはいかない。

友だち(大学の同級生の男たち)も一緒なので、逃げ出す訳にはいかない。

だから、頑張って、上井草から飯田橋まで来たのだ。

しかし、覗いた教室には、友だちは誰もいなかった

その瞬間、恐怖が走った。比喩ではなく、背中を恐怖なるものが走ったのを感じた。

友達がいたところで同じではあったのだ。奴らは、自分よりは、予めフランス語をある程度、聞いたり、喋ったりの経験があったのだ。フランス人の友だちのいる奴もいた。

自分だけなのだ。これまでフランス語を聞く訓練を一度も受けたことのないのは。

また、あの女性たちに嘲笑されるのだ。また、カイゼル髭の教師に「なんだ、こいつは」と思われるのだ。

フランス語を聞いたり、喋ったりできないから習いに来ているのに、フランス語を聞いたり、喋ったりできないと授業もまともに受けられないなんておかしい、とは思ったが、そんな理性よりも恐怖の方がはるかに強かった。

だから、男は窓から教室を覗き込むと、直ぐに踵を返し、今登ってきたばかりの坂を今度は下って行ったのだ。

男は首を左右に細かく振っていた。何かに怯えているよう、なのではなかった。確かに、男は怯えていたのだ。

その後、十数年経つまで、男は東京日仏学院を訪れることはなかった。

親が出してくれた授業料は、たった1回の受講の為だけのものとなったのだ。

十数年後、男は、何食わぬ顔とはこういうものかという顔で東京日仏学院への坂を登っていくようになったが、その内心には、あの時の羞恥と恐怖が渦巻いていた。

しかし、男は、Patrice JULIEN(パトリス・ジュリアン)さんの知合いだから東京日仏学院を訪問するようになったのだ。Patrice JULIENさんは、当時、駐日フランス大使館の「atacché(アタシェ)」から東京日仏学院の副院長になっていた。

男が東京日仏学院を訪れるのは、Denis VASSLLO(ドゥニ・ヴァサロ)さんにも会う為でもあった。Denis VASSLLOさんは、過去にも今にも多分、日本国内唯一の「ミニテル」のサービスである「JITEL」(東京日仏学院の『ミニテル』のサービス)を運営していた人である。





男は、Patrice JULIENさんやDenis VASSLLOさん、そして、FRANCE TelecomのJean-François THOMAS(ジャン=フランソワ・トマ)さんと、東京日仏学院の庭にあるブラッスリーでランチを何食わぬ顔で喰うようになっていた。

しかし、ランチを摂りながらも、かぐわしい女子学生たちが目に入ると、羞恥と恐怖に苛まれるのであった

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老いた男は、そんな夢を見ていたのであろうか。

まだ、

「Oui……present…Oui……present…」

を繰り返していた。

ベッドの中で眠る男は、

「ビエールっ!」

とも叫んだ。


ビエール、そうか、ビエール・トンミーに

『更に修士様は東京日仏学院(現在の「アンスティチュ・フランセ東京」)で「ディクテ」の術を熱心に学ばれたではないですか。英語もフランス語も同じです。聞き取りは正確です。』

と揶揄われたせいのなのかもしれない。







2017年2月22日水曜日

自作自演【老人たちの往復書簡】



(参照:ライバルは、関口知宏……誰が、『プロの旅人』か?【週刊聞醜・緊急電話インタビュー】



===== ビエール・トンミー氏からの書簡 ======

関口知宏はプロの旅人ではないとハッキリ断言出来ます。100%あり得ません。

何故なら彼は自分のことを、「professional  tARveller」と言っているではないですか。

これこそ偽者の証拠です。天下のNHKがなんと言おうと彼はプロの旅人ではありません。

何だか意味不明の「tarveller」なんて、「三越」を「二越」、「トヨタ自動車」を「タヨタ自動車」と偽っているのと同じです。

中国の「なんちゃってディズニーランド」のミッキーマウスもどきと一緒です。

プロの旅人は、『プロの旅人』氏とエバンジェリスト氏しかいません

念のためGoogle翻訳でプロの旅人を入力すると「professional  tRAveller」と出てきます。

更に念のため.「professional tarvreller」をEXCELに入力してスペルチェックを行うと「tarvrller」が辞書にない単語と表示され修正候補として「traveller 」が出てきます。

安心して下さい。「プロの旅人」の称号はフランス文學界の最高峰のOK牧場大学大学院の修士である『プロの旅人』氏とエバンジェリスト氏しかいないのです。

(蛇足)
更に念には念をいれるつもりで、iPhoneの音声入力で私が「プロフェッショナル  トラベラー」と発音すると、「professional try better」と変換されました。これは私がドメスティックな日本人であることを証明しただけでした。

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===== 『プロの旅人』氏からの返信 =====

ああ、先生は、travellerをtarvellerと打ち間違えた私こそを『お前は、偽のプロの旅人だと仰っているのですね。

先生の追求ぶりは、さすが教祖と思わせるものがありますね。

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===== ビエール・トンミー氏からの2通目の書簡 ======

いいえ、私は打ち間違えただったとは考えていません。

関口知宏が発音した通り正確に入力するとtarvellerになったのです。

何しろ『プロの旅人』氏とエバンジェリスト氏は、何と言ってもフランス文學界の最高峰のOK牧場大学大学院の修士ですから、発音には敏感なのです。

更に修士様は東京日仏学院(現在の「アンスティチュ・フランセ東京」)で「ディクテ」の術を熱心に学ばれたではないですか。英語もフランス語も同じです。聞き取りは正確です。

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===== 『プロの旅人』氏からの2通目の返信 =====

貴方っていう人は怖ろしい人だ。「変態の科学」の神は、父なる神、恐い神なのですね。

確かに私は、関口知宏の発音を正確に聞き取ったのです。しかし....

私は、偽装工作をしたのです。そう、スポイドを使って警察を撹乱したASKAのように。

先生、私は先生を試したのです。わざと間違ったスペルで書いたのです。

私は、先生を試したのです。先生が、スペルの間違いに気付くかどうか試したのです。申し訳ありません。

先生は、見事にスペル間違いにお気付きになられました。感服です。私はやはり先生には敵いません。

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……..ふうう。冷や汗ものだ。一応、「自作自演」ということにしておいた(仕事に行きたくなかったからではないが)

ビエールの奴、週刊聞醜のトビマス編集長からの問いかけには応えないくせに、こちらの過ち(打ち間違い)に突っ込んでくるとは、油断していた。

しかも、「関口知宏が発音した通り正確に入力するとtarvellerになったのです」と、イヤラシイ言い方をしてくるのだ。東京日仏学院の『ディクテ』で私が恥をかいたことも揶揄している。

奴は、やはりただの変態ではない。







2017年2月21日火曜日

「感染ってもいいの」【甘ーい『家族会議』】




「アナタ、今晩は『家族会議』よ」

妻の言葉に、「うぬぼれ営業」氏は背中に戦慄が走った。残業で疲れて帰宅したところなのに、自宅でも仕事の話をするのは辛い。

「晩御飯食べたら、すぐ始めるわよ」

そう、「うぬぼれ営業」氏家の『家族会議』は仕事に関する議論なのだ。妻も同じ会社で働いているが、妻は自分と違い、技術担当なので、営業の自分とは見解が異なることが多い(同じ商品の営業と技術なのだ)。

「エヴァンジェリストさんから聞いたわよ」

あの人はまた、何か余計なことを妻に云ったのだ。自分より妻との関係が長く(まあ、あくまで仕事上の関係だが)、ことある度に技術の部門に行き、自分のことを告げ口するのだ。

「ムッシュ・ムラムラ・キータのことよ」

ああ、自分が先日、インフルエンザで会社を休んでいる間に、電話をしてきた自分が担当するお客様だ。エヴァンジェリスト氏は、ムッシュ・ムラムラ・キータとは古くから面識があり、しかもほぼ同年齢で親しく、自分の代わりに電話対応してくれたのだ。

「アナタ、ムッシュ・ムラムラ・キータに云わなくてもいいことを云ったのね」

え?何のことだ?まだ晩御飯は済ませていないのに、もう『家族会議』を始めるのか?食事を済ませてからにして欲しい。

「んんん、もおう、アナタったらあ、他人に、しかもお客さんに云うことじゃないでしょ、うふん

おや?『家族会議』の雰囲気ではない。『家族会議』とは名ばかりで、議論しても結局、妻には勝てないのだ。妻は強い。自分は妻に惚れ抜いている。だから、最後は、妻に言い返すことができなくなって、『会議』は終わるのだ。

「もう、あんなこと他所で言わないでね、うふん

言葉は怒っているが、なんだかご機嫌だ。

「いいじゃあないのねえ」

はあ?

「アナタがインフルエンザなのに、アタシに感染っていないのか、って訊かれたんですって、ムッシュ・ムラムラ・キータに」

エヴァンジェリスト氏とムッシュ・ムラムラ・キータは会社の電話で何を話しているのだ。

「エヴァンジェリスト氏が、アタシたちは別室で寝ているのではないか、と云ったそうよ」

あの人は、本当に適当な人だ。自分たちのことの何を知っているというのだ。

「でも、ムッシュ・ムラムラ・キータは、アナタから『夫婦で一緒に寝ている』と聞いてるよ、って云ったそうよ」






確かにムッシュ・ムラムラ・キータにそう云ったことはある。

「だから、アタシにインフルエンザが感染ってしまうんじゃあないか、ってことだったみたいよ」

しかし、感染ってはいない。インフルエンザで寝ている間もアレをしたが(アレって、激しいアレではない)、妻に異常はない。

「構わないのにねええええ

おお、甘い、甘い云い方だ。

「いいの、感染ってもいいの、アナタのインフルエンザなら、うふん」

さ、今夜は、晩御飯抜きで、甘ーい『家族会議』をするぞ!




2017年2月20日月曜日

ライバルは、関口知宏……誰が、『プロの旅人』か?【週刊聞醜・緊急電話インタビュー】




「アンタたちはいいのか?関口知宏にあんなことを云わせておいて」

番号非通知でかかってきた電話に出るなり、相手はそう切り出してきた。

「はあ?君は誰だ?」

失礼極まりない電話だ。

「『週刊聞醜(しゅうかん・ぶんしゅう)』だ」
「え?週刊文春?」
「アンタは、老眼だけでなく、老耳か!いいか、『しゅうかん・ぶんしゅう』のトビマスだ」
「なんだ、そりゃ。切るぞ、この電話」
「アンタもアンタの友だちのビエール・トンミー同様、意気地なしだな」
「ビエール・トンミー?ビエールを知っているのか?」
「アイツは、『週刊聞醜』で変態霊インタビューをしないかと誘ってやってのに、返事がない」
「はあ?変態霊インタビュー?」




「ビエール・トンミーのことはまあいい。それよりも、アンタたちはいいのか?関口知宏にあんなことを云わせておいて」
「関口知宏?何のことだ?それに、アンタ『たち』って、私と、他に誰のことだ?」
「エヴァンジェリスト氏だ。ビエール・トンミーの他のもう一人のアンタの友人だ。二人しかいない友人の内、イケメンな方の友人だ」
「私とエヴァンジェリスト氏が、関口知宏にどうだと云うのだ?」
「アンタたちも見た通り、NHKのBSで放送した『関口知宏のヨーロッパ鉄道の旅』の『イギリス編第2回』で、カーディフからバース・スパに向う電車の中で老婦人に『あなたは学生さん?』と訊かれ、関口知宏は、『プロの旅人(kind of professional tarveller)』と答えたのだ」
「な、な、なんだと!」
「そうだ、そうなんだ。関口知宏は自分のことを『プロの旅人』と云ったのだ」
「ほ、ほ、本当か?!」
「私は生まれてこの方、嘘というものをついたことはない!」
「トモの奴….」
「『プロの旅人』と云えば、君か、アンタのイケメン友人のエヴァンジェリスト氏のことではないのか?」
「そうだ、その通りだ」
「アンタたちは、関口知宏に『プロの旅人』の称号を譲ったのか?」
「いや、譲ったりなんかしていない」
「まあ、世間的には『プロの旅人』は、関口知宏だな。あれだけ、日本国内も世界も鉄道の旅で回っているのだからな。しかも、天下のNHKの番組でだ。一方、アンタは、Blog『プロの旅人』を半年以上、更新できないでいたし、エヴァンジェリスト氏は、病になり、出張は激減しているからな」
「えっ!君はエヴァの病気のことを知っているのか?」
「アンタたちに『プロの旅人』を名乗る資格はない!ハハハハハ」

トビマスと名乗る男は不敵に笑うのであった。





「君は一体、何者なのだ?」

『ツ-、ツーツ~』…しかし、電話はもう切れていた。

怪しい奴だ。ビエール・トンミーも奴に絡まれているのか…….

変態霊インタビューなんて何のことか知らないが、迂闊に応じると怪我をしそうだ。ビエールもそう思っているに違いない。

『週刊聞醜(しゅうかん・ぶんしゅう)』なんて週刊誌、見たことも聞いたこともないが、私の電話番号をどうして知っているのか…….怖い........

今度、連絡があったら、云ってやる。

「ノー・コメントだ。事務所を通してくれ」








2017年2月19日日曜日

「変態霊インタビューをしませんか」【週刊聞醜・緊急依頼状】




「アータ、また、変な郵便が来てたわよ」

帰宅した男は、夕飯の準備をする夫人に台所からそう声をかけられた。

「きっと、怪しいDMよ。エロ・ビデオのセールスじゃあないの?」

男が着ているのは、パジャマのようにも見えた、というか、パジャマであった。帰宅したばかりで着替えていないはずなのだから、パジャマではないのかと思われるであろうが、男は、「パジャマで外出する男」なのである。




しかし、もう2週間は洗濯をしていないので、男の体は異臭を放っていた。

『きっと、またアソコからだ』

男は、そう確信し、食卓に置かれた郵便を手に取った。

「ビエール・トンミー様」と書かれた封書である。

そして、やはり差出人は、「週刊聞醜」であった


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「変態の科学」教祖にして『総裁』であり『会長』であり『グル』ある
ビエール・トンミー様


   『緊急依頼状:変態霊インタビューをしませんか』


感銘とはこのことを云うのだと初めて知りました、先生。

先生の「回答状」程、世界の真理を教えるものはないでしょう。

ロマン・ポルノ「団地妻 昼下がりの情事」が、スコセッシ 監督の「沈黙」に繋がるとは、白川和子も、遠藤周作もスコセッシも予想だにしなかったでしょう。

先生は、世界を変える力をお持ちの方です。怪人2号や怪鹿が「変態の科学」に出家、入信を望むのも必然です。

そこで、先生にお願いがあります。

先生の教えでは、世の総ての者は変態であるそうですね。皆、自身も知らぬ内に、変態霊に取り憑かれている、と云うか、各個人の変態霊に守られているのでしたね。

先生には、その変態霊にインタビューをして頂きたいのです。


弊誌「週刊聞醜」で、「変態霊インタビュー」をして頂けませんでしょうか。先ず、第1弾として、●●●子先生の変態霊へのインタビューは如何でしょうか

いいお返事をお待ちしています。


週刊聞醜
編集長
トビマス・トビマス

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「週刊聞醜」(しゅうかん・ぶんしゅう)からの質問状に回答はしたものの、「週刊聞醜」なる週刊誌はまだ見たことはない。




書店も何店か見て回ったが、どこにも置いてなかった。店員に聞いても、

「ああ、週刊文春なら、雑誌コーナーにあるはずですが」

と勘違いされるだけであった。

コンビニにも駅の売店にも見当たらなかった。


しかし、今回もビエール・トンミー氏の手は震えた

「ど、ど、どうして知っているのだ…..●●●子先生のことを、●●●子先生と自分とのことを、トビマス・トビマスという奴は、どうして、知っているのだ」

こんな怪しい依頼状なんて無視すればいいのだが、依頼に応じなればどうなるのか………




ビエール・トンミー氏は、鼻歌まじりで料理をする夫人に動揺を悟られないよう、台所に背を向けたまま自分に部屋に入って行った。